久米 信廣の 「道」 254号~275号/新・「道」 276号~309号

 

No.40

家訓と企業理念

価値観を部下と共有する経営
企業理念を知る努力を促す



会社は社長の力量によって成長するとの考えを教えられ、今まで頑張ってきた。もちろん勉強もしてきた。しかし何か釈然としないものを払拭できないままでいた。しかし最近になって、何やらおぼろげながらではあるが、新たな考えが芽生えだしてきた。結論からいうと、「会社の成長は社長の力にもよるものはもちろんのこと、最大の要件は構成メンバーにある」ということである。「上司は部下を理解するのに三年かかるが、部下は上司を三日で判断する」との言葉がある。この言葉をもって単純に計算することはできないが、世間に広く認知されている言葉だけに、部下の能力が365倍勝っていることに驚きを隠せない。先述の結論にでてくる構成メンバーとは、ここにでてくるような部下の存在のことである。


さて私たち人間が日々生きていくためには、数しれず判断をしなければならないが、それぞれの判断の基にはその人の価値観がある。ここでいう価値観とは、「生きていく上において物質的に、精神的に何を大事にするのか?」ということである。この価値観が、人生における判断局面の信号機となるもので、何よりも重要な位置を占めるものである。家族でいえば、家訓が価値観である。家訓といわないまでも、ご両親の価値観をこどもが共有していなければ家族はバラバラとなってしまう。会社でいえば、「企業理念」が会社を構成するメンバーの価値観に他ならない。そうでなければ企業は目的を果たすことはできない。


もし、価値観(理念)の共有がなされていないと、各人がそれぞれの主観で物事を判断することを許し合っているということになる。まさに会社においても私生活においても、「金(主観)の切れ目が縁の切れ目」といった関係性となる。価値観の共有がないと、いきなりの恋人関係の破局・離婚、または、いきなりの退社、困窮したときの退社、誘いによる退社等になりかねない。(破局、離婚、退社など、事柄そのものの是非をいっているわけではないので念のため)
生きるということが、知るということであるだけに、日々起こる事物を大まかな意味内容と済ませてはならない。メンバーが経営活動に参加するということは、メンバーが正しく企業の価値観=企業理念を知る努力をするように促すことである。これは何があっても怠ってはならない。でなければ、人生をかけて取り組んでいる理念に基づいた経営が、経営者の一人相撲となったり、単なる裸の王様となって物笑いの種となりかねないからである。


 

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  • 引用: RBAタイムズ 295号(2009)