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旧々耐震マンションの耐震診断を義務化すべき

マンション長寿命化協議会が答申


左から池田副理事長、黒住理事長、山根副理事長、渡邉理事

 高層住宅管理業協会(管理協)は2月22日、マンション長寿命化協議会が2月20日に中間答申した「マンションの耐震化の促進に関する緊急提言」を発表した。同協会が諮問した「マンションに安心して長期に住まうための新たな仕組課題」について応えたもので、東日本大震災の教訓を踏まえ、旧耐震マンションの耐震診断・耐震改修を急ぐべきとしている。

 提言では、区分所有者、管理組合に対しては経費、合意形成の手間などの問題から先送りすることのない耐震診断・耐震改修を行うべきとしている。

 マンション管理組合に対しては、耐震化に向けた改修方法、組合運営手段、自治体の助成など情報提供や提案などを行うべきとしている。

 また、政策当局には現行法規制の見直しまたは特別立法の制定などによる耐震診断の義務付け、改修による耐震化の実施、助成制度の整備などを求めている。建物など財産の安全確保に関する区分所有者の法制上の義務の明確化、管理組合の合意形成の円滑化を図る決議要件の緩和、耐震性が市場で評価される仕組みの整備なども求めている。

  全国で106万戸あるといわれている昭和56年6月以前の旧耐震基準、昭和46年4月以前の旧々耐震基準マンションのうち、とくに旧々耐震基準マンションの脆弱性は指摘されていながら、耐震改修費用が50戸あたり1億円くらいかかることなどから、平成23年に管理協が行った1都6県を対象にした調査でも耐震診断を行ったものはわずか2.5%にとどまっている。

 管理協は、答申を受けて「実施できるところから実施する」としている。

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 提言は、「耐震診断を義務化すべき」「4分の3以上や全員合意を必要とする場合の決議要件を過半数でよい普通決議にすべき」などとかなり踏み込んだ具体的な提案を行っている。

 黒住昌昭理事長(大京アステージ会長)は、「耐震診断・改修工事の特別決議はあっけなく決まるケースも想定される。しかし、組合員の年齢、所得、環境などもうすこしじっくりと論議する必要がある」と慎重な構えをみせた。

 また、池田孝副理事長(三井不動産住宅サービス会長)も、「当社が管理している2,200物件のうち約8%、160物件ぐらいが旧耐震基準以前の物件だ。都の補助制度も使いながら、耐震診断を行うよう管理組合を誘導しなければならない」と話したのにとどめた。

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 記者は、阪神・淡路大震災で無残にも倒壊したマンションをたくさん見ている。ほとんどが旧々耐震マンションだった。あの惨状を考えると、提言はよく理解できる。一刻も猶予できないとも思う。

 しかし、中小規模マンションなどには改修資金を手当てできるところはほとんどないのではないか。行政が支援するしかないが、その財源もまたどう捻出するか難しい問題が立ちはだかっている。 

 この問題については、同協議会が行った先のシンポジウムで、筑波大学人間総合科学研究科准教授・花里俊廣委員が興味深い基調講演を行った。

 花里氏は、現状のままで被災した場合の公的、私的負担などの額を算出し、耐震改修をした場合の支出とを比較したときの社会的なプラス効果を試算した。データによると、東京の臨海部や下町などにある旧々耐震マンションの耐震改修に200万円かけても、経済的にはプラスになるとし、行政の予防的公的支出は合理的であるとしている。

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(牧田 司記者 2012年2月23日)