久米 信廣の 「道」 254号~275号/新・「道」 276号~309号

 

No.45

家族力④

六大欲を制御・統合する知恵
家族の幸せは知恵力を高める事



誰もが職場で経験することであるが、自分自身をそのまま認められたいとの欲求と、周りの人達の視線に自分をさらす恐怖との間のジレンマに陥ることがある。これも一つの知識欲の産物といえるものであるが、この場合においては知識欲による統合は成されていない。私たちの日常に目を転じると、人は幸せを目指して、社会に評価されたいと成功を望み、自分中心に好きなことがしたいと願いながら生きている。いわゆる生きるということは、こうありたいという欲望とこうあるべきだという願望の狭間でもがくということである。それは、相手の意向を汲みながら自己を主張するという、謙虚さとわがままの二律背反の日々といっても過言ではない。


鳩山首相は所信表明で「人間の究極の幸せとして、①愛されること、②誉められること、③役に立つこと、④必要とされること」と述べた。これを達成するための条件は、食欲・性欲・睡眠欲・財欲・名誉欲の五大欲を強力に統合できる知識欲がもたらしてくれる。この場合の知識欲とは、ヒトゲノムの解析や遺伝子操作技術の開発や原子力の研究開発等にみられる最先端の知識を追求しようとする原動力であり、それが日常生活(生命活動)に現れてくるものと捉えることができる。
この知識欲を、昇華させ、制御・統合させた働きを持つもうひとつの知識欲の姿が「知恵」である。制御・統合とは、人類の幸せと繁栄の為に、感情をコントロールし、他人を敬い、優しさを持った、責任感のある、決断力に富んだ思考能力を発揮する人間性そのものである。この「知恵」が六大欲を制御・統合する前頭前野の持つ真の実体であろう。


であるなら社会の最小単位である家族における六大欲の調整(制御・統合)とは、家族の幸せと一家の繁栄のために感情をコントロールし、家族を敬い、優しさをもって、責任感のある、決断力に富んだ思考能力、すなわち「知恵」を発揮することである。そして個人における「知恵」とは、「日々の生活において、鏡を通して自らの姿(表情・身なり)を省み整えること。学びを通じ人類の過去の歴史と同じ過ちを繰り返さないこと。そして、日常において模範となる人、注意を施してくれる人の意見を素直に取り入れ自らを正すこと。」である。
家族力とは、夫婦の知恵力である。この力が家族間の人間模様を織りなす核であり源である。そして知恵力が家族の格を形作る。いわゆる幸・不幸は、家族における知恵力のバロメーターであるゆえ、不幸だと思うならば知恵力を高めることに夫婦が手を取り合うことから始めれば、その家族は必ず幸せへとベクトルが向くのである。


 

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  • 引用: RBAタイムズ 300号(2009)