RBA HOME> RBAタイムズHOME >2011年 >

  森林再生で日本の復活を「日本は森林国家です」発刊

 

 今年2011年が国際森林年であることを記念した書籍、日本プロジェクト産業協議会(略称:JAPIC、会長:三村明夫新日本製鐵会長)と米田雅子慶應義塾大学理工学部特別研究教授(JAPIC森林再生事業化研究会主査)による編著「日本は森林国家です 産業界からのアプローチ」(A 5 判、235ページ、本体価格1,905円+税)が「ぎょうせい」から発刊された。

 JAPICは昭和54年(1979)、「産・官・学・民」の交流を通じ国家的諸課題の解決に寄与することを目的として設立。された。現在30業種170社の企業などから構成される公益法人。三村会長は国際森林年国内委員会委員でもある。米田教授は、林建協働・平成検地の提唱者であり、森林再生、建設業の複業化(農林業含む)、規制改革などの研究・支援に携わる。

◇      ◆      ◇

 記者は、今年が国際森林年の年であることから、少しずつ取材を進めているが、本書はわが国の森林と森林業が抱えている問題点を明らかにし、その解決策を示してくれる。なにより分かりやすく、関係者の熱いメッセージがひしひしと伝わってくる。

 例えば三村会長。三村会長は「はじめに−今、なぜ森林再生なのか」で、「これまで日本には資源がないといわれてきた。しかし、立派な資源を持ちながら上手く活用できていない分野が2つある。一つは領海と排他的経済水域に眠る銅や亜鉛などの海底資源であり、もう一つは森林資源である」とし、上手く活用できていない原因は「農業などに比べて、林業に対する政治の関心が低かった」と指摘。「日本の木材自給率を50%まで引上げれば、林業とその関連産業で25万人の新規雇用が生まれるという試算もある」「本書が、森林国家、日本の復活への一助となれば幸甚である」と述べている。

 奥野善彦・奥野総合法律事務所所長(前整理回収機構社長)は、「子孫のため美林を残そう」とアピールし、和田章・東京工大教授は「我々は森の国に生まれたのだから、建築にもっと国産の木材を使おう」と訴え、安藤直人・東大教授は、「今や、森林資源大国を見直す好機」と捉え、「50年から100年後に豊かな時代を送り届けることが我々に課せられた喫緊の課題である」と説く。

 日本創生委員会・小山巌委員(日鉄住金建材相談役)は「長い日本の歴史の中で、私達の祖先は山林と共に生きてきた…近代工業化のなかで失われた山林と産業の循環を取り戻す動きは、今始まったばかりである」と、森林国家復活に期待を寄せる。

◇      ◆      ◇

 本書は、ハウスメーカー、ゼネコン、製紙会社、商社、鉄鋼業、建設機械会社などの森林への取組みが紹介されているのも大きな特徴だ。ハウスメーカー関連では住友林業、積水化学、三井ホーム、大建工業、ナイス、大和ハウスなどが紹介されている。

 地方の取組みも紹介されており、岩手県・東北経済連合会の「森林資源を活かした地域の取組み」も紹介されている。岩手県は全国第 2 位の森林面積を有する森林県で、林建協働の動きや、森林バイオマス利用の取組みが盛んだという。また、今年 7 月には、「次世代林業サミット」が岩手県で開催されるという。

 震災復興が大きな課題ではあるが、基本的には被災地を元通りに戻すことが論議されている。しかし、そうではなくて、発想の転換を行い、東北を「次世代林業」の国家的モデルプロジェクトにはできないのだろうか。被災地を元通りにするのも結構だが、「森は海の恋人」と呼ばれるように、「森林の再生」こそが被災地復興と「日本復活」につながるのではないか。震災後の今読むのにもっとも相応しい本の一つだと思う。

「国土が崩壊し文化の解体も始まった」東京農大・宮林教授(3/1)

「産官学民が連携して里山の再生を」日土地・杉野専務(2/28)

ニコル氏の講演に感動 「国際森林年」記念フォーラム(2/15)

「国際森林年」 主要32社の社有林 保有・利用状況(1/24)

(牧田 司 記者 2011年5月6日)