RBA「記者が選んだ 2010 年 ベストマンション」 【ベスト3マンション】 野村不動産の2物件「池袋本町」「中野ツイン」 進化しつづける大京の「ザ・ライオンズ」各物件 「早期完売」の神話生んだモリモトの一連の物件 【ベストマンション26物件】(順不同) 長谷工コーポレーション「ブランシエラ浦和」(69戸) |
恒例の「記者が選んだ 2010年 ベストマンション」を発表する。このうち「ベスト3」は、野村不動産の「プラウドシティ池袋本町」「中野ツインマークタワー」と、大京の「ザ・ライオンズ」各物件、モリモトの一連の物件とした。 記者が今年見学したマンションは約140件。昨年もそうだったが、リーマンショック後、見学するマンションは年々減少している。中堅の物件見学が激減しているからだ。140件のうち中堅の物件は40件ぐらいしかない。 その140件のうち、ベスト3を除き26物件を選んだ。ベスト3を含む紹介物件は50件。 言うまでもないことだが、記者が見学したマンションは2010年に新規分譲された全物件の数分の1しかない。主だった物件はほとんど見たつもりだが、見なかった物件は選外とした。 また、紹介した物件は必ずしも優劣を評価するものではない。高いレベルの物件がよく売れるわけでもなく、よく売れた物件が必ずしも商品企画が優れているわけでもない。その一方で、「売れるマンションこそいいマンション」という見方もできる。 長谷工コーポレーションの分譲マンションとして初めて「長期優良住宅認定」を取得した「ブランシエラ浦和」(69戸)がいい物件だ。同社常務執行役員・吉田隆一郎氏が「長谷工グループが総力を結集したプロジェクト」といえば、販売担当の長谷工アーベスト受託販売第四部門兼受注営業部部門長・遊佐康人氏「私は社内でマンション革命と呼んでいる」と語った通りだろう。 同社広報IR担当執行役員の岡田裕氏が「当社の技術担当スタッフが『ほおずりをしたいぐらい』と語ったぐらいで、私も驚いている。鏡のように蛍光灯の光が反射しているでしょう」と打放しコンクリートについて的確な表現をした。 伊藤忠都市開発は年間を通じてコンスタントによく売れたが、記者が注目したのは「クレヴィア モット・エコ」と「KATASU」を初採用したマンション「クレヴィア二子玉川」(51戸)だ。 「クレヴィア モット・エコ」は、@太陽光パネルとマンションではわが国初の蓄電池を組み合わせることによって共用部分の全電灯をまかなうようにしたもので、「KATASU」は、家族構成や生活スタイルの変化に合わせ様々な収納のニーズに応えるものだ。女性の声を設備や仕様に反映させた「モット・キッチン」も標準装備されている。 オープンハウス「オープンレジデンス桜新町 Avenue」 (22戸) オープンハウス・ディベロップメントの「オープンレジデンス桜新町 Avenue 」(22戸)がわずか10日で完売したのにも驚いた。1カ月間のインターネットによる反響は約600件、来場者は約250件にのぼった。 桜新町駅から徒歩7分の第一種低層住居専用地域に位置する3階建てメゾネットで。坪単価は232万円。圧倒的な割安感があった。同社は、この物件以降、都心部の「白金台」「高輪」などを供給しており、さすがに高単価のエリアだけに早期完売は難しくなったが、「人気住宅地のメゾネット」のビジネスモデルを完成した。 大京の「商・学・住」の市街地再開発事業マンション「ライオンズタワー甲府丸の内」(104戸)が早期完売した。甲府駅から徒歩 7 分の県庁や甲府市役所、甲府城跡にも近接していた。記者は間違いなく売れると読んだ。結果はその通りで、3カ月間ぐらいで売れた。 事業費の4割以上が国や県などからの補助金で賄われているためでもあろうが、坪単価120万円は信じられない安さだった。 首都圏不燃建築公社・三菱地所「パークハウス阿佐ヶ谷レジデンス」(121戸) 東京都の「マンション環境性能表示」旧制度で満点の☆3つ(全12個)を獲得した首都圏不燃建築公社(事業比率70%)と三菱地所(同30%)の「パークハウス阿佐ヶ谷レジデンス」(121戸)は、外構ファサードが素晴らしかった。パンフレットには「凜と美しく。主張しながら街と共存する」「一目で記憶され、鑑賞に値する美しい建築でもあること。駅前ランドマークの必須条件です」とあったが、偽りでない。 格子とガラスを組み込んだ幾何学的なファサードは、ビルでもないマンションでもない絵画を見るようであった。和風でもあり洋風でもある表情をしている。 23 年2月に完成するので、もう一度しっかり見学したい。 住友不動産が、江東区豊洲2・3丁目再開発地区の最後の分譲マンションとなる「シティタワーズ豊洲 ザ・シンボル」(850戸)の分譲を開始した。同社単独の豊洲エリアのマンションは、昨年2月に完成した「シティタワーズ豊洲 ザ・ツイン」(1063戸)に続くもので、ガラスカーテンウォールの外観デザイン、竹中工務店の制震構造を採用しているのが特徴。 人形町・浜町界隈は、この10年間で人口が約5割も増えている人口急増エリアだ。このエリアでは、大和ハウス工業「プレミスト日本橋浜町リデアル」(73戸)、三井不動産レジデンシャル・新日鉄都市開発「パークホームズ日本橋浜町二丁目リビオガーデン」(90戸)、東京建物「Brillia 日本橋人形町」(50戸)、大京「ライオンズ日本橋浜町リバーノート」(44戸)などが供給され好調な売れ行きを見せた。 記者は、これらの中で、最低でも 72 平方bを確保したファミリーをターゲットにしたプランが人気となったエルシード・菱重エステート「グラウス日本橋浜町」(37戸)を取り上げたい。二重床・二重天井、床の遮音等級は LL−40を採用。販売開始ほぼ 1 カ月間で早期完売した。 販売代理のグローバル住販は、自社・販売代理を含め中央区内で22棟766戸の販売実績があり、ファミリーでもニーズがあることをきちんと把握しているからこそ、このような商品企画にしたのだろう。 東京建物・東京電力「Brillia e-SQUARE」(129戸) 東京建物は年間を通じて総じて好調な売れ行きを見せた。記者は「Brillia 武蔵小杉」(131戸)、「Brillia e-SQUARE 」(129戸)、「Brillia 辰巳キャナルテラス」(355戸)、「Brillia 大井町ラヴィアンタワー」(269戸)などを見学したが、やはり川崎市初の「CASBEE 川崎」最高ランクSを取得した「Brillia e-SQUARE 」を同社の代表物件の筆頭に挙げたい。 業界には「ユーザーは『CASBEE』をそれほど評価していない」という声もあるが、記者はそうではないと見ている。「評価していない」というのは、制度をしっかり伝えていないからだ。この物件が即日完売したのも、ユーザーはきちんと評価したからだろう。 三井不動産レジデンシャル「パークシティ柏の葉キャンパス 二番街」(880戸) 三井不動産レジデンシャルの「パークシティ柏の葉キャンパス 二番街」(880戸)は極めてレベルの高いマンションだ。物件のプラン、設備仕様、共用施設だけでなく「街全体を売る」商品企画がいい。この「柏の葉キャンパス」だけは、 EX 沿線の中で成長しつづけるに違いない。詳細は、記事を参照していただきたい。 コンパクトマンションが大量に供給された年だったが、記者は三井不動産レジデンシャル「パークリュクス初台」(74戸)をその代表格とみた。 専有面積は40u台が28戸、 50u台が8戸、 60u台が6戸、70u台が7戸という構成だったが、坪単価315万円の高単価にもかかわらず早期完売した。 南西角住戸の西側間口は12〜14m、南東の住戸の間口は11.4m。40u台の住戸の間口も5.7m以上だ。もっとも狭い36uの住戸も南側の間口は3.2mだが、西側の間口は12mあり、約17uのルーフバルコニーも付くなどプランもよかった。 理由を示さず販売を一時、突如中止したのはいただけなかったが、レベルの高さが目立ったのがオリックス不動産「サンクタス川崎タワー」(300戸)だ。 同社は、「電気自動車カーシェアリング付き環境志向タワーマンション」を売りにしたが、記者は11階から最上階の空間に吹抜空間(パティオ)を設置した提案が面白いと思った。モデルルームはどこか圧倒的人気を呼んだ勝どきの「THE TOKYO TOWERS」に似ていた。 新日鉄都市開発・三菱地所「横濱紅葉坂レジデンス」(368戸) 公団「花咲団地」の建て替えマンションで、総合的な商品企画が優れていたのが新日鉄都市開発・三菱地所「横濱紅葉坂レジデンス」(368戸)だ。 免震工法を採用したのが事業コンペに当選した大きな理由の一つで、外観やランドスケープデザイン、基本性能のレベルの高さが目立った。外観は赤レンガ調タイルやガラス、コンクリート打ち放しなどで、外周は遊歩道や庭をめぐらせている。壱番館は2戸1エレベータを採用。設計は日建ハウジングシステム。市の環境設計制度、一団地認定を取得している。 近鉄不動産・鹿島建設・小田急不動産「グランド ミッド タワーズ大宮」(941戸) 近鉄不動産・鹿島建設・小田急不動産「グランド ミッド タワーズ 大宮」(941戸)は、今年の全供給物件を通じて最高レベルのマンションだ。規模・基本性能・デザイン・共用施設などの総合評価では、埼玉県のマンションの歴史で最高レベルのマンションでもある。 建物は鹿島の「ハイブリット・ダブルチューブ」工法で、コーナー住戸には順梁、中住戸には中間梁を採用。SI思想の設計でもあり、ボイドスラブ厚は350ミリの二重床・二重天井でふところ厚も厚い。天井高は2600ミリ。床材の遮音等級はLL−40を採用している。マンション居住者専用のセブン−イレブンが設置されるのも面白い。 藤和不動産・三菱倉庫・三菱地所の台東区初で最大規模の免震タワーマンション「浅草タワー」(693戸)が分譲された。 藤和不動産の「藤和西浅草コープ」の建て替えを核に周辺の土地も加えた再開発物件だが、企画を担当した藤和不動産首都圏事業本部企画第一部第二課長・高坂雅之氏が「悲しい歴史を持っている」と語ったように、複雑な問題を抱え、それを一つひとつクリアしてきた関係者の熱意を感じさせるマンションだ。 その藤和不動産は、今年いっぱいで53年の歴史に幕を閉じ、新しい「三菱地所レジデンス」に生まれ変わる。 長谷工コーポレーション・住友林業「ザ・ハウス港北綱島」(487戸) 長谷工コーポレーションが開発した「U 's−style (ユーズ・スタイル)」を首都圏で初採用した長谷工コーポレーション・住友林業「ザ・ハウス港北綱島」(487戸)も見逃せない物件の一つだ。 「U 's−style (ユーズ・スタイル)」は、同業他社がすでに採用している設備も多いが、トイレの「シャットスルードア」はドアを開閉した時、他の居室ドアと異なり、重くてカチッと閉まった。長谷工と扉メーカーの技術力の高さを実感した。 有楽土地・平和不・NTT都市開発・ヒューリック・神鋼不「グランシンフォニア」(923戸) はたらくママをサポートするプロジェクト「ママサポ・プロジェクト」がプロデュースした有楽土地・平和不動産・ NTT都市開発・ヒューリック・神鋼不動産「グランシンフォニア」(923戸)は、1期が即日完売するなど上々のスタートを切った。 「つくる〈時短・効率・負担の軽減〉」「はぐくむ〈コミュニケーション〉」「たかめる〈美容・健康・教育・自分磨き〉」の 3 つの視点から働くママをサポートするのがいい。欲を言えば、プラン面でもっとアピールして欲しかった。 三井不動産RD・東京建物・住友商事・ケンコーポ「THE ROPPONGI TOKYO」(611戸) 三井不動産レジデンシャル・東京建物・住友商事・ケンコーポレーション・「THE ROPPONGI TOKYO」(611戸)も今年を代表するマンションの一つだ。モデルルームのシアターのキャッチコピーが「住まいはどこまで人に尽くせるか」だったように、これまでにない3つのプレミアムサービス≠ェ提供されるマンションだ。 ホテルライクのサービスのほか、フラワーアーティスト、フードアーティスト、ネイルプロデューサー、ブックセレクター、スタイリストなどのサービスが提供される。おそらくこれは業界初だろう。坪510万円も安い。 総合地所・大京・オリックス不動産「ザ・ヒルトップタワー高輪台」(225戸) 今年も「駅近」は総じてよく売れた。その代表的な物件が総合地所・大京・オリックス不動産の都営浅草線高輪台駅直結の「ザ・ヒルトップタワー高輪台」(225戸)だ。1期110戸、2期50戸が即日完売した。 人気の要因は、@駅直結の利便性に恵まれた立地A360度の眺望が期待できるタワー型B単身者や DINKS にとってリーズナブルな単価設定――ということに尽きそうだ。 アパ「CONOE 〈東日本橋〉」(36戸)&常設モデルルーム 記者は「アパの逆襲」と書いたが、アパが3年振りに首都圏でマンションの供給を再開した。「CONOE 」シリーズで、第一弾は「CONOE 〈東日本橋〉」(36戸)だった。 コンパクトマンションだが、驚いたのはリビングドアがおそらく業界初のソフトクローズ機能付きだったことだ。ドアを開けて放置すると自然に閉まり、強く閉めようとしても締まる直前に止まり、静かに締まるというものだ。玄関と主寝室には、ホテルによくあるスイッチを押すだけで全ての照明をOFFにできる照明一括スイッチが付いていた。 同社は今年4月、中期5カ年計画「SUMMIT 5」をスタートさせたが、その中で2015年までにマンション事業の売上高を500億円に伸ばすとしており、都心3区(千代田区、港区、中央区)では供給トップを目指すとしている。常設モデルルームは億ション並みの仕様になっている。 首都圏初の「マンション用戸別太陽光発電システム」を搭載したマンションとしてタカラレーベンがニュースリリースした「レーベンハイム光が丘公園」(112戸)が早期完売した。 東西に細長い敷地だったため、太陽光発電を可能にしたのだが、所在地は「練馬区」でなく「和光市」だったため、坪単価で50万円、グロスで1,000万円くらいの割安感があったのが人気の最大の要因だった。 3年前、「こんな美しいマンション見たことない」と書いた鹿島建設の「加賀レジデンス」の再現版とも言うべき「桜プレイス」(149戸)が期間50年の定期借地権付きで分譲された。 最大の特徴は、柱・梁型がない「壁式免震構造HIスマートウォール」構法が採用されており、床面から天井まで約 2.5 メートルのワイドハイサッシも可能にした。 同社は、代官山の「センチュリーフォレスト」(244戸)の再開発マンションもあるが、こちらはまだ見学していないので2011年の物件に加える予定だ。 東急不動産の代表物件は、即日完売した「 BRANZ 南雪谷」(90戸)よりやはり横浜市で初の長期優良住宅認定を取得した人気物件「 BRANZ 青葉台二丁目」だろう。 耐震性・劣化対策・省エネルギー性などの認定基準をクリアしている同社初の認定マンションだ。メンテナンスが容易にできるように各住戸に設備ボイドが設置されており、スラブ厚300ミリのサイレントボイドスラブ工法と逆梁・アウトフレームを採用することで約 2.3 メートルのハイサッシも実現した。 ナイスの首都圏初の「免震」と「外断熱」の両方を兼ね備えた「アルシア大森」(36戸)が早期完売した。大森駅から徒歩6分で、最多価格帯4300万円台(坪単価279万円)は決して安くはなかったが、やはり「免震」&「外断熱」は効果があったというべきだ。 同社が「免震」&「外断熱」付きを分譲したのは、2006年の仙台市の「ナイスパークフィールド旭ヶ丘」以来2棟目。 全国の住宅供給公社としては唯一といっていいぐらい分譲住宅事業を継続している川崎市住宅供給公社の「川崎ゲートタワー」(110戸)が分譲開始された。 1期40戸は川崎市民優先でほぼ即日完売したが、年明けから一般分譲される。坪単価は220万円くらいで民間より少なくとも1割以上安い。 モデルルームの提案は、販売を担当している三井不動産レジデンシャルによるものだが、民間顔負けの印象的なものも提案されていた。 川崎市内では東京電力・東京建物「Brillia e-SQUARE 」に次ぐ2棟目の「CASBEE 川崎」のSランクを取得しており、国土交通省の数少ない共同住宅の「長期優良住宅先導事業」にも認定されている。 三井不動産レジデンシャル「パークホームズ グランファースト」(303戸) 東レ建設・宝町クリエイト・長谷工コーポレーション「シャリエ市川」(216戸) 今年もっともよく売れたマンションは、やはり野村不動産「プラウドシティ池袋本町」だが、郊外マンションでは三井不動産レジデンシャル「パークホームズ グランファースト」(303戸)と、東レ建設・宝町クリエイト・長谷工コーポレーション「シャリエ市川」(216戸)だろう。 「グランファースト」は、坪単価175万円という価格の安さが人気となり、ほぼ4カ月半で残り数戸しかない。 「シャリエ市川」も、10月上旬から販売開始されており、残りはわずか10戸だ。都営新宿線本八幡駅から徒歩 19 分とやや距離があるが、住環境がよく、坪単価は141万円。数年前なら土地代がただでも建たなかった安さだ。価格が安いからといって、仕様レベルが低いわけではない。 |
(牧田 司 記者 2010年12月27日) |