久米 信廣の 「道」 254号~275号/新・「道」 276号~309号

 

No.24

足し算と引き算の人生

歴史を彩る一人の小さな行為
良きも悪しきも認め受け入れる



人生において大切な事は「足し算と引き算だからね」と言われて育った。引き算とは、何かあるとすぐに「できません」「それは無理です」「考えさせて下さい」等々自ら避けて通ろうとする人達のこと。このような人達こそ「引き算の人生を歩む人達」だと僕は教わって来た。


「引き算の人」は、自分にはできないと思っているのだから、できない事をできない自分に向かって薦めるような人を信じられる訳がない。なんて不親切な人なんだ、分かってない!と考える。
そして、このような出来事を重ねる度に人間不信となってしまう。すなわち、自分をできない人だと思い込んでいる人にとって、できない事を薦める人は信用ならない人なのである。自分を信用できない人は、相手も信用できない。また自分の悪い所ばかりが気になる人は、相手の悪い所ばかりを見てしまうものである。挙げ句に自分を好きになれない人は、相手を好きになることはない。このように私たち人間は、自分を見ている目と同じ目で、相手を見ているのである。


また逆に、「やらせて下さい」「できます」「もっと詳しく話して下さい」等々「足し算の人」がいる。自分から手をあげた一つひとつに真面目に取り組む人は、時にやりすぎ、無理のし過ぎになる。そんな場合、話しを薦めた人は黙って見過ごす訳にはいかなくなるので、陰に陽に協力体制に入る事となる。すなわち、前向きに生きる人には、前向きな人が応援に入るようになっている。どうも人間という生き物は、自分が自分自身について理解している内容を尺度にして他人はどのような人なのかを計る生き物らしい。まさにアリストテレスの「類は友を呼ぶ」につながるのである。であるからこそ、自分と真っ正面から向き合い、良きも悪しきも認め受け入れることが大切なのである。そうすれば自然と他人とも真っ正面から向き合えるようになってくるからである。第三企画が推し進める「人の前に明かりを灯す」行為とは、このような姿勢から目指す一人の小さな行為である。この小さな一波が万波となり私たち人間の歴史を彩っていくのを楽しみにしたい。

 

 

追加情報

  • 引用: RBAタイムズ 279号(2008)