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記者が選んだ2011年 ベストマンション

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 今年、分譲マンションの現地見学・取材を行なったのは115件だ。例年より30〜40件ぐらい少なかった。これは、東日本大震災後の1カ月余りは1物件も見学しなかった、というよりできなかったためと、劣悪と思えるものは最初から排除したためだ。それでも取材したいと思った物件のほとんどは取材できたと思っている。

 例によって、今年1年間を振り返り、ベストマンションを選んだ。話題性、商品企画、売れ行きなどを総合的に判断したもので、必ずしも物件の善し悪しを評価したものでないことを断っておきたい。もちろん、記者が見学しなかった物件にもたくさん取り上げてしかるべき物件があることは言うまでもない。

記者が選んだ2011年ベスト3マンション

記者が選んだ2011年ベストマンション 〜中〜
記者が選んだ2011年ベストマンション 〜下〜

 話題のデベロッパー  ◇

大京の「Lions Living Labo

住友不動産の常設「総合マンションギャラリー」

モリモトの一連の物件

伊藤忠都市開発の一連の提案

 デベロッパーとして年間を通じてヒット作を連発したのはベスト3マンションで選定した野村不動産の「プラウド」だが、大京も女性モニターなどの声を企画に生かした「Lions Living Labo」で徹底した差別化を図ったのが光った。

 「ライオンズ志村坂上レジデンス」(52戸)は、玄関床やキッチン天板に大理石や御影石を、床のフローリングは幅広の突き板を、壁は珪藻土クロスを、システムキッチンの収納はうづくり仕上げをそれぞれ採用し、ふすまの上下には「エアリー押入」と名づけた通気口を設置していた。「ライオンズ多摩センター ステーションブライト」(45戸)では、同社オリジナル新商品の食器戸棚「「L 's KITCHEN Cabinet (エルズキッチン キャビネット)」と「CUSTOM CLOSET(カスタムクローゼット)」を標準装備した。同社のフラッグシップザ・ライオンズ≠ヘ冠していないが、「ライオンズ外苑の杜」(92戸)もレベルが高い物件だ。

大京「志村坂上」のマンション 浴室・襖に新工夫(10/27)

大京 劇的に変わったマンション商品企画(10/28)

「量の王者」から「質の王者」戴冠へ 大京・ライオンズ(11/7)

圧倒的人気呼ぶか 大京「ライオンズ外苑の杜」(7/11)

 都心5ターミナル駅の新宿・渋谷・池袋・秋葉原・田町の自社ビルに常設の「総合マンションギャラリー」を創設して業界の話題を集めたのが住友不動産。 5 館合わせた延べ床面積は約5,000u。個別のマンションモデルルームを設置するのと比べコストや効果を計算して常設を選択したのだろうが、年間数千戸を供給する同社しかできない新手法だ。

都心5カ所に「総合マンションギャラリー」 住友不(10/28)

 昨年もベスト3マンションの一つにモリモトの一連の物件を選定したが、今年も同社の健闘が光った。「中堅の星」と呼ぶのは失礼なほど、大手を上回るデザイン性の高いマンションを供給した。その筆頭は、三菱地所レジデンスと共同で分譲した「ザ・パークハウス上目黒ピアース」(76戸)だ。坪単価371万円という高単価のマンションだが、わずか3カ月で完売したのには驚いた。このほか、野村不動産の「プラウド上原」にも負けなかった「ディアナコート代々木上原」(35戸)が好物件だった。同社が民事再生終結後、初めて用地取得した物件だったが、わずか2カ月で完売した。近鉄不動産とのJVマンション「ローレルアイ恵比寿ピアース」(60戸)や同社単独の「ピアース恵比寿」(29戸)なども人気になった。

モリモトが地所レジと「ザ・パークハウス上目黒ピアース」でJVが組める意味(5/25)

記者も惚れた モリモト「ディアナコート代々木上原」(5/23)

モリモト「ディアナコート代々木上原」2カ月で完売(6/24)

近鉄不・モリモト「ローレルアイ恵比寿ピアース」人気に(6/24)

 伊藤忠都市開発は次々と新しい試みを採用した。収納に工夫を凝らした「KATASU」を採用した「クレヴィア田園調布」(59戸)、主婦動線を考慮した「MAMA+(ママタス)」を初採用した「クレヴィア南千住」(225戸)、引越しサービス「Hi-Co-S(ヒコス)」を採用した「クレヴィア赤羽」(80戸)、外観デザインに「L-style Faced (エル・スタイル・ファサード)」を採用した「クレヴィア世田谷砧」(38戸)、衣類保管サービス「ワンモアクローゼット」を導入した「クレヴィア中目黒」(65戸)、「土間収納」付きの「クレヴィア練馬」(43戸)などだ。

「KATASU」がいい 伊藤忠都市開発「クレヴィア田園調布本町」(1/31)

「MAMA+」の提案がいい 伊藤忠都市開発「クレヴィア南千住」(4/28)

プラウド人気に続くか 伊藤忠都市「クレヴィア赤羽」(10/4)

伊藤忠都市開発「世田谷砧」 デザイン監修は元モリモト杉原部長(11/29)

衣類保管「ワン・モア・サービス」付き伊藤忠「中目黒」(10/7)

プロの来場目立つ「土間収納」付き伊藤忠都市「練馬」(9/30)

 健闘した郊外マンション ◇

タカラレーベン「レーベンリヴァーレ南大沢」(127戸)

三交不動産「アトレ羽村グランブリエ」(151戸)

総合地所・長谷工コーポレーション「志木の杜レジデンス」(319戸)

東武鉄道・長谷工コーポレーション「ステーションテラス若葉」(174戸)

野村不動産「OHANA(オハナ)八坂萩山町」(141戸)

積和不動産・東京建物・陽栄「オーシャンレジデンス辻堂海浜公園」(161戸)

三井不動産レジデンシャル「パークタワー八千代緑が丘」(291戸)

タカラレーベン「レーベンハイム戸田ソラリエ」(175戸)

 1年間を通じて注目していたのは郊外マンションの販売動向だった。リーマン・ショック後、郊外エリアを主な事業エリアとする中堅デベロッパーが相次いで破綻し、マンション着工も激減した。2009年、2010年の2年間の神奈川、埼玉、千葉の3県のマンション着工戸数は通常年のほぼ半数にとどまった。千葉県では1件も着工がなかった月が何カ月もあった。

 マンションの場合、着工から分譲までは階高や規模にもよるが、おおよそ1年のタイムラグがある。大幅な着工減と市場環境の悪化がどのような影響を与えるかを注視していたのだが、着工減による品薄感とデベロッパーの弱気の価格設定によって、売れ行き自体はむしろ総じて好調だった。ほぼ予想通りの結果となった。

 圧倒的な価格(単価)の安さと立地条件や商品企画によって販売が好調だったのは、タカラレーベン「レーベンリヴァーレ南大沢」(127戸)、三交不動産「アトレ羽村グランブリエ」(151戸)、総合地所・長谷工コーポレーション「志木の杜レジデンス」(319戸)、野村不動産「プラウドシティ稲毛海岸」(555戸 ) 、東武鉄道・長谷工コーポレーション「ステーションテラス若葉」(174戸)、野村不動産「OHANA(オハナ)八坂萩山町」(141戸)、積和不動産・東京建物・陽栄「オーシャンレジデンス辻堂海浜公園」(161戸)、三井不動産レジデンシャル「パークタワー八千代緑が丘」(291戸)、タカラレーベン「レーベンハイム戸田ソラリエ」(175戸)などだ。

 個別の物件については、別掲の記事を参照していただきたいが、「南大沢」は単価の安さもさることながら、富士山が一望できる傾斜地の立地といい、平均100uという居住性の高さが際立った。震災の影響をほとんど受けず4カ月ぐらいで完売した。

人気必至 100uで坪135万円 タカラレーベン「南大沢」(2/7)

 「羽村」も、単価は土地代がただでもできないと思える安さだった(推定 105 万円 ) 。周辺エリアではリーマン・ショック後1物件も供給されておらず、まさに無風区=Bこちらも 3 カ月ぐらいで完売した。人気になるとは思ったが、ここまで早期に完売するとは全然思わなかった。

売れ行き絶好調 三交不動産「アトレ羽村グランプリエ」(2/21)

 「志木の杜」は、バス便物件だが、大型商業施設が併設されており、商住の複合開発の強みを遺憾なく発揮した。

郊外マンション復権の起爆剤 「志木の杜レジデンス」 (3/8)

 「若葉」は、駅前の温泉付きがヒットした。もともとアパが仕入れた土地だったが、耐震偽装問題で同社が分譲を断念し、東武と長谷工が温泉付きの企画をそのまま踏襲した物件だった。

「羽村」に続くか 東武・長谷工「ステーションテラス若葉」(6/7)

 「稲毛海岸」はベスト3マンションでも紹介したので、省略するが、「OHANA八坂萩山町」は、野村不動産の第1次取得層をターゲットにした 新しいマンションブランドで、時宜かなった戦略が奏功した。さすがに即日完売はなかったが、契約済みは100戸を超えているのではないか。ここもマンション無風区だ。

野村不の新ブランド「オハナ」第一弾「八坂萩山町」堅調(11/10)

 「辻堂海浜公園」は駅からやや距離があるが、やはり単価150万円強は安かった。それにしても5カ月で完売とはすごい売れ行きだ。

5カ月で完売へ 積和不他「辻堂海浜公園」マンション(11/15)

 「八千代緑が丘」も、同駅件では数年振りの新規供給で、単価160万円は郊外物件としては安いとはいえないが、かつては最低でも180万円はしていたエリアだ。こちらも早期完売は間違いない。

三井不動産レジ 「八千代緑が丘」1期100戸分譲(11/25)

 「戸田」は、同社が日本で初めて開発した戸別太陽光発電システムに蓄電池を加えた「戸別蓄電付き売電可能太陽光発電システム」を導入した物件。北戸田駅から徒歩16分の倉庫跡地というハンディはあるが、坪単価は127万円。遠隔地並みの単価の安さでコンスタントに月30戸ぐらいが契約できている。

タカラレーベン「戸田」 立地難克服して販売好調(11/10)

(牧田 司記者 2011年12月27日)