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2009年 記者が選んだベストマンション17件34物件

 本紙恒例の「記者が選んだベストマンション」2009年版を決定した。記者が見学した2009年の新規物件百数十物件の中から、売れ行き好調物件を中心に商品企画が優れた17件34物件を選んだ。大手、中堅からまんべんなく選びたがったが、大手に片寄ってしまったのは市場のせいでもあるが残念だった。(ベスト3以外は順不同でほぼ取材順)

コスモスイニシア「ザ・晴海レジデンス」(438戸)「晴海テラス」(378戸)

 売れ行きがもっともよくコストパフォーマンスが優れていた点を評価し、コスモスイニシア「ザ・晴海レジデンス」(438戸)と、隣接する「晴海テラス」(378戸)をベスト3マンションのうちの一つに選んだ。双方合わせ816戸という規模ながらおおよそ半年でほとんど完売となった。

 人気の最大の要因は、単価が217万円と相場より10%以上も割安感があったためだ。割安単価は、施工した長谷工コーポレーションが品川区で所有していた土地と東京都が所有していた晴海の土地を交換した敷地であったため実現したためでもあるが、「ザ・晴海レジデンス」は設備仕様も水準以上で商品企画も悪くなかった。賃貸仕様の「晴海テラス」も小家族を中心に圧倒的な人気を呼んだ。

好調 野村不動産 プラウド宮崎台」(91戸)ほか

 ベスト3マンションのもう一つは、個別物件というより全物件がおしなべてよく売れたという意味で野村不動産の各物件を挙げる。同社の好調物件としては、億ションが即日完売したと話題になった「プラウド新宿御苑エンパイア」(全35戸)があるが、記者はそれよりも「プラウド宮崎台」(91戸)の早期完売の価値を重視したい。

 分譲開始は5月。同社恒例の記者懇親会で幹部がこぞって「即日完売するかも」と語った物件だった。決して単価は安くなかったが、「価格に見合う価値のあるものは売れる」ということを実証した。

 このほか、「プラウド市川大門通り」(30戸)「プラウド西千葉春日」(78戸)「プラウド蘆花公園」(87戸)が即日完売し、「プラウド橋本」(111戸)「プラウド東陽町」(168戸)「プラウド練馬中村橋」(82戸)「プラウド浦和仲町マークス」(54戸)「プラウド鵠沼橘」(55戸)なども好調な売れ行きをみせた。

 好調を支えた「プラウド」のブランド力もさることながら、生活者の目線で水回り部分や収納に工夫を凝らした「ラクモア」で徹底した差別化を行ったのも評価ポイントとした。

久々の本格億ション 三菱地所「麻布台パークハウス」(165戸)

 もう一つのベスト3には選定に苦労したが、結局、三菱地所「麻布台パークハウス」(165戸)を選んだ。会員数約3,500人の会員制東京アメリカンクラブ再開発事業の一環として建設されるもので、期間51年の定期借地権付き。天然石やチーク、ブビンガ、マホガニーなど高級材がふんだんに採用されており、設備仕様が極めて高い億ションなのを評価した。

 海外の富裕層はこの物件をどう評価するのか、日本人の購入者がどれぐらいの比率を占めるのか、法人の購入はどれぐらいあるのかなど興味は尽きない。竣工予定は2010年12月下旬だ。同社には一定段階で購入者の属性などを是非公表してほしい。

タカラレーベン、伊藤忠都市、マリモ、フージャースなどの再生事業

 買い取り再販などマンションの再生事業が話題になった年でもあった。市場価格よりかなり割安で供給されたため総じて売れ行きは好調だった。

 中でも圧倒的な人気になったタカラレーベンのリニューアルマンションの「ル・アール蘇我」(152戸)、買い取り再販の「武蔵浦和レジデンス」(112戸)、伊藤忠都市開発の外断熱マンション「アイ コンチェルト葛飾青砥」(75戸)、伊藤忠都市開発(事業比率45%)・大京(同)・京阪電鉄不動産(同10%)の3社JVマンション「イクサージュ目黒 グランデビューステージ」(203戸)、マリモの再生事業マンション「ロータリーパレス取手」(155戸)、フージャースコーポレーション「グランドホライゾン・トーキョーベイ」(684戸)などをその代表として挙げたい。

 「ル・アール蘇我」は、社宅を買い取ってリニューアルした物件で、坪単価が75万円と圧倒的に安く、基本性能が高いのが人気になった。「武蔵浦和レジデンス」は、ヒューマンランドが2年前に分譲開始した物件で、当初の坪単価は195万円。リーマン・ショックで販売が中断されていたのをタカラが買い取って販売にかけたもので、坪単価は145万円。こちらもレベルの高さが人気に拍車をかけた。

 「アイ コンチェルト葛飾青砥」は、康和地所が販売を予定していた外断熱マンションを伊藤忠都市開発が買い取ったもので、単価の安さと外断熱という希少性が人気の要因。

 伊藤忠都市開発は、同物件は一昨年、ノエルの破たんを受けて横浜市住宅供給公社の事業コンペに選ばれた「アイ マークス横浜桜木町」(57戸)も分譲。坪単価は220〜230万円という安さから小家族世帯などに人気となったのでも話題を呼んだ。

 「イクサージュ目黒」は、もともとモリモトが投資用に企画した物件で、ユニークな外観デザインと坪単価275万円、グロスで3,000万円を切る安さが単身者などにウケた。

 「ロータリーパレス取手」は、前売主が総和地所で、分譲開始は平成18年。当初の坪単価は130万円。竣工後 2年で半分も売れなかったものをマリモが買い取ったもので、戸数は93戸、坪単価68万円だった。中古並みの価格が人気となり、申し込み3日間で成約・申込戸数は約50戸に達した。

 「グランドホライゾン・トーキョーベイ」は、JR京葉線・武蔵野線南船橋駅から徒歩8分の全684戸。ゼファー他が2005年に分譲して圧倒的な人気を呼んだ「WONDER BAY CITY SAZAN 」(全1211戸、坪単価130万円)の隣接地。ゼファーが用地取得し、建設を進めてきたものだ。ゼファーが経営難に陥り、米国・ Cresent Heights (クレセント・ハイツ)社が取得。日本進出第一号マンションとして平成18年に分譲開始された。当初の坪単価は170万円。

 ところが、その後の激変市場で販売が中断。フージャースコーポが販売を含めた売主業務の代行を行うアセットマネジメント契約に基づき、2009年9月から販売を再開。約4カ月の短期間で514戸(全684戸)を完売した。坪単価125万円という安さが人気になった要因だが、それにしてもこの単価の安さと戸数は驚くべきだ。

環境への取り組みアピールした東急不動産

 環境問題への取り組みも目立った1年だったが、もっともCO 2削減の見える化≠アピールした東急不動産と、相変わらずいい取り組みを行っている積水ハウスを選んだ。

 東急不動産は、年初に分譲開始し早期完売した「ブランズ六義園」(40戸)から首都圏で供給するマンションすべてに CO2排出削減効果を評価・表示すると発表。その後も「健康」「緑化」「エコロジー」をテーマにした「ブランズ幕張」(54戸)、室内の壁面緑化を採用した「ブランズ文京東大前」(32戸)などを分譲した。また10月から11月29日まで、モデルルーム来場者1組につき1本の植樹活動を実施するキャンペーンを行い、合計850本の植樹証明書を発行した。

「5本の樹」活動を実践する積水ハウス

 積水ハウスの物件を見学したのは「グランドメゾン武蔵野」(85戸)と「グランドメゾン日野万願寺」(58戸)のみだったが、いずれも外構・植栽計画が素晴らしい。「5本の樹」活動を中規模マンションでも確実に実践している。賞賛に値する。

藤和不動産「BELISTA藤沢」(47戸)

 藤和不動産も環境問題に古くから取り組んでいるデベロッパーだが、記者はエコを考えるマンション「BELISTA藤沢」(47戸)では、むしろ立地環境のよさとデザインのよさで選んだ。駅から現地まで約6分間、ほとんど公園を通ってたどり着けるというアプローチといい、市役所など官庁街に隣接する4面道路で北側は公園、小学校にも近いという住環境は申し分ない。デザイン監修はリカルド・トッサーニ氏。

大京「ザ・ライオンズたまプラーザ 美しが丘」(39戸)

 環境問題でいえば、「平成20年度(第2回)超長期住宅先導的モデル事業」に採択された大京「ザ・ライオンズたまプラーザ 美しが丘」(39戸)も 2009年を代表するマンションだ。
  様々な環境対策が施されている物件だが、100平方bのタイプには日射を80%カットできるという横型ブラインドがサッシの外側に設置されていた。リモコンで光を取り込む角度や昇降位置も自由にコントロールできるものだ。ドイツでは一般住宅に取り付けられているそうで、葭簀(よしず)に近いものだ。わが国で普及する可能性を秘めているとみた。

暗闇市場に光り灯したモリモト

 6月24日付けで民事再生計画の認可決定を受けて販売を再開したモリモトの各物件が好調な売れ行きを見せた。記者が見学したのは継続物件も含めて6物件だが、新規の「ピアース二子玉川」(24戸)「ピアース三軒茶屋」(81戸)「クレッセント高津レジデンス」(82戸)がいずれも早期完売した。しっかりしたものづくりを行っていれば、債権者も金融機関もユーザーも見放さないことを証明した。暗闇市場に光を灯した。

メゾネット人気 オープンハウス・ディベロップメント

人気住宅街で単価割安のメゾネット≠ニいうビジネスモデルを開発したオープンハウス・ディベロップメントの健闘が光った。2008年から分譲しており、2009年は「オープンレジデンス三軒茶屋」(35戸)「オープンレジデンス桜新町」(36戸)「オープンレジデンス中野桃園町」(20戸)の3物件をことごとく早期完売した。いずれも単価は200万円台の前半だった。

 今後も準都心部で継続して供給するというが、新たに都心部での供給も開始する。都心部でどのようなメゾネットマンションを展開するのか注目したい。かつて郊外・準都心部で都市型タウンハウスを供給して人気を呼んだセボンが、都心部での展開では失敗しているのは気になる材料だ。

大京「ザ・ライオンズ杉並 善福寺川緑地」(61戸)

三井不動産レジデンシャル「パークタワー上野池之端」(175戸)

 立地・環境に恵まれたマンションとして選定したのが大京「ザ・ライオンズ杉並 善福寺川緑地」(61戸)と、三井不動産レジデンシャル「パークタワー上野池之端」(175戸)だ。

 前者の「ライオンズ杉並 善福寺川緑地」は、最寄駅の南阿佐ヶ谷駅から徒歩13分とややあるが、敷地の西側が「善福寺川緑地」、南側が第一種低層住居専用地域に面している。これほど環境に恵まれたマンションはそうない。同社オリジナルの「L‘ s キッチン」を採用しているほか、カリン材のフローリング、御影石のキッチン天板の採用など仕様レベルも高い。

 後者の「パークタワー上野池之端」は、菊竹清訓建築設計事務所が設計し、ユニークな外観から賛否両論を巻き起こしたホテル「ソフィテル東京」(旧ホテル名は「HOTEL COSIMA」)跡地で、横断歩道を渡ってすぐに不忍池の入り口がある。素晴らしい借景だ。敷地西側からは東大キャンパスが一望できる。設備仕様レベルも高い。

住友不動産「サザンスカイタワーレジデンス」(390戸)

 基本性能・設備仕様・居住性能が高いマンションとして住友不動産「サザンスカイタワーレジデンス」(390戸)を選んだ。再開発マンションとしてはトップクラスだろう。全ての住戸がワイドスパンで、南向き62平方b台の住戸で間口は約 7.7 メートルだ。 78 平方bの標準的な住戸は約 9.1 メートルもある。遮音性能も高く、高速エレベータも採用されている。

ナイス「ロイヤルタワー横濱鶴見」(301戸)

ナイスの記念碑的なマンション「ロイヤルタワー横濱鶴見」(301戸)は資産性が極めて高い物件だ。駅直結で公共公益施設が併設されることもそうだが、竹中工務店のスケルトン・インフィルの制震工法が採用されており、階高は約3.2メートル、リビング天井高は2600ミリ。高さ規制で、今後、駅周辺ではタワーマンションはほとんど建たなくなる。

               東京建物「Brillia City ひばりが丘」(356戸)


  定期借地権付きマンションは、このような時代だからこそ歓迎される。その典型的な例が東京建物「Brillia City ひばりが丘」(356戸)だ。ひばりが丘駅圏は西武池袋線でももっとも供給の多いエリアだが、坪単価140万円という圧倒的な安さが人気になっている。同沿線ではこれまで定借マンションはほとんど供給されていないはずだ。

三井不動産レジデンシャル「パークコート神楽坂」(78戸)

 隈研吾氏が総合監修を担当している三井不動産レジデンシャル「パークコート神楽坂」(78戸)も好物件だ。700年を超える歴史を持つ赤城神社を建て替える「赤城神社再生プロジェクト」で、期間70年の定期借地権付きだ。外観にはアルミ板を交互に重ね合わせた「大和張り」手法が採用されており、アルミのルーバー手すりはアルミ板の角度や間隔を変えるなどして、見る角度によって表情が異なるようにしているデザインが面白い。閉ざされているようで開放されている不思議な連子格子の空間も演出している。

旭化成ホームズ「アトラスタワー茗荷谷」(244戸)

 同じ再開発マンションとして、旭化成ホームズ「アトラスタワー茗荷谷」(244戸)も選んだ。茗荷谷駅に隣接する好立地の上、跡見学園、お茶の水女子大、貞静学園、拓大、筑波大附属高校や有名校の窪町小学校にも3分という文京エリアのど真ん中にあり、平均380万円という高単価にもかかわらず人気となっている。

 家族のコミュニケーションを深める暮らしを提案する「+NEST(プラスネスト)」も盛り込まれている。

(牧田 司 記者 2010年1月5日)