2013/10/03(木) 19:41

長銀破綻のなぜと悔恨

バブルの罠と魔力

著    者/上田浩明

仕    様/四六判・236頁

定    価/本体1,600円+税

発    売/創英社・三省堂書店

ISBNコード/ISBN978-4-9906994-5-1  C0036

 

◆主な内容

本書は、かつて日本の銀行界においてその名を知られた日本長期信用銀行(長銀)がなぜ突然にして破綻に追い込まれたのか、長年闇に包まれていた真実をいま明かした意義ある好著である。著者は、当時、同行トップの一人・上田浩明氏。隠されていた秘密について、ようやく重い扉を開いたのが本書である。

長銀の破綻原因には、日本の経済力を弱めるための「アメリカの陰謀」が背景にあると見られてきた。あるいは、アメリカの影の力に踊らされた日本の当局が、〝国策捜査〟と呼ぶ強引なやり方で、最後の首を絞めたとの見方もある。それは、長銀を「粉飾決算」の犯罪者に仕立てることであった。1999年12月、元長銀の旧経営陣3名が刑事事件で起訴され、さらに総勢16名に総額90億円の損害賠償請求がなされた。しかし、結局のところ「粉飾決算」の事実はなく、裁判で被告たちは無罪を勝ち取った。

長銀の悪夢の始まりはバブルと言う魔力に魅せられたことにある。カネ余りと低金利は、慎重な銀行の本来のあり方を根底から揺すぶった。株と不動産の値上がり益で、濡れ手に粟で儲ける〝錬金術〟の虜になった。その結果の暴落相場から素早く逃げる柔軟姿勢を失っていた。これが、超大型銀行経営破綻の真因である。

いま、自民党が復活し安倍政権は「アベノミクス」を打ち出した。低金利・財政による経済刺激策である。そこに、東京オリンピックの招致成功が、景気の上昇に拍車をかける。既に株式相場は上昇に弾みを付け、マンションブームを初めとする不動産の活況をもたらしている。バブルの行く末は、決まっている。大不況である。

本書は、その意味でバブルの再燃に警鐘を鳴らすものである。なぜ長銀は崩壊したのか、その原因となるバブルはなぜ起こり、なぜそれを回避できなかったのか。私たちは、改めてここで、「歴史は繰り返す」ことを忘れてはならない。

 

◆著者紹介

1929年 静岡県松崎町生まれ。

1953年 東京大学法学部卒業、日本長期信用銀行入行、日本郵船出向、業務開発部長、中堅企業第一部長、仙台支店長、福岡支店長、総務部長を歴任。

1982年 常務取締役

1985年 日本長期信用銀行退任、日本エンタープライズ・ディベロップメント(NED)社長就任、ニュービジネス大賞審査副委員長、立教大学・横浜国立大学・慶應義塾大学ビジネスクール非常勤講師などを歴任

1987年 明治大学政治経済学部中小企業研究会客員(現在に至る)

1996年 日本エンタープライズ・ディベロップメント退任