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C.W. ニコル氏の講演に感動

「国際森林年」キックオフ記念フォーラム

『美しい森林づくり』企業・NPO等交流フォーラム


『美しい森林づくり』企業・NPO等交流フォーラム


 「国際森林年」キックオフ記念の「『美しい森林づくり』企業・NPO等交流フォーラム」が2月14日、国連大学「ウ・タント国際会議場」で行われ、関係者約260人が参加した。主催は社団法人国土緑化推進機構と「美しい森林づくり全国推進会議」(出井伸之代表)。国連大学、経団連自然保護協議会が共催、林野庁が後援した。

 出井氏やコンラッド・オスターヴァルダー国連大学学長、田名部匡代・農林水産大臣政務官の挨拶や、パン・ギムン国連事務総長のビデオレター、沼田正俊・林野庁次長と大久保尚武・経団連自然保護協議会会長の概要報告のあと、国際森林年国内委員会の委員で作家でもある C.W. ニコル氏が「『国際森林年』を契機に、未来に豊かな森を引き継ぐ環を拡げよう」と題する基調講演を行った。

 このあと、武内和彦・国連大学副学長(東大教授)、眞下正樹・経団連自然保護協議会顧問、川廷昌弘・生物多様性条約市民ネットワーク普及啓発部会長がそれぞれ学・産・民の立場から「森林」について報告、パネルディスカッションを行った。

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 この種のフォーラムに参加するのは初めてで、とても新鮮で有意義な時間を過ごさせてもらった。

 武内氏は、「わが国の産業の生産性が高まり、グローバルな競争力も向上したが、同時に生物多様性にとって矛盾することにもなった。『里山イニシアティブ』(人の福利と生物多様性の両方を両立させ、人間と自然環境の持続可能な社会を目指す活動)によって、里山の生態系サービスを経済的な価値として評価することが必要」「農業と林業、水産業などと分けないで、それぞれの個性を生かしつつ組み合わせの妙を発揮して豊かさを取り戻そう」などと語った。

 沼田氏や眞下氏は、1991年に「環境に配慮しない企業は生き残れない」とする経団連地球環境憲章を定め、これまで917件28億円にのぼる国内外の自然保護活動に対する支援活動を行ってきたことなどを紹介。「この先10年の取り組みが極めて重要」(沼田氏)とし、「生物多様性COP10会議」で決まった様々な目標に対して企業間の連携を強化する必要性を強調した。

 川廷氏は、民間の立場から、生物多様性を向上させるためには広報・教育・普及啓発(CEPA = Communication Education Public Awareness)が重要と語った。

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 参加者を感動させたのは C.W.ニコル氏だった。ニコル氏は「私は70歳を過ぎたが、日本の森に人生を賭けている」と語り始め、自らがイギリス・南ウェールズ地方出身であること、産業革命以後、同地方は石炭や鉄鋼業のために森を破壊し、貴族とお金持ちだけが利用できる小さな森を残したことについて触れ「小さい時、イギリスはダメだと思った。ロンドンは世界一と言われたが、森は死に、テムズ川も死んだ」などと語った。

 その後、17歳で冒険の旅に出て、カナダやエチオピア、日本などで活動したことなどを紹介。「僕は美しい自然の中にいたい、街には住めない。22歳で日本に来たが、日本のブナの原生林を見たとき、心が嬉しくなった。ブナは昔、水の神様と呼ばれた。大聖堂よりたくましく美しいブナの林を残そうと、自分の人生の地図が見えた。イギリスは1000年も昔にクマは絶滅したが、日本では人間と自然がともに暮らせる哲学があると思った。40歳になって日本に住みついた」などと、1980年に長野に移り住んだ経緯などを語った。

 さらに、荒れ放題のブナの「幽霊林」の再生に取り組み、少しずつ山林や荒廃した農地など取得し、現在までに約30ヘクタールの「アファンの森」を守り育ててきたことなどについて語った。「アファンの森」では生物多様性に関する詳細なデータを収集しており、当初7種類だった山菜が137種に増え、絶滅危惧種の26種が戻り、37種にものぼるトンボが生息するという。

 「僕の森は見ればよく分かる。美しい。貧弱なのは国有林」と笑いを誘いながら、わが国が抱える問題についても指摘した。

 ニコル氏は最後に「森は心のふるさと。森が荒廃したら人類は生きられない。汗と愛情を注いで、これからは(テーマを)森にしましょう、川にしましょう」と呼びかけた。


ニコル氏

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 フォーラムに先立ち同日、「フォレスト・サポーターズ」の事務局を務める社団法人国土緑化推進機構、美しい森林づくり全国推進会議、経団連自然保護協議会は、「国際森林年」及び「国連生物多様性の10年」の幕開けを契機として、生物多様性条約の3目的の実現及び「愛知目標」の達成に向けた産・官・学の連携・協働を推進する「協働宣言」を締結した。


調印式

(牧田 司 記者 2011年2月15日)