久米 信廣の 「道」 254号~275号/新・「道」 276号~309号

 

No.21

流れに逆らわず

流れの速さで、自らの力で流れゆく
不幸とはマイナスに働いた欲望の集積



「人間は欲望をエネルギーに生きている」と教わったこともあり、人生とは欲望の使い方だと断じて今まで生きてきた。そしてその使い方に、プラスとマイナスがあることを発見した。不幸とは、マイナスの使い方の集積だといっても過言ではない。マイナスの欲望は、同類の人を呼び込んでくる。そう考えるからこそ、マイナスに敏感にならざるを得なくなる。同時に、プラスを見るよりマイナスを見るほうがより効果的だと考える。人間は、良いものに心を奪われれば奪われるほど、固くなってしまい足元を見失う生き物である。だからこそ、最初に悪いものを正確に知るべきだ。そもそも人間とは、行きたくない場所は理屈抜きで避けて通る生き物だからである。


私達の潜在意識に内在している三大欲望の実体とは、①欲しいものをどこまでも欲しがるエネルギー、②相手を攻撃するエネルギー、③楽な方に向かうエネルギー、この三つの欲望エネルギーである。このエネルギーの使い方次第で人は人間ともなり、動物のようにもなりながら生きていく。①の例として、良いことがあると、それに満足することよりも、更にもっと!と欲望に突き動かされるのが私達だ。もう、そこで止めればいいのに!というのが周囲の見方であるのに。同様に、高ぶる感情を抑えきれなくなってしまい言いすぎることがある。それが原因で取り返しのつかない事態を招くことがある。これが②の例である。まったくもって自分の言葉に追いまくられる始末である。火に油を注ぐとはこのこと。自ら油を注いで、自ら火傷をする。何事においても争いで得られるものは無いのにである。また、③の楽な方に向うエネルギーの例は、良いと分かっていても手をあげないことがある。身体に悪いと分かっていても止められないこともある。誰が見ても価値的でない逆の方向に突進してしまう。この行為に費やすエネルギーたるや半端なものではない。そんな誰もが理解に苦しむような行為が日常生活において、いまだに後を絶たない。


よく言われる言葉がある。「今あるすべてに感謝しなさい。縁のないものとは出会わないのだから。」「むやみに批判はするな、批判は依存の裏返しなのだから。」「見えない明日より、見える今に全力で生きろ。」など。総じて、「流れに逆らわず、しかもその流れの速さで自らの力で流れていけ。」との教えと解釈し今を生きていくのはどうだろうか。

 

 

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  • 引用: RBAタイムズ 276号(2008)