久米 信廣の 「道」 254号~275号/新・「道」 276号~309号

 

No.41

表と裏

100年に一度の経済的チャンス
でも経営は「出てはいけない表」



「表があるから裏がある」とは、母からよく聞かされてきた言葉である。表と裏の関係は、「優しさがあるからと厳しさがある」、「ピンチがあるからチャンスがある」というように置き換えることもできる。今の現実に当てはめると、「100年に一度の経済危機とは100年に一度の経済的チャンス」ということになる。最近になって周りから「第三企画さん、大丈夫ですか?」とよく聞かれる。それはごく当たり前だといえよう。今の世間では、不動産業界と広告業界とソフト開発業界は不況三大業界と言われているくらいであるからして、第三企画はそのうちの二つが当てはまるとすれば、当然過ぎるくらいの疑問である。私が相手であってもそう聞くだろう。
その時に私は必ずこう口にする。「100年に一度のチャンスの真っ最中です。」現に第三企画は、100年に一度のチャンスに嬉々として立ち向かっている。こういう環境だからこそ、普段では二の足を踏む大胆な改革もできるし、将来性豊かな優秀な新卒もたくさん集まってくる。考えてみても信じられないタイミングである。100年に一度しか廻ってこないようなこの時期に、成熟した社会人として働ける年齢で生きている。最高の幸せである。この舞台に立てるという幸せを、無意識のうちに自覚している自分に驚き、母への感謝の念が心底から込み上げてくる。


こんな時だからこそ前述の「表があるから裏がある」を思い出す。というのも、その続きがあり、それが心に引っかかっているからである。「表だから出ていく、裏だから出ていかない、ではないんだよ。出ていけても我慢する『表』もあれば、出ていきたくなくても出ていかなければならない『表』がある。同様に、出ていきたくても出ていけない『裏』もあれば、行き詰まってにっちもさっちもいかない『裏』もある」と。
この場合における「表」と「裏」の在り方は、それぞれの人が持っているそれぞれ独特の粘着性だというのである。いま100年に一度の経済危機のただなかにあるものの、第三企画の経営は「出て行きたくても出てはいけない表」であって、決して「行き詰まってにっちもさっちもいかない裏」ではないのである。現在の私は「表」ではあるが、相手の「表」と「裏」、そのどちらと共鳴するのかにかかっていると解釈している。
お陰さまで、RBA野球大会は例年のように開催している。しかも、加盟企業・チームは過去最高となっている。この場合は先述と逆で、RBAの活動は「出てはいけない裏であっても、出ていかなければならない裏」なのである。


 

追加情報

  • 引用: RBAタイムズ 296号(2009)