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記者が選んだ2011年 ベストマンション

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 今年、分譲マンションの現地見学・取材を行なったのは115件だ。例年より30〜40件ぐらい少なかった。これは、東日本大震災後の1カ月余りは1物件も見学しなかった、というよりできなかったためと、劣悪と思えるものは最初から排除したためだ。それでも取材したいと思った物件のほとんどは取材できたと思っている。

 例によって、今年1年間を振り返り、ベストマンションを選んだ。話題性、商品企画、売れ行きなどを総合的に判断したもので、必ずしも物件の善し悪しを評価したものでないことを断っておきたい。もちろん、記者が見学しなかった物件にもたくさん取り上げてしかるべき物件があることは言うまでもない。

記者が選んだ2011年ベスト3マンション

記者が選んだ2011年ベストマンション 〜中〜
記者が選んだ2011年ベストマンション 〜上〜

 安藤忠雄マンション  ◇

住友不動産「シティハウス仙川ステーションコート」(91戸)

 建築家の安藤忠雄氏が設計したマンション、住友不動産「シティハウス仙川ステーションコート」(91戸)が分譲された。現地は「安藤忠雄ストリート」と呼ばれる道路に面しており、コンクリート打ち放しであるのが特徴。外廊下に面した住戸の窓は最大でも8センチしか開かない防犯合わせガラスを採用することで、面格子をなくしているのも面白い。安藤氏が設計した仙川のマンションでは2棟目。

資産性を重視する人に 住友不「仙川」安藤忠雄マンション(6/17)

 戸建て感覚  ◇

中央住宅「ライフピア越谷ストーリア」(35戸)

 ポラスグループの中央住宅「ライフピア越谷ストーリア」(35戸)はきめ細かな商品企画で需要を喚起した好物件だ。全35戸の小規模ながら、「ピア・キッチン」と呼ぶ戸建てメーカーらしいキッチンを採用したほか、ワイドスパン、ロフト付き、離れ付きなど多彩なプランを盛り込み、容積不算入の出窓、Wライトコート付き、ソフトクローズ機能付き引き戸、ウッドデッキ敷きバルコニーなどきめ細かな商品企画が目立った。同社は、年間2〜3棟ぐらいしか供給しないが、この商品企画をもってすればどこで供給しても負けない。あとはブランド力だけだ。

「ピア・キッチン」など秀逸プランが人気 ポラス「越谷」(11/21)

◇ 定期借地権付き  ◇

新日鉄都市開発・丸紅「「リビオ日暮里グランスイート」(217戸)

 定期借地権付きマンションとしては、新日鉄都市開発・丸紅「「リビオ日暮里グランスイート」(217戸)が割安の好物件だった。期間は60年で、地代前払い方式を採用しているため、月額地代も6,000円ぐらいと安い。駅近にも関わらずまずまずの住宅街に位置している。圧倒的な人気を呼ぶと見ていたが、すでに130戸を超える住戸を供給済みで、販売は好調に推移しているようだ。

安い!期間60年の定借 新日鉄都市開発・丸紅「日暮里」(10/18)

 街の再生・活性化  ◇

有楽土地「オーベルグランディオ多摩中央公園」(358戸)

三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス追浜」(709戸)

総合地所「ルネ追浜」(420戸)

三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス津田沼奏の杜」(721戸)

 どの分譲マンションもその街の再生や活性化に貢献しているが、今年は有楽土地「オーベルグランディオ多摩中央公園」(358戸)と、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス追浜」(709戸)と総合地所「ルネ追浜」(420戸)、三菱地所レジデンス「ザ・パークハウス津田沼奏の杜」(721戸)の大型4物件を選んだ。

 「多摩中央公園」は、厚生年金施設「サンピア多摩」の駐車場跡地で建設が進められているもので、都の「マンション環境性能表示」制度で満点の星15個に1個だけ足りない14個を獲得している。隣駅の長屋までは東京建物の建て替えマンション「Brillia 多摩ニュータウン」(1,249戸のうち604戸が戻り入居予定)の販売が来年から始まり、双方で1,607戸にも達する。競合は避けられないが、双方が地元以外からの需要を喚起して、街のポテンシャルを引き上げることに期待したい。

有楽土地「多摩中央公園」1期1次114戸ほぼ埋まる(12/12)

街の魅力をアピールして欲しい 有楽「多摩中央公園」(11/4)

 「追浜」は、バブル崩壊によって所有権が転々とし、開発に伴う土砂の搬出問題などもあって開発が進まなかったものだが、搬出のルートを確保したことで今回の開発にこぎつけた。地域の活性化への期待も大きい。双方で1,129戸にものぼり、完売まで3年ぐらいはかかりそうだが、地域の活性化に大きな役割を果たしそうだ。

全709戸の三菱地所レジ「ザ・パークハウス追浜」分譲(7/28)

総合地所「ルネ追浜」 テーマは「フリスム(自由に住む)」(4/15)

 「津田沼」は区画整理方式で開発が進められているもので、分譲マンションとしては同社が第一弾。今後第2弾、第3弾のマンション計画や商業施設の誘致も計画されているが、現段階では不明となっている。同社がトップランナーとして需要を喚起することに期待が集まっている。

予約殺到 三菱地所レジ「ザ・パークハウス津田沼奏の杜」(10/6)

 デザイン ◇

大和ハウス工業「プレミスト神楽坂」(71戸)

 デザイン性に優れている大和ハウス工業「プレミスト神楽坂」(71戸)も付け加える。縦ラインと横ラインの後姿がきれいで、外構にも力を入れている。システムキッチン天板や洗面のトップも家具の一部として捉え、木目調のメラミン化粧板を採用しているのも面白い。

後姿が美しい 大和ハウス「プレミスト神楽坂」(11/28)

 このほか、活況を呈しているコンパクトマンションだが、記者はやや食傷気味であまり見学しなかったし、印象に残る物件もほとんどない。機能性やデザイン性をどこも強調しているが、デザイン性について言えば、単にカラーリングや意匠の問題ではない。単身者の感性に訴えるものがないと支持されない。これからも供給は増えるだろうが、乱売合戦になったら大量の売れ残りも出ると見ている。

(牧田 司記者 2011年12月27日)