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第 2 回「建基法見直し検討会」各委員の意見書から

 国土交通省は4月1日、第2回目の「建築基準法の見直しに関する検討会」を開いた。今回は、設計関係について意見を交換するもので、@構造計算適合性判断制度A建築確認審査に係わる法定期間B厳罰化――などが論じられた。

 記者は傍聴していないが、入手した資料を一通り読んだ。各委員の意見が述べられたもので、60ページぐらいに及ぶものだ。以下、興味深く読んだ意見を紹介する。

 峰政克義氏(日本建築士会連合会副会長)「確認申請で間違ったものが出来ないようにするためには、間違いを発見して正すことよりも、間違いを起こした場合の修正の時間と手間を避けたいとする抑止力が働き、間違いを起こさない設計と精算を協働して行うよう心がけ、そのため日頃から資質・能力の向上に務めることこそ本意であると考える」「建築物が違法となった場合、発注者の意を受けて造った設計者や施工者とともに(発注者も)連帯責任を負うべきことを、建築基準法に明記されることを望む」「直接人件費にも満たない低い設計・工事監理報酬で業務を行い、必要な業務を省略し、その結果、違法建築を作ってしまう例は少なくない」「正確さを期して多くの図書を作成させ、そのすべてを正確に審査するために、手間と時間をかけ、幾重にもチェックを重ねても、決して万全とは言い切れない」

 三栖邦博氏(日本建築士事務所協会連合会会長)「構造計算適合性判定の対象建築物は、基準法文中に建築物の規模等を規定しているもの(RC造高さ20m超、S造階数4以上等)に限定すること」「実質的な(確認審査)期間短縮のため、構造計算適合性判定機関の独立要件を撤廃し、構造計算適合性判定を確認検査機関内で行える仕組みに変えること」「検査済証がない限り、建築物が社会的資産としての価値がないことを徹底することにより、関係者の遵法意識を高める」「建築基準は過度に詳細かつ複雑で、一般国民はもちろん建築士にとっても難解で理解し難い」

 東條隆郎氏(日本建築家協会理事)「将来的には本来の資格法である建築士法の中に『統括建築士(建築家)』という、UIA(国際建築家連合)基準と同等な資格として国民に明瞭に公示するとともに、国際的にも受け入れられる資格にしていくことを提言する」

 尾島勲氏(日本設備設計事務所協会会長)「国際的には、建築の設計者は、アーキテクトとエンジニア(構造、設備等)に区分されているのが通例ですが、我が国の建築士制度では、建築士が建築全域を包括する法的業務資格者になっています」

 来海忠男氏(プランテック総合計画代表取締役所長)「2007年6月の法改正後、迷惑を被ったのは我々建築業界ではなくクライアントである。建築基準法の改正は、国民目線に基づく事が重要」「今回の法改正は、A(法により細部までガチガチに規定し、設計側、審査側の裁量性を無くし白か黒かで判断する法律)によっていると考えられる。このような法のもとで設計者に罰則を課す事はなじまないのではないか。B(法の求めるものの内、工学的な部分は資格者の裁量を認め、最小限の規定にとどめる)のような法のもと、設計者の裁量を認めてはじめて設計者に対する罰則について議論すべきである」「大都市の規制と地方(山林)の基準が同じことが、地方の成長を妨げている」「自然を守りながら『きれいな川』『きれいな自然』を楽しむためのペンション、民宿、ホテルが国道沿いにしか建てられない」

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 それぞれがなるほどと思えるものばかりだ。特に「建築基準は過度に詳細かつ複雑で、一般国民はもちろん建築士にとっても難解で理解し難い」「直接人件費にも満たない低い設計・工事監理報酬で業務を行い、必要な業務を省略し、その結果、違法建築を作ってしまう例は少なくない」「検査済証がない限り、建築物が社会的資産としての価値がないことを徹底することにより、関係者の遵法意識を高める」「大都市の規制と地方(山林)の基準が同じことが、地方の成長を妨げている」などの意見に注目した。

 専門家が理解し難い法律をわれわれはどう理解すべきなのかが問われているし、検査済証がない建築物にどうして電気やガスが引かれるのかもずっと疑問に思ってきたことだ。都市と農村の建築規制が同じというのも解せない。

 今回の改正作業が、「屋上屋を重ねるもの」(一定のものを除き、構造計算適合性判定は不要という意見の三栖氏の意見書)にならないよう願うばかりだ。

「国家ビジョンが見えない建基法検討会」専門家語る(3/26)

「建築基準法見直しに関する検討会」はどこに進むのか(3/9)

建基法見直し 都市計画法含め徹底した論議を (3/8)

(牧田 司 記者 2010年4月2日)