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住友不動産 常識破りのセミオーダーマンション導入に踏み切る


「シティテラス下目黒」完成予想図

 住友不動産は1月31日、建物完成後でもお客さまの好きな水周りを含めた間取り選択やインテリアカラーの選択が可能なセミオーダーの「カスタムオーダーマンション」を導入すると発表した。対象となるのは都内23区や大規模マンションなどで、首都圏で供給する年間3,000戸ぐらいのうち千数百戸から2,000戸に原則採用する。

 大きな特徴は、第一にキッチン、バスルーム、トイレなど水周りの位置変更を含めたプラン選択が最大で13種類から選べるということだ。第二は、水周りは完成時に固定となるが、その他の間取り選択は完成後半年間対応が可能ということだ。そして第三に、全て無償で対応するということだ。

 「カスタムオーダーマンション」に対応する第一弾は「シティテラス西荻窪」(143戸)「シティテラス下目黒」(175戸)「シティテラス武蔵境」(170戸)「シティタワー上野池之端」(135戸)「シティハウス本郷三丁目」(56戸)「シティハウス高輪ヒルトップ」(34戸)の6物件。

 記者発表会に臨んだ同社代表取締役専務執行役員マンション事業本部長・小林正人氏は「お客さまのマンション選択のこだわりは年々増している。当社はこれまで共用部分などで差別化を図ってきたが、これからは専有部分について間取り変更などマンション選びの新しい提案を行ない顧客満足度を高めていきたい」と開発の経緯や主旨などについて語った。

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 同社の昨年末の都心5カ所での「総合常設マンションギャラリー」開設にも驚いたが、今回はそれ以上だ。発表を聞きながら信じられない試みだと思った。今でも半信半疑だ。業界では、野村不動産が10数年前にオーダーマンションを発売しており、三菱地所レジデンスも数は多くはないがオーダーマンションを供給している。他社もSI対応のマンションを結構供給してきた。間取り選択可能マンションも少なくはない。カラー選択は常識だ。

 それでも、野村不動産のオーダーメイド実績は110棟ぐらいで戸数にして千数百戸だ(これでもすごい数字)。三菱地所レジデンスも10棟ぐらいではないか。水周りの変更は、上下階への遮音対策などを施さないとクレームの対象となることから、デベロッパーは積極的に取り組んでこなかった。

 同社は、この業界の常識を覆そうとしている。戸数は、あくまでもセミオーダーだが、年間2,000戸ぐらいというからこれはすごい数だ。しかも、従来の施工と比べ階高やスラブをいじらなくてもできるという。コストアップについても、小林専務は「最大の課題がコストアップだったが、これもどうにか克服できる」と自信をのぞかせた。


約60人が詰め掛けた記者発表会

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 狙いは十分すぎるほど理解できる。第一弾として予定している物件は、ほとんど全てが坪単価にして300万円を突破するエリアだ。専有面積が40〜50u台のコンパクト系は間取り選択など行なわなくても売れると思うが、専有面積が広いタイプは戸別ニーズに対応しないと販売に時間がかかるのがいまの市場だ。同社は、この高単価・高グロスの市場で他社との差別化を徹底しようという戦略と見た。

 階高などの仕様を変更することなく対応が可能になったことについては、小林専務は「企業秘密」と明らかにしなかった。階高をそれほどあげなくともSIに対応できる技術をゼネコンは持っているが、住友不動産がどのような工法を用いるのかは分からない。「西荻窪」のパンフレットにはその説明がなかった。リビングの天井高は2,450ミリだった。

 同社がこのような提案を行なうことで、同業も追随せざるを得なくなるのではないか。すでに三菱地所レジデンスは昨年、「茅ヶ崎」でプラン選択マンションの「スマートセレクト」を発表しており、今後他のエリアでの採用を検討している模様だ。先駆者の野村不動産は最近はオーダーマンションは少ないようだが、メンテナンス・可変性が容易なSIを多用している。また、三井不動産レジデンシャルは「パークホームズ」の基本性能・設備仕様を一新するし、大京は収納や設備仕様のグレードアップ・使い勝手の改善に積極的に取組んで差別化を図っている。


「シティテラス武蔵境」完成予想図

三菱地所レジ 「スマートセレクト構想」第一弾分譲(1011/12/15)

都心5カ所に「総合常設マンションギャラリー」 住友不(10/28)

(牧田 司記者 2012年1月31日)