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「フラット35」100%融資は歓迎だかリスク対策も必要

 

 自民党が景気対策の一環として、住宅金融支援機構(旧住宅金融公庫)の長期固定ローン「フラット35」(買取型)の融資条件となっている「購入価格の90%」という条件を変更し、100%融資を可能とする制度改正案をまとめたことが報じられた。

 詳細は不明だが、記者も基本的には大歓迎だ。記者は昨年12月、「失言ばかりで一向に支持率が上がらない麻生首相だが、住宅ローンの100%融資を実施する。ローン債務は政府が保証する≠ニでもぶてば、支持率はうなぎのぼりだろうし、景気は急回復するだろう」と書いた。その後、支持率は下がる一方なので、100%融資を実現しても支持率がうなぎのぼりに回復するかどうかは分からないが、景気回復のカンフル剤となるのは間違いない。すぐにでも実行に移して欲しい。

 しかし、100%融資はリスクを伴うことを覚悟しなければならない。アメリカのサブプライムローンと比較するのは論外だが、100%融資はローン破たんを招きかねない両刃の剣≠ナあることを認識しておくべきだろう。

 100%融資については、現行でも制度がないわけではない。「フラット35」 ( 保証型 ) がそうだ。これは、民間金融機関の住宅ローン利用者が返済できなくなった場合、住宅金融支援機構が金融機関に対して債務保証するものだ。しかし、圧倒的に利用者は少なく、取り扱っているのは千葉興銀、三菱東京 UFJ 、 SBI モーゲージの3行のみで、昨年まで実施していた日本住宅ローンは今年1月から一時中止してしまった。保証型はそれだけリスクも大きく(金利が買取型と比べほぼ1%高い)、金融機関も利用者も避けたいというのがその原因だと思われる。

 100%融資によってリスク管理債権が激増することも考えられる。平成19年度末の同機構の融資元金残高は約43兆円で、破綻、延滞債権、3カ月以上延滞債権をあわせた額は約3兆円6000億円にのぼっており、リスク管理債権比率は8.37%となっている。リスク管理債権比率は平成15年度の5.24%から16年度7.06%、18年度7.42%と年々上昇していることが分かる。

 これほどまでに数値が高いのは、18年度まで行っていた直接融資のリスク管理債権(既往債券)が約3兆3000億円と全体の約92%を占めているためだ。買取型のリスク管理債権比率は0.72%と低い。

 リスク管理債権が減らないのは、民間の融資条件が有利なローンに借り換えできる利用者(優良債権)が減り、借り換えができない利用者(不良債権)がなかなか減らないからだ。つまり、分母だけが減り、分子は一向に減らないという図式だ。リスク管理債権額は定額給付金を1兆円も上回っている。

 100%融資に踏み切るには、このようなリスク管理債権をどうするのかという問題のほかに、マイホーム取得者のみを優遇して賃貸住宅は何もしないかという公平性の問題、さらには消費者金融などの他のローン破たん者をどうするのかという問題も問われそうだ。

 「フラット35」(買取型)の100%融資は大歓迎だが、同時にローン破たんをどうするのかも政府・自民党は国民に納得させなければならない。

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(牧田 司 記者 3月13日)