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  2年半動かなかった「取手」の物件が動いた

100年に1度の闇に灯をともす−マリモの再生事業


「ロータリーパレス取手」

 「100年に1度の闇に灯をともします」――マンションのパンフレットを開けたとたん、目に飛び込んできたコピーだ。文字は、決して目立つ大きさではなくむしろ控えめに隅の方に書かれていた。見出しのあとに文章は次のように綴られていた。

 「100年に一度の強風が、マンションにあるべき部屋の灯をかき消しています。マンションが病むと、街も病んだように映ります。このようにマンションメーカーが奪った街の活力を取り戻せるのは、マンションメーカーしかいません。マリモは使命感を持ってマンション再生事業≠ニいう名のプロジェクトを推進します」

 パンフレットは、同社が今年から取り組み始めたマンション再生事業の首都圏での第一弾「ロータリーパレス取手」のものだ。ご存知ない方のために、このマンションについて若干説明しよう。

 同マンションが分譲開始されたのは平成18年から19年の当初だ。売主は総和地所。同社は19年2月、ジャスダック市場に上場したように、マンション市場には追い風が吹いていた。ところが、ご存知のようにその夏、サブプライムローン問題が浮上、市場は一気に冷え込んでいった。

 このマンションも全然売れなかったのだろう。坪単価は確か130万円ぐらいだったと記憶している。経営難に陥った同社はA社に物件を売却した。それでもほとんど売れなかったのだろう。そして今回、A社からマリモが売れ残りを買い取り、販売にかけたものだ。

 物件は、 JR 常磐線取手駅から徒歩13分、茨城県取手市井野台三丁目に位置する11階建て全155戸の規模で、専有面積は約70〜84平方b。建物は平成19年2月に完成済み。施工は西武建設。マリモが買い取った戸数は93戸で、価格は1,180万〜1,990万円(最多価格帯1,400万円台)、坪単価68万円だ。

 モデルルームを9月26日からオープンし、今月10日から12日にかけて契約を開始した。この3日間で成約・申込戸数は約50戸に達した。

 建物の完成から2年半が経過し、全155戸のうち62戸しか売れなかったマンションがたった3日間で50戸も売れたのだ。その理由は誰でも分かる。分譲当初より半値で、中古並みの価格だったからだ。購入者は、地元や千葉県の柏、我孫子エリアの人も目立つという。

◇      ◆      ◇

 この際、どこが損をして儲けたかは関係ない。とにかく現在の閉塞感を払拭しなければならない。マリモがパンフレットで謳う通りだ。その使命感に拍手を送りたい。

 現地で対応してくれた同社おもてなし課(同者は営業部をこう呼ぶ)課長・田口誠氏(33)の言葉がまた嬉しい。「建物は生活しないと死んでしまう。管理費や固定資産税などの滞納はありませんでしたが、清掃は十分ではありませんでした。そこで、売り出す前に全住戸と共用部分の清掃を行いました」

 田口氏は続けてこう語った。「最初は、売るのは大変だと正直思いましたが、清掃しているうちに『このマンションはめちゃいい』と思うようになりました。購入された方には『こんなに安く買えるなんて』と、ローンが借りられなかった方々に喜んでもらっています。何しろここは始発駅ですから、都心まで座って通勤できます。営業スタッフは 5 人ですが、この時勢に3日間で50戸も売れるなんて…」と嬉しさを隠さない。

 田口氏は山梨県出身。入社5年目で、北海道、広島、長野、群馬、茨城などの物件を担当してきた。昨年5月に結婚したばかりで、この12月には第一子が誕生するという。奥さんは出産準備のために実家に帰省中だとか。


田口氏の背後はワインカラーの鏡面仕上げのドア

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 先週末に書いた伊藤忠都市開発「アイコンチェルト葛飾青砥」もそうだが、若年層を中心とする第一次取得層の買い意欲は極めて高い。デベロッパー各社はここに確信をもって、マンションの開発に取り組んで欲しい。

 ついでだが、田口氏が語ったように、この物件の設備仕様レベルは、現在、郊外で分譲されている物件よりはるかに高いし、これまで見学した総和地所のどのマンションよりもレベルが高いと記者も思う。


マンションの敷地内に設けられているキッズパーク

素晴らしい商品企画 マリモ「ポレスター越谷蒲生」(2008/12/5)

(牧田 司 記者 10月13日)