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 木造耐力壁ジャパンカップB

東京都市大学VS京都大学 「幸せ」対決は都市大に軍配


「東京都市大学 大橋研究室」の「初代ユキヒロ」(左)と「小松組+安井杢」の「数奇檗」

 木造耐力壁ジャパンカップの準決勝戦で面白い対決があった。「東京都市大学 大橋研究室」(壁名:初代ユキヒロ) VS 「小松組+安井杢」(同:数奇檗)だ。前者はスタッフの一人「住田幸大」くんから名づけた壁で、後者は「小松幸平教授」が考案した壁。図らずも「幸せ」対決となった。

 大橋研究室(大橋好光教授)の壁名はカタカナだが、壁の桁には「幸大」と書かれており、壁のデザインも「幸」をかたどったものだ。その理由を聞いたら、何のことはない。スタッフの一人、同大学4年生の住田幸大くんの名前をそのまま壁名につけただけのことだった。主要な材料はひのき材で、金物を用いていないのが特徴だ。

 一方、「小松組+安井杢」は、京都大学生存圏研究所・小松幸平教授と「安井杢」のコラボで考案された壁だ。安井杢は、京都が発祥の工務店で創業は元禄元年。寺社仏閣・数寄屋造・茶室などの純日本建築を得意とし、国宝・重要文化財 などの復元・修復に携わる老舗だ。土台と桁は強度を高めるためひのきを採用したが、金物は一切使わず、主要構造部は北山スギを採用し、しかも強度を上げるため圧縮して用いているのが特徴。

 勝負は、小松組が終始リードを保ち、勝利するかに見えたが、土壇場で逆転。軍配は大橋研究室にあがった。変形の差は190ミリ対170ミリ、わずか20ミリだった。

 小松教授は「敗因はねじれ。斜格子の圧縮力と引っ張り力の計算がうまくいかなかったようだ」とがっくり。名刺を確認したら、小松教授は工学博士でなく、農学博士だった。農学博士が専門の博士を負かしたら一大事だ。丁度よかったのではないかと記者は思った。

 小松教授は「圧縮スギは濡れるとラーメンのように膨れる。後で見せてやろう」とも語ったが、とうとう見る場面はなかった。

 しかし、「これまでにないデザイン」(関係者)と「数奇檗」に対する評価も高く、デザイン賞を獲得した。記者も、この「数奇檗」は意匠だけでなく、準決勝まで進んだ機能性でも優れていると思った。

 勝った大橋研究室のスタッフは大喜び。「勝因は魂」などと訳の分からない歓声を上げていた。大橋教授は「精度が悪いのが幸いしたかも」と語ったように、何が幸いするかわからないのが人生だ。それにしても「幸」はひっくり返しても、裏返しても「幸」だ。8画で同じような字があるか調べたら「非」と「昌」があった。この字も耐力壁に使えるのではないか。

    


住田幸大くんと大橋教授

   
「数奇檗」と小松教授

  
歓声を上げる大橋研究室のスタッフ(右の写真の左端が幸大くん、右端が大橋教授)

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(牧田 司 記者 2011年10月11日)