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貸し渋り≠フ是非よりわが国の住宅政策のあり方の問題

 

 前回は、フラット35の場合は選別融資が行われていないという住宅金融支援機構のコメントを紹介した。

 それでは、ユーザーもデベロッパーもフラット35を選択すればよいという話になるのだが、そうもいかない事情もある。

 フラット35の場合、当然ながら民間住宅ローンより借り入れ金利が高いという問題がある。フラット35は、民間ローンの債権を買い取り、証券化するので証券化に伴うリスクもコストも貸し出し金利に上乗せされるので、民間の変動金利より高くなるのは避けられない。この問題については、供給サイドも消費者も「長期固定金利」のほうが生活設計が立てやすいことを説得するしか方法はないだろう。

 さらに、フラット35の場合、借入額が購入物件の90%以内という制約もある。第一次取得層にとっては購入価格の10 %を頭金として準備しなければならないのは大きな負担になる。

 メリットが多いフラット35がなかなか伸びないのは、このような問題があるからだろう。金利はともかく、それでは100%融資をすればいいということになるが、そうなった場合、問題がないわけではない。頭金の10%も準備できない層が住宅を購入してもいいのかという論議も沸き起こりそうだ。その是非はともかく、かつてはみんなマイホームを取得するために5年、10年の長期計画で頭金を積み立ててきた。労働意欲もそのためにかきたてられた側面がある。

 「貸し渋り」問題で考えなければならないのは、リスク管理債権の問題だ。融資条件を緩和すれば、それだけ貸し倒れのリスクは増大する。

 リスク管理債券比率については、住宅金融公庫が直接融資を行っていた平成10年ごろは確か4%ぐらいだった。当時、民間のリスク管理債権比率は10%ぐらいあったはずだから、公庫のローン債権は極めて優良な債権であった。

 その後、民間の融資獲得合戦が激化し、繰上げ償還が激増したこと、さらに直接融資がなくなったことなどで、分母となる貸し出し残高が減少したためリスク管理債権比率は年々上昇。平成19年度では8.65%まで上昇している。フラット35に関しては0.72%と極めて低い数値となっているが、これは制度が始まってまだ5年しか経過していないので当然だろう(都市銀行などは、個別住宅ローン貸し出しのリスク管理債権比率を公表していない)。

 いずれにしろ、リスク管理債権比率はどのくらいが適正かは、住宅政策、金融政策の問題でもあり、容易に数値化できる問題でもない。市場原理からすれば、現在のような環境下では、貸し出しリスクを低く抑えようとするのは当然だろう。その意味で貸し渋り≠ェ増加しても不思議ではない。

 貸し渋り*竭閧ヘ、銀行が選別融資を行っているかどうかの問題というより、わが国の持ち家政策、住宅政策をどうするのかの問題ということになりそうだ。

(牧田 司 記者 8月27日)