RBA HOME> RBAタイムズHOME >2012年 >

三井不動産・千葉大・パナソニック・みらい

「ネットワーク型家庭用植物工場」の実証実験を開始


千葉大がデザインしたデモ機

 千葉大学、三井不動産、パナソニック、鰍ンらいは5月28日、千葉県・柏の葉キャンパスエリアにおいて植物工場の利用を推進する「街中植物工場コンソーシアム 柏の葉実証部会」を組織化し、住宅、学校、商業施設、病院など街の中のあらゆるところに植物工場を設置し、それらをネットワークでつないで地域での最適利用を行う「みらい畑スマートネットワーク」の構築を目指すと発表した。 

 活動の第一弾として、2012年9月から1年間、柏の葉キャンパスエリアの住民10世帯程度をモニターに、ネットワーク型家庭用植物工場の実証実験を行う。モニターは、パナソニックが開発した家庭用植物工場を設置し、千葉大学監修の基でみらいが開発した家庭用栽培レシピ(種・苗など)を使用、野菜の栽培を行なう。三井不動産は、それらをネットワーク化し、WEBサイトで情報を共有できるよう交流支援活動を行っていく。

 食物工場とは、内部環境をコントロールした閉鎖的または半閉鎖的な空間で食物を計画的に生産するシステム。街中食物工場は、千葉大が中心となり2010年8月に設立。安心・安全な野菜を生産するばかりではなく、癒しの空間を演出したり都市市民が農的生活に触れる機会の創出を目指す。農水省のモデルハウス型食物工場実証・展示研修事業の一つでもある。

◇    ◆    ◇

 報道陣に公開されたデモ機は、幅約60cm、奥行き約38cm、高さ約85cm。光源は赤と白のLED照明で、栽培可能株数5〜7株。みらいによると、現段階でレタス、水菜、バジルなど30種ぐらいが栽培できるとしており、パナソニックは独自にイチゴの栽培実験も行っている。

 装置の価格については、パナソニックソリューション営業推進部広域マーケティンググループ・宮木正俊氏は、「試作品段階なので値段は申し上げられないが、家電商品ぐらいの価格にしたい。量産化ができれば当然価格は下げられる。家電に組み込むことも可能。LED照明の電気代は1日当たり24円から48円」と話した。

◇    ◆    ◇

 「家電並み」の価格がいくらか分からないが、機械の値段・種・苗代をコストに入れないで、電気代が1日当たり約30円、種を植えてから収穫できる日にちを仮に40日とすると、電気代だけで1,200円。レタス7株を収穫するとすれば、1株当たりのレタスは約171円だ。市販のレタスよりはかなり高くつく。

 しかし、量産化が可能になり機械の値段が下がれば、一般家庭に普及する可能性もあるかもしれない。例えば数十家族がそれぞれ別の野菜を栽培して交換するようにすれば、面白い展開ができる。集合住宅の共用部分の一角に設置することも可能ではないか。

◇    ◆    ◇

 記者発表会の帰り、千葉大の「食物工場」で獲れたトマトをもらってその場で食べた。「食物工場」は昨年見学しており、トマトがどのように栽培されているかも知っている。今回食べたものも、市販の1個百円前後のものと比べるとはるかにおいしかった。実がしっかりしており、昔食べた路地ものトマトの味に似ている。1個数百円する甘いトマトと比べると、甘みは負ける。


千葉大でもらったトマト

◇    ◆    ◇

 もう一つ、大事なことを書き忘れていた。記者発表会で最初に挨拶した千葉大学名誉教授でNPO食物工場研究会理事長・古在豊樹氏(元千葉大学長)のことだ。以前、何かの取材のときも気になったのだが、古在氏は、われわれ団塊の世代で知らないものはいないと思われる哲学者「古在由重」(1901〜1990)と顔がダブった。古在由重も頭の毛は薄かったし、丸顔で赤ら顔だった。豊樹氏はそっくりだった。

 発表会後、古在氏にはたくさんの記者が取り囲んでいたし、レタス1個の値段も分からない記者は声を掛けるのも失礼だと思い、そのまま帰った。いま、記事を掲載する段階でネットで調べた。その通り、息子さんだった。豊樹氏は68歳。戦後、由重はレッドパージを受けていたから、豊樹氏も「その余波を受けた」そうだ。今度、取材の機会があったら、父のことを聞こうと思う。


遠慮したため最後列から撮った古在氏

三井不動産他 柏の葉キャンパスシティ会見に130人(2011/7/12)

三井不「柏の葉キャンパスシティ」スマートシティ取材会(2011/7/9) 

(牧田 司記者 2012年5月28日)