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大ダメージを受けた新浦安 液状化対策は万全だったか


新浦安駅前の交番(地面との段差は約30cm)


 浦安市の地震の被害について取材し記事にもしたが、いくつか疑問点も浮かんだ。松崎市長は「死者はゼロ、火災もゼロだがインフラは大ダメージを受けた。埋め立てが全て完了してから30年が経過するが、比較的新しいところのエリアで液状化の被害が大きく、全世帯のほぼ半数37,000世帯が断水した」と発表した。「震度5強」ではインフラの被害は避けられないということだろうか。市域面積の4分の3が埋立地の同市は、今後「液状化」対策をどう進めるのだろうか。

 

 

5円玉の下げ振りで傾斜の進行を測っている土木コンサルの自宅

液状化について市はどの程度認識していたのか

 浦安市では「浦安市水害ハザードマップ」を作成しているが、これは水害に対してのもので「液状化」については全然言及されていない。地震による液状化は当然想定されるべきだし、街づくりも液状化を想定して行われるべきだろう。

 また、市は「防災のてびき」を作成しているが、地震については一般的なことしか書かれていない。「地震」「液状化」については、「地盤が弱いと、地面が変形する液状化現象や建物の倒壊などの被害が発生しやすくなります。自分の住んでいる土地がどんな地盤なのかを確認しましょう」「大地震に備えて耐震診断をしましょう。市では昭和56年(1981年)5月31日以前に建てられた木造住宅の耐震診断の費用の一部を助成しています。また、木造住宅を対象に建築士による耐震相談会を年に 3 回無料にて開催していますので、ぜひ一度、ご相談ください」(防災課)とあるのみだ。

 14日の緊急記者会見で松崎市長は「液状化の想定マップ」があると発言したが、今回の被害が想定内だったの想定外だったのかについての言及はなかった。「液状化の想定マップ」が市民に周知されているのかどうか記者は知らない。

果たして浦安市の震度は5強だったのか

 「道路が舟のように揺れた」「泥水が1m近くまで溢れた」などの住民の声や、軒並み地面が30pぐらい隆起または陥没している状況を見ると、果たして浦安市の震度は「5強」だったのかという疑問が湧く。同じ震度だった東京都などでは道路が陥没したりガス管、上下水道設備が破損したりしたケースはほとんどなかったはずだ。松崎市長も「元町でのインフラ被害は皆無」と語っている。

 ここで問題になるのは、「震度」の測り方と「測定場所」だ。気象庁へ問い合わせようとしたが、本日(19日)は土曜日なのでつながらなかった。そこで、「Wikipedia」 で調べたら「震度の計測震度階級の計測については、現在の日本では機械による計測数値のみを使用し、人体感覚、被害の程度などは参考にしない」「日本でも1990年代半ばまでは、気象台の職員が、体感や被害などから判定していた」とある。

 つまり、「被害の程度は参考にしない」ということだ。これはこれで理解できる。しかし同じ「震度5強」でも被害が「皆無」と「大ダメージ」に分かれるというのは、どうも釈然としない。気象庁が観測したのはどこか分からないが、「元町」と被害が大きかった「中町」「新町」とは同じ揺れ方ではないような気がする。

 市は、埋立地とそうでない地域の狭間の「猫実」で防災課独自の震度観測を行っているが、現在のところ、その数値は確認てきていないようだ。

 自治体は、ハザードマップを作成する際、このような液状化や地盤などを考慮したより具体的な情報を公開しないと役に立たないのではないか。


地面より30cm陥没した鉄筋造のビル(1階の進学塾の張り紙には「壊滅的な被害を受けました…私の息子があまりの惨状にひざから崩れ落ち、当たり構わず泣き出したとき、私はどんなことがあろうと必ずこの塾を元通り、いやそれ以上にするぞと決意しました…」と書かれていた)

地盤改良、液状化対策はどうなのか

 市がこれまで液状化対策として地盤改良をどう進めてきたのかも問題になりそうだ。記者は地盤改良がどのような方法で行われ、いくら費用がかかるのか、どうすれば液状化が防げるのか全く知識がない。

 ネットで検索したら、浦安市の新庁舎建設基本構想の中に「新庁舎建設工事費概算」があり、本体工事費として約101億円、液状化対策費(地盤改良工事)として8億円が想定されている。免震構造費は11.4億円となっている。

 新庁舎の液状化対策にこれだけの費用がかかるのだから、埋立地全体の地盤改良を行うのにはばく大な費用がかかるはずだ。取材では、地盤改良を行っているところと行っていないところもありそうだ。地盤改良が行われているところでも被害は出ているという印象は受けたが、今後、大きな問題になるのではないか。

「住んでみたい街」はどうなるか

 かつて「メジャー7」の「住んでみたい街」の上位にランクされた新浦安は、今後、どのような評価がされ、地価がどのようになるのかも気に掛かるが、現時点では全然分からない。昨日取材したコンサルは「どんなことがあろうとも、みんなで協力してへばりついてでもここで生きていく」と語ったし、ある主婦は「ここに住んで8年。ここが私の故郷」と語っていた。

 たくさんお金を掛ければ液状化はあるいは防げるのかもしれない。しかし、「われわれは水も電気もガスもないと生きていけない。しかし、これまであまりにもハイテクを信じすぎたのではないか。自然に対する畏怖が足りないのではないか。文化・生活のあり方も問われている」という声もある。


地面が陥没したのか段差が約30cmあるビル

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(牧田 司 記者 2011年3月19日)