RBA HOME> RBAタイムズHOME >2012年 >

「マンション管理検討会の論議は偏っている」

黒住昌昭・高層住宅管理業協会理事長


左から池田副理事長、黒住理事長、山根副理事長、渡邉理事

 「マンション管理検討会の論議はかなり偏った方向に向かっている」−−高層住宅管理業協会(管理協)の黒住昌昭理事長など理事は、国交省の「マンションの新たな管理に関する検討会」で検討されている第三者管理方式をめぐる論議に牽制球を投げた。2月22日の記者懇親会で記者団の質問に答えた。

 黒住理事長は、「先の第三者管理方式をめぐる論議は、かなり偏った方向に向かっていると思わざるを得ない。『機能不全』といわれるマンションはリゾート物件とか賃貸化が進んでいるマンションには見られるが、それはほんの数%にしか過ぎない。大半のマンションは健全に運営されている。やむを得ず第三者管理を導入する場合は、厳しいチェックが必要。大手の管理会社は利益相反の問題もあり、やりたくないと考えている。

 仮に受託した場合でも、金銭的な事故に対しては保障する資金力があるが、個人が受託するのはきわめてリスクが高い。弁護士であろうと会計士であろうとマンション管理士であろうと同じだ。保険制度があるではないかというが、犯罪行為に対する保険による保障などありえない。公的機関など公平な第三者管理にしないと難しい。

 われわれの管理会社と管理組合は、プリンターとトナーの関係のようにいわれたようだが、そんなことをすればあっという間にリプレースされる。マーケットはきちんと働いている」と語った。

 渡邉好則理事(大和ライフネクスト社長)も、「(理事長の意見に)同感。われわれは管理組合に対して、樹木の枝1本を切るにもきちんと対応し、お互いが信頼関係を築けるよう汗を流している。机上で物事を考えてもうまく合理的には進まない」と話した。

 また、山根弘美副理事長(ダイワサービス社長)は、「個人の第三者管理者が悪意の意図で管理したことを想定すると、背筋が寒くなる。論議を煮詰める必要がある」と、個人の第三者管理には慎重であることを述べた。

◇    ◆    ◇

 先の「マンションの新たな管理に関する検討会」では、記事にしたように、第三者管理方式をめぐりプリンターとトナー∞機能不全∞成年後見人∞家庭相談所≠ネど、あたかも管理組合や第三者管理人が最初に安く受注して、その後の維持・管理で儲けるたとえ話とか、入居者の高齢化が進んだ管理組合は判断能力がない無能力者であるかのような論議がされた。

 このため、管理に携わっている専門委員からは、「管理会社と管理組合はウィン・ウィンの関係を結んでいる」「論議されていることが理解できない」などの意見が出され、法務省のオブザーバーも「成年後見人制度を活用するのは、マンション管理になじまない」と意見を述べた。

◇    ◆    ◇

 マンション管理のリプレースについて、ある管理会社のホームページによれば、マンションの管理の適正化の推進に関する法律(マンション管理適正化法)が施行された2001年ころから管理組合が管理会社を変更する=リプレースが増えはじめ、2007年現在、管理協加入会社が管理する468万戸のうち116万戸(24.8%)がリプレースによって管理会社が変更されたマンションだという。検討会で出た「プリンターとトナー」の話は、こうした背景をとらえた発言だったのかもしれない。

管理協へ旧々耐震マンションの耐震診断義務化答申(2/23)

国交省 第2回「マンション管理ルールづくり検討会」(2/17)

(牧田 司記者 2012年2月23日)