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 減少する住宅ローン貸出額 平成7年と比べ半減

公庫廃止後は民間が全体の8割占める

 前回は、銀行ローンの貸し渋りがひどい≠ニいうデベロッパーの声を紹介したが、この問題に正面から取り組むのは困難だ。手がかりがないからだ。銀行がそんな取材に応じてくれるわけがないし、受けてくれたとしても「貸し渋りを行っている」と答えるわけがない。「厳正に処理している」という答えが返ってくるのが目に見えている。「貸し渋り」をうかがわせるデータもほとんどない。

 かつて、住宅金融公庫が直接融資していた頃は、全住宅ローン貸し出し額の4割ぐらいを占めていた。利用者の属性も、毎月、「住宅金融月報」などで公表されていた。公庫が廃止され、住宅金融支援機構になってからは「フラット35」のみのデータは公表されているが、フラット35の全住宅ローンに占める割合は数%にしか過ぎない。現在は、都市銀行などの民間が圧倒的に多く、全貸出額の80%近い。

 この8割近くを占める民間の住宅ローンの貸し出し状況を精査しないと、ローン利用者の実態は把握できない。しかし、それを調べる手段はない。ただ言えるのは、住宅ローンの新規貸し出しが平成7年の約38兆円をピークに年々減少しており、19年度は約19兆円と平成7年度と比べ半減しているということぐらいだ。かつては、都市銀行、地方銀行別などの融資件数が公表されていたが、現在は融資額しか公表されていない。住宅ローンの利用者の属性を知るデータはわが国にはないのが実情だ。

 (住宅ローンと直接的には関係ないが、金融機関の不動産業向け融資残高を見てみよう。金融機関の不動産業向け融資は昭和59年ごろにピークを迎えており、約65兆円が融資されている。その後、バブル崩壊後は漸減を続けていたが、平成10年ごろには再び60兆円台に乗り、ここ数年は50兆円台で推移している)

 平成7年といえば、バブル崩壊による地価・分譲価格の下落、低金利で郊外マンションが飛ぶように売れた時代だ。当時と比べ住宅ローン貸し出し額が半減しているのは驚きだが、それだけ市場も厳しいということだ。

 しかし、だからといって「貸し渋り」が行われているという証明にはもちろんならない。消費者サイドから貸し渋り≠ェ行われているという声は聞かれない。

 一般的に、民間の住宅ローンの場合、重視されるのは返済能力だ。安定的な収入がない人や、勤続年数が少ない人、消費者金融などから借り入れしている人は住宅ローンを借りられないというのが定説になっている。

 デベロッパーの非難の矛先は、このような銀行の融資姿勢に向けられる。つまり、@職業によって融資が差別されているA消費者金融などを利用した人たちの敗者復活戦≠認めるべきBニートや派遣社員の持ち家を促進するためにも融資条件の緩和を――というものだ。

 これらの声は、それぞれ説得力をもっている。民間金融機関の考えも聞きたいものだが、答えてくれそうもないので、フラット35はどうなっているかを住宅金融支援機構に話を聞いた。同機構の答えは次の通りだ。

 「公庫が2年前に廃止され、直接融資から仲買人として債権を買い取り、民間融資を支援するビジネスになったが、職種による融資差別はフラット 35 の場合、あり得ない話。選別融資を防止するための協定書も結んでいる。融資条件として住宅ローンの他の自動車ローン、教育ローン、カードローンの借入額も基準枠に入っているが、ローンの種類によって融資差別は行っていない。機構は、定期的に金融機関を訪問して職業、性別、地域などによって選別融資が行われていないかどうか調査している。これまで、協定に違反する事実はない」(広報)

(牧田 司 記者 8月26日)