久米 信廣の 「道」 254号~275号/新・「道」 276号~309号

 

No.28

我一本の矢にならん!

日本に押しよせた、“浪費への圧力”
今“圧力”撥ね返す矢を放つ時



米国で問題となっている「サブプライム」という言葉は、マーケティングの世界においては「信用リスクの大きい消費者である中低所得者」を指している言葉だと聞いている。それにならえば米サブプライムローンは、リスクという危険を承知した上であえて信用度の低い人達に向けて用意した住宅ローンである。このサブプライムローンに世界の金融機関が群がった。この日本では、確かな事実の裏付けをもってしても「信用リスク」が大きすぎると一般融資を断る日本の金融機関もその群がった一つである。さて、日本を牽引してきた会社に広告会社電通がある。その電通の中興の祖、吉田秀雄四代社長が説いたものに鬼十則がある。電通マンはこの鬼十則に叱喧激励され、電通は現在の地位を築いた。その電通は、「はっきり言って、間接的ではあるが、いま電通と関係のない日本人は、まず一人としていないのである。」とまで公然と言われる企業である。(植田正也氏著・電通「鬼十則」、PHP文庫)


この巨大な企業をつくりだした原動力が1970代の「電通戦略十訓」である。
これは、【1、もっと使わせろ。2、捨てさせろ。3、無駄使いさせろ。4、季節を忘れさせろ。5、贈り物をさせろ。6、組み合わせで買わせろ。7、きっかけを投じろ。8、流行遅れにさせろ。9、気安く買わせろ。10、混乱をつくり出せ。】というものだった。
実はこの戦略十訓は、米国人ジャーナリスト、ヴァンス・パッカードが1960年に著した「浪費をつくり出す人々」の7つの戦略をヒントとして作られたと言われている。その7つの戦略とは、「もっと買わせる戦略」「捨てさせる戦略」「計画的廃物化の戦略」「混乱をつくり出す戦略」「月賦販売による戦略」「快楽主義を植え付ける戦略」「人口増加を利用する戦略」である。また、そこにはこのように記されている。「アメリカ市民が日常生活でより浪費的になるように工夫している人たちは、われわれにより多く浪費させ、われわれを消費生活でより無分別で不注意にさせる。この圧力のもとで、われわれはどこに流れていくのだろうか。この浪費への圧力が、アメリカ国家と国民の行動、性格に及ぼす影響はどういうものだろうか。
私は、これが最も重要な問題だと思う。われわれはできるだけの同情と忍耐をもって、この問題を見きわめることにしよう。」これは米国で問題となっているサブプライムローンを予感させるに余りある。そしてこの懸念は、そのまま日本に当てはまる。だからこそ、この的に矢を向けることが必要な時期でもある。
我この一本の矢にならん!

 

 

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  • 引用: RBAタイムズ 283号(2008)