久米 信廣の 「道」 254号~275号/新・「道」 276号~309号

 

No.43

家族力②

一人の人間にみる六大欲と個性
六大欲の共鳴、増幅が生む家族力



前号で、家族の中心は社会的な「大人」の夫婦であって、食欲・睡眠欲・性欲・財欲・名誉欲・知識欲といった六大欲を制御することができる人間でなければならない、といった。今回は、この六大欲がその人の個性をつくることについて述べよう。


私たちに備わる個性について辞書には、「個人を特徴付けている性質・性格。その人固有の特性」とある。性質とは、その人に生まれつき備わっている気質であり、性格とはその人が生まれつき持っている感情(主観的な心の動き判断=快い・不満だ。美しい・感じ悪い等)や意志(自身が目的的行動を生起しそれを持続させる心の強さ)である。さて、この個性の説明にでてくる「性質」「性格」「特性」という言葉のすべてに付いている「性」に字についてである。「心が立って生きる」と書くこの字は、「生まれつき持っている心の働きの特徴」であり「人や物に備わる本質・傾向」と辞書にあるごとく、人間が動くとき、すなわち生きる瞬間(生命活動)に出会い・触れ合うものすべてに対する「個々人の反応の仕方」をあらわしている。すなわち性質・性格とは、立って活動する無形の心(一人の人間)が、その生活空間において出会い触れ合う現実において、その都度反応しながらも、一定の反応における法則性(傾向性=行為)を現してくる現象を総じて言い表している。
その個々人の反応の仕方、それに「質」があり「格」があるのである。個々人の反応を、人間社会全体にとって有益か否かで区別したものが品位・品格という価値判断である。「品」という四角い形を三つ(ここでは人間と解釈する)並べて書いた漢字は、三つを比較検討し順位をつけ評価する言葉である。また、「格」は、こつんとつかえるかたいしん棒を表す言葉であり、人に当てはめれば、しんにもつ本質のことである。


私たちが目にできる現象からあらわになる個々人の個性は、その人さえ自覚することがなかった「自分」がいきなり顔をだした姿である。もちろんそれは私たちを動かしている六大欲が基である。その六大欲の強弱と組み合わせにより織りなされる動態の一面が個性となって表れ、「その人らしさ」といわれるものとなる。
私たちの一大イベントたる結婚とは、格と格との触れ合いであり、こつんとつかえるかたいしん棒にお互いが積極的に感応し合うことである。言い換えれば、結婚は男女の六大欲の共鳴であり、結婚生活とは六大欲の増幅を目指すものである。この六大欲のベクトルと増幅の度合いが、その集団すなわち家族の力の源なのである。


 

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  • 引用: RBAタイムズ 298号(2009)