えきでんコラム 「想」 - 家族・住まい・街 -

 

プラスαに応える努力

安心・安全は当たり前
三井不動産販売株式会社 常務取締役  大井 健成 氏



先般の座談会の中で、第三企画の久米社長から、海外の不動産流通業にかかわる人に年配の方が多いというお話がありました。わたくしもその事は感じておりまして、実際米国で住宅流通に従事される方は圧倒的に年配の女性であります。お客様のお話に耳を傾け、アドバイスする、「住宅」といえども生活の為の手段に過ぎないわけですから、人生経験の豊かな人のほうがお客様とのリレーション作りには長けています。


商業施設事業を少しばかりかじった事のある私の身からしても、同じ流通業というくくりで見て同様のことが言えます。アメリカの五番街の北、セントラルパークのちょっと手前にバーグドルフ・グッドマンという超高級百貨店があります。このデパートのあるフロアーのフロアーマネージャー(当時はある日本人でした)がそのフロアーの販売員を募集したときの話です。さすが超高級デパート、たくさんの人が応募してきました。そして同じ五番街のサックスで長年経験を積んだ女性達を差し置いて選ばれたのは、メトロポリタンのキュレーター補佐の女性や、バークリー音楽院で勉強していた音楽家の卵だったり、小売経験ゼロの人たち。しかし彼女たちは最初の月から圧倒的な販売成績を残しました。
何故か?バーグドルフの顧客層、そのライフスタイルを考えたとき、お客様と会話ができリレーションが築ける人かどうかが問題だったのです。この逸話が示唆するのは、お客様との関係作りの重要性です。


どうしたらお客様の心を掴むことができるのか。我が不動産流通業界も成熟段階に入っていきます。もちろん安心・安全な取引は当たり前、プラスお客様の「根源的な欲求」にどれだけ迫る事ができるか、そしてその期待に応える事ができるか。お客様に近いところにいるという事が今ほど強みになる時代はありませんし、これからずっと同じ時代が続きます。新築と既存のマーケットヴォリュームが拮抗した昨年度を契機に、我々不動産流通業の新たなスタートとして努力していきたいものです。

 

追加情報

  • 引用: RBAタイムズ 2010.06 308号