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建基法見直し 都市計画法を含め徹底した論議を

 国土交通省は本日(3月8日)、建築基準法の見直しを検討するため有識者や実務者などから構成する「建築基準法の見直しに関する検討会」(座長:深尾一・首都大学東京都市環境学部都市環境学科教授)の第1回会合を行う。

 記者は、これまで現場の人たちから「接ぎはぎだらけの建基法は矛盾だらけ」と聞いている。「わが国の都市計画は完全に失敗した」「そもそもわが国には都市計画などない」と言い切った専門家もいた。

 会合は、単に建基法の問題だけでなく、都市計画法、その他、法律よりも条例、通達、指針などのほうが重視される建築行政全般のあり方について徹底して論議していただきたいと思う。

 いかに分かりづらい都市計画が行われているか、ひとつ例を紹介しよう。

 渋谷区は昨年12月、建築物の高さの最高限度(絶対高さ制限)の指定」について都市計画決定・施行した。13、16、20、30、40,50mなどとなっている。

 この規制に対して、次のようなパブリックコメントが寄せられている。「制限値が10mごとになっている根拠を明確にして欲しい。良質な住宅ストック形成の観点から、十分な階高(およそ3m以上)が確保される高さの設定をするべき」

 このパブリックコメントに対する渋谷区の回答はこうだ。「今回定める制限値を5m間隔とすると約1.5階相当であり、細かすぎると考えます」

 回答は極めて不親切だ。回答によると 1 階部分は約 3.3mと想定しているとも取れるが、そうでもない。10m刻みの規制は、次のような算式が用いられていると思われる。まず容積率を建蔽率で割り標準的な階高を算出し、この数値に標準的な階高3mを掛け、屋上手すりなどの部分として1mを加え、さらに設計の自由度を加味して1.5倍し、その数値の10m未満を切り上げる方法だ。これによると、ほとんど10m刻みになる。

 これ自体、一般の人にはほとんど理解できないが、問題は緩和措置があって、規制値の1.3倍、1.5倍まで高さ規制が緩和される。つまり、26mや45mなどといった半端な数値にもなる。多摩市が今年11月の告示を予定している規制値を見ると、緩和措置も含めると絶対高さは17、20、23、26、29、35、44mなどとなる。

 このように、いったい 1 層の高さをどれぐらいに設定しているのかさっぱり分からなくなる。記者は、1層を3.1、ないしは3.2mとし、その倍数で制限値を定めれば極めて明快だろうと考えるがいかがだろうか。

(牧田 司 記者 2010年3月8日)