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 「産官学民が連携して里山の再生を」

日土地・杉野恭専務が熱弁


宮林教授(左)と杉野氏


  東京農業大学総合研究所研究会が主催したフォーラム「多様な主体の参画による地域再生 〜企業参加による美しい里づくり」が2月26日(土)、同大学内で行われ、日本土地建物専務執行役員都市開発事業本部平塚プロジェクト推進室長・杉野恭氏が「事業としての里山再生」をテーマに基調講演、パネラーとしても熱弁をふるった。

 同フォーラムは、同大学地域環境科学部や同大学短期大学部がこれまで研究活動などを通じて連携してきた 4 つの地域(@湘南ひらつか・ゆるぎ地区A輪島市三井町B多摩川源流大学C福島県鮫川村)を構成メンバーとし、昨年6月に「地域再生研究部会」 ( 部会長:麻生恵同大学教授 ) が発足、その設立記念として実施されたもの。同部会は、企業・行政・大学・地域住民が一体となって地域再生の視点から実践的な活動を行うのが目的。

 杉野氏は、平塚市郊外のゆるぎ地区約142ha の過半を所有する「里山」について報告。「地元の自治会の方から『これ以上、荒廃を放置できない。双方で何とかしよう』という申し入れがあって、平塚市や東京農大を加えた4者の協議会が発足した。環境に共生したスマート・タウンを創り、コンセプトに共鳴してくれるアクティブシニア層向けに住宅を建設し、あわせて自然交流拠点や健康増進拠点も設置して、『ひと』『もの』『かね』の動きを活発にしたい」などと語った。

 また、「事業化については、開発規制など難しい問題もあるが、何とか10年先までにはメドをつけたい」などと述べた。

◇     ◆     ◇

 杉野氏が「開発規制」の問題を指摘したとき、記者は同地区が都市計画法の市街化調整区域に指定されているのではないかと考えたが、その通りだった。フォーラムに参加した平塚市まちづくり政策部まちづくり政策課課長代理の小林岳氏も否定しなかった。「神奈川県の場合、調整区域の解除は容易でない」とも語った。

 都市計画は、100年、200年後の都市づくりを見据えた法律だから、軽々しく論ずるべきではないかもしれないが、市街化調整区域と市街化区域のいわゆる線引きが定められたのは昭和43年だ。急速に進む都市化の波の中で、乱開発を防止する意味で市街化調整区域が設けられた。例外はあるが、原則として住宅の建設は不可とされている。

 しかし、その後、世の中はめまぐるしく変わった。大都市への人口集中が進む一方で、地方経済は疲弊し、同大学地域環境科学部教授・宮林茂幸氏の言葉を借りれば「国土が崩壊しズタズタ状態。文化の解体も始まった」危機的状況にある。現在、市街化調整区域は国土の10%強だが、果たしてこのまま規制を続ける今日的な意味はあるのかと思わざるを得ない。平成16年5月に香川県は全県で線引き撤廃を行った。以来5年が経過するが、「線引きを撤廃しても問題がないと聞いている」(香川県庁都市計画課)ようだ。

 杉野氏は「向こう10年までにはメドをつけたい」というが、杉野氏は自ら語ったように団塊世代だ。団塊世代が元気でいられるのは向こう10年が限度だろう。国交省の担当者に聞いたら「香川県が線引きを撤退した時に、その他でもいくつかそのような動きがあり、最近でもパラパラある。許可権者の自治体が独自の制度を使って様々な施設や住宅を調整区域内で建設することも可能」ということのようだ。知恵を絞って1日も早くスマート・タウンを実現して欲しい。

 日土地は、バブル崩壊後、ほとんど姿を消した銀行系デベロッパーの中で戸建てやビル開発を継続して行ってきており、最近ではソリューションビジネスにも力を入れている元気な会社だ。いまがチャンスだろう。


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(牧田 司 記者 2011年2月28日)