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千葉県企業庁 「埋立て当時の発注資料などはないはず」


千葉県企業庁が入居する幕張テクノガーデン(液状化の痕跡は全く見られない)


 液状化については「新浦安」「千葉市美浜区」「我孫子市布佐」「晴海・豊洲・有明・東雲・辰巳」について取材した。我孫子市布佐の場合は、原因は明らかだ。甚大な被害を受けたのは、戦後まもなくまでそこが「沼地」だったからだ。「全壊」が118棟という大きな住宅被害を受けたのも、建築後30〜40年経過している古い住宅が多かったからだ。

 しかし、他のエリアでは、同じ埋立地であるにも関わらず、道路1本隔てると天と地ほどの違いがあった。記者は素人だが、埋め立ての施工方法によるのではないかと思った。そこで、千葉県の湾岸の埋め立てを行った千葉県企業庁の担当者に聞いた。

「埋め立ての砂に使った海底の穴を埋めるのに50年」

 同庁地域整備部副技監・岡崎正一氏は、次のように語った。

 「埋め立ては、浦安〜富津に至る県域面積にして 2.7 %ぐらいのエリアを昭和40年頃から56年頃までに行った。埋めた砂は全て海砂で、埋め立て予定地先の海底の砂をパイプラインで運んで埋めた。埋立地は遠浅だから、コスト的にも海砂で埋めるのが最適だった。

 砂を採取した深さは海底から10〜20m、ギザギザ状に穴があいた。その結果、その部分には酸素が行き届かず、水産業にも都合が悪いということで、県は海底を埋め戻す作業を行っている。埋め戻す砂は同じ海砂。東京湾の土砂が堆積して浅くなった航路の砂を少しずつ削って穴を埋めている。負の資産の穴を埋めるのに向こう50年かかるといわれている。

 エリアによって液状化の被害が異なるのは、どうしてかわからない。法律に基づいて施工した。被害を受けられたのはお気の毒だが、県の責任はないと思っている」

 同部建設課副課長(兼)建設推進室長・増田光一氏は、「私は新任したばかりで分からないが、前任では県道を担当していた。橋梁などの資料は永久保存だが、道路の発注資料は5年ぐらいで捨てる。おそらく埋め立ての資料も残っていないはず」 と語った。

 同部土地分譲課副課長・萩原稔之氏は、「震災の直前に売却した浦安6丁目の契約書には『埋立地なので地盤は弱い』と明記している」と話した。

 また、岡崎氏は、「未分譲の埋立地については、ボーリングなどして地質調査を行う可能性はある」としている。

  
液状化の応急措置であばただらけになった幕張テクノガーデンの対面にある海浜幕張駅前(左)と、明らかに建物が傾き、営業していない駅前の店舗

◇      ◆      ◇

 「県に責任はない」というのは予想していた回答だった。埋立事業に「瑕疵」があったとは証明できないだろうし、ましてや巨大地震による液状化だ。「想定外」といわれればそれまでだろう。

 しかし、ここでもう一つ大きな疑問が湧く。埋立事業は、100年、200年先を見据えた事業であるはずだ。事業開始から30年以上が経過した。事業は終結段階にきている。事業の発注資料や施工資料が5年で捨てられるとなると、埋立事業はしょせんそんなものだったのかといわざるを得ない。

 記者は新浦安の記事で「砂上楼閣都市」と書いた。液状化の被害額は浦安市だけで約700億円だ。県全体でいくらになるかは分からないが、その数倍だろう。そのうちの何割かは国が負担することになるのだろうが、それも結局は国民負担だ。東京湾岸にはは2,100万キロリットルの石油と23億立方メートルの高圧ガスが、トータルすると12,000カ所で備蓄されていると聞く。

 考えてみれば、福島第一原発も同様だ。同原発が営業開始してから40年。原発施設の法定耐用年数はマンションと同じ47年とは思えないが、仮にそうだとすると、福島第一原発は減価償却をまもなく終え、ドル箱となるはずだった。それが今回の事件で数兆円にものぼるツケを払わされることになる。東電が払えなければ、国民負担となる。

 埋め立ての穴埋めに50年かかり、原発の廃炉処理にも50年はかかるはずだ。いったい、国も含めわれわれは何をやってきたのだろう。


「下げ振り」の役割を果たしてしまった駅前店舗のくさり樋(上と下とでは壁面から随分離れている) 

◇      ◆      ◇

 気の毒なのは、震災の直前、3月4日の企業庁による競争入札で浦安市高洲6丁目の埋立地(地目は雑種地)約47ヘクタールを約 67億円(予定価格は約49億円)で落札したハウスメーカーだ。記者は、震災前ならこの落札価格はものすごく安いと思うが、震災後はどうなるのか分からない。

 企業庁への取材で分かったことだが、森田健作知事は被災者の生活再建の支援に全力で取組むと4月1日の記者会見で述べたという。その会見の模様を見ようと思ったが、ホームページに簡単なメッセージが紹介されているだけで、画像などの生の声は確認できなかった。

 県の危機管理課によると、知事が話した支援策とは「検討中だが、国の制度(被災者生活再建支援法)では支援から漏れる(一部損壊などの)被害を受けた方を対象として考えている」とのことだった。つまり、液状化で被害を受けた人全員ではないようだ。県の調査によると、「震災」(液状化だけでない)による住宅の「一部損壊」は15,612棟となっている。

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(牧田 司 記者 2011年4月12日)