久米 信廣の 「道」 254号~275号/新・「道」 276号~309号

 

No.48

家族力⑦

第一子誕生は夫婦の一大変換点
協力と対話、どの次元のひと時か



結婚生活は、生まれも育ちも違う男女が共同生活を営むことである。その夫婦にとって、間違いなく重大で、最大の出来事は最初の子どもの出産である。第一子誕生は夫婦の変換点でもある。夫婦はその第一子の育成、教育について多くの選択肢に直面する。この選択肢を通して、若い夫婦は自分たちなりの家族を作りあげていくのである。


子どもにはどのような人間になってほしいのか、そのために、何をすべきか、何を避けるべきか、それぞれの設問にいくつもの選択肢が生まれる。お稽古事ひとつをとっても選択肢の多さに迷う。子をもつ親なら誰しも経験したことだろう。お稽古事はいくらでもある。人気ベスト3といわれるスイミング、英語・英会話、ピアノ・エレクトーンをはじめ、スポーツ系、文化系、学習系、いろいろある。どれをやらせるのか、一つだけか、二つも三つも習わせるのか、それとも習い事から子どもを解放するか。


夫婦が抱える諸般の事情で、習い事はさせられないと決めつけてしまう生き方がある。この場合の対話は「仕方ない」から始まる。一方、自分と子どもの双方の状況に判断基準を置いた対話は、諸般の事情を通過すべき難関と見る生き方、妥協点を探り出す生き方である。さらに上の次元の対話は、自分の人生と子どもの人生を鑑みた判断を模索する生き方、社会の中に生きる一人として、どう在るべきかを問う生き方である。


第一子誕生は、実は自分たちが生きてきた人生の総点検の機会でもある。単なる夫婦の共同生活から家族へ、その変換点が、第一子誕生のその時である。夫婦はここで生まれ変わらなければならない。それを、今までの延長線上と捉え、子どもに夢を託すような生き方をすれば、行き着く先は所欲的生活(欲に駆られてする生活︱前号ご参照)から導き出される結末への転落である。
わが子を抱きかかえるその時、夫婦は、膝を突き合わせ、今までの生き方(自分史)に耳を傾け、反省する「ひと時」を持てるか、どうか?そこから更に、自らの人生へと思いを広げていく「ひと時」とすることができるか?その時をきっかけとして、新たな日々へ、自らを変革していけるか、どうか・・・?夫婦が協力して持つこの「ひと時」が、家族力向上の差となる。

協力というからには目的が欠かせない。お互い、共通の目的に向かうところに対話が生まれてくる。この対話にこそ、力を合わせ向かうべきゴールへの道筋が隠されている。協力する力は、目的とする次元に比例して湧き上がってくるものである。あなたは家族とどの次元の「ひと時」を持ちますか?


 

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  • 引用: RBAタイムズ 303号(2010)