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 東日本大震災のマンション被害状況(続報) 管理協が発表

 高層住宅管理業協会(管理協)は9月21日、同協会会員会社が受託する東北・関東の1都6県約46,000棟の東日本大震災でのマンション被災状況をまとめ発表した。被災直後の3月16日に発表した調査結果の続報。

 今回の続報で分かったのは、 @昭和46年以前の旧・旧耐震基準、同47〜56年の旧耐震基準、同57年以降の耐震基準別の被害状況では、阪神・淡路大震災のような経年数や耐震基準別の被害傾向は見られないA壁式構造とその他の構造では壁式構造のほうが比較的被害が小さかった B耐震診断を受けているのは、これまでも地震の被害を受けている宮城県の実施率が高く、地震保険加入率とほぼ同じ傾向−−など。

 また、建物本体には全体的に被害が少なかったものの、立体駐車場、自走式駐車場、駐車機械、受水槽、受変電設備、地下埋設物などのインフラ被害が少なくなかったことも報告されている。免震装置が破損した例もあるという。

◇    ◆    ◇

 続報は、第1報とそれほど大きな差はないが、駐車場などの被害が少なくなかったことは注視しなければならない。記者も新浦安の液状化の取材で、駐車場が被害を受けているのを見た。万が一、車のガソリンが漏れ、爆発事故でも起きた場合の被害が気がかりだ。駐車場などの付帯施設の耐震基準づくりが必要だろう。

 経年数や耐震基準別で被害に差が出なかったのは意外な気がするが、阪神・淡路は直下型で、今回は震源地が三陸沖という違いからくるのだろうか。これは、専門家の詳細な分析を待たないと分からない。

 以下、管理協が発表した資料を紹介する。

東日本大震災の被害状況について

(続報)

1 東北・関東 36,629組合・46,365棟・2,327,400戸の被災状況

 平成23年3月末における当協会会員が東北・関東で受託するマンションは46,245組合・57,783棟・2,881,681戸で、今回の調査では会員407社中に対し250社の受託マンション 36,629組合・46,365棟・2,327,400戸を集計対象とし、調査率は棟数換算で57,783棟に対し46,365棟の80.2%である。

被災状況

 1) 建物本体被害:大破は0棟、中破は44棟(0.09%) 、小破は1,184棟 (2.55%) 、軽微・損傷なし45,137棟 (97.36%) である。(被害判定は建築学会の「被災度区分」を基準)【表−1】

 2)建物 本体一部住戸被害:一部住戸が被災し一時的に使用不能になったものは11棟、うち液状化が原因と思われるものが 1 棟である。【表−1】

 3) 付属建物被害:集会所、立体駐車場、白走式駐車場等建屋が傾き、又は躯体の破損により一時的に使用不能となったものは27棟、うち液状化が原因と思われるものが18棟である。【表−1】

 4) 駐車機械被害:タワー式駐車場タワー本体または装置、機械式駐車場等の駐車機械が損壊し、使用不能になったものは87棟、うち液状化が原因と思われるものが9棟である。【表−1】

 5) 外構・インフラ被害:受水槽、受変電設備・引込電柱、地下埋設物等のマンション敷地内のライフラインが地盤沈下等の原因で損壊し、管理組合による復旧等の為の工事を要したものは797棟、うち液状化が原因と思われるものが512棟である。【表−1】

 6) 津波の被害:東北・宮城県の16棟でいずれも1階部分が浸水したものである。【表−1※3参照】

 7) 超高層住宅 (20階建以上 ) の被害:503棟の調査結果は、大破・中破は0棟、小破39棟 (7.75%) 、 軽微・損傷なし464棟 (92.25%) である。なお、そのうち免震建物・制震建物は102棟で、うち小破1棟 (0.98%) のみであった。【表−2】

 8) 給水設備・エレベーターの被害

 受水槽・高置水槽の被害 ( 仙台市・周辺 106棟のみのサンプル調査 ) は、106棟の内33棟 (31.1%) に被害が発生し、24棟に水槽本体破損・傾き他が生じ、補修で対処は19棟 (79.2%) 、加圧給水等システム変更したもの5棟 (20.8%) ある。残り9棟は定水位弁・水槽まわり配管等の破損で補修にて対処した。復旧は 1 〜 2 日 で復旧できたものから給水方式を変更したものは1カ月以上要したケースもある。

 エレベーターの被害 ( 仙台市・周辺106棟のサンプル調査でエレベーター設置無し4棟を除く102棟 ) は、102棟全てが停止した。復旧は当日復旧が3件 (2.9%) 、2日〜3日 が大半であり、1棟はロープ交換の為1週間かかっている。

その他

 1) 耐震基準別の被害:旧・旧耐震基準、旧耐震基準、新耐震基準による建物の被害状況に阪神・淡路大震災のような経年数や耐震基準別の被災傾向はみられない。【表−3】

 2) 壁式構造とその他構造物との被害比較:壁式構造の被害が比較的小さいとの結果がでている。【表−4】

 3) 耐震診断の実績:簡易診断は188棟で、精密診断は131棟で実施されている。1都12県での診断実施率平均は3.5%であり、実施率の高い順で宮城県は32.0%、神奈川県6.1%、東京都3.9%となっており、宮城県の実施率の大きいのが顕著である。【表−5】

 4) 耐震改修工法の実績:改修実績は68棟で、うち柱巻付け補強が33棟 (48.5%) 、後打ち壁の増設17棟 (25.0%) 、耐震スリットの新設8棟 (11.8%) 、鉄骨枠組補強7棟 (10.3%) 、外付け鉄骨補強3棟 (4.4%) である。【表−6】

 5) 免震装置は中高層住宅にも設置されているが破損した物件も報告されている。

やはりマンションは地震に強かった 管理協の調査証明(4/21)

マンションも戸建ても強かった 世界に誇れる建設技術(4/4)

「大破」ゼロ 震度6〜7にも耐えた東北6県のマンション(4/1)

東北エリアのマンション大破はゼロ 管理協 目視調査(3/16)

(牧田 司 記者 2011年9月22日)