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  「スマートシティ」「健康長寿都市」「新産業創造都市」の実現へ


左から秋山柏市長、岩沙三井不動産会長、濱田東大総長、齋藤千葉大学長、小宮山三菱総研理事長

 柏市、千葉県、東大、千葉大、三井不動産が共同記者会見

 柏市、千葉県、東京大学、千葉大学、三井不動産は7月12日、共同記者会見を開き、柏の葉キャンパスシティ(千葉県柏市)の街づくりを通じて「スマートシティ」「健康長寿都市」「新産業創造都市」を実現させるための事業展開についてアピールした。

 「スマートシティ」については、今年4月に着工した三井不動産の「柏の葉キャンパス駅前 148 街区」に、地域全体の発電量・受電量・消費電量を一元管理する「エリア・エネルギー管理システム( AEMS )」を新たに構築し、地域全体のエネルギーの「見える化」を実現し、太陽光発電システムのほか、生ごみバイオ発電、ガス発電を行い、地域全体で省エネルギー活動を進めていく。

 「健康長寿都市」では、東京大学が「高齢社会総合研究機構」を設立し、ジェロントロジー(老年学)の学際的取り組みを行っており、ジェロントロジー ・コンソーシアムとして民間45社の参加を得て「理想の2030年超高齢未来へ」のビジョンとロードマップを完成させるなど、内外に研究成果を発表している。

 「新産業創造都市」では、東京大学が148街区に新たな事業・研究領域の開拓に向け、公民学連携で社会実験を進める中心拠点「東京大学フューチャーセンター」を設置するほか、千葉大学が農林水産省の「モデルハウス型植物工場 実証・展示・研修事業」により国内最大規模となる植物工場を設置し、60社に及ぶ産学連携のコンソーシアムによってトマトやレタスの生産を行っている。植物工場では収穫量35%増加、生産コスト30%削減を目指しており、成果が国内外で注目されているという。

 会見に臨んだ秋山浩保・柏市長は「5年前に始まった官民学連携の街づくりの会議などはこれまで700回以上に及ぶ。市民が積極的に街づくりに参加していくことを全面的にバックアップしていく。柏の葉が日本が直面している様々な課題を解決するモデルになるようチャレンジしていく」と述べた。

 岩沙弘道・三井不動産会長は、同社が取り組んでいる街づくりに触れながら「柏の葉には世界最先端の『知』が集積しており、公民学が連携して人をつなぐ、技術をつなぐ、自然をつなぐ環境共生の街づくりをハード・ソフト両面で実証する段階に入った」と強調した。

 濱田純一・東京大学総長は「『柏のキャンパスは『知の共創』がテーマになっており、新たな学問を根本的に組み替え強化する、国際化を進める、社会連携を進める要と位置づけている」とし、次世代交通の取り組みや、30数件に上る社会実験プロジェクトの実績なども紹介した。

 齋藤康・千葉大学学長は「柏の環境健康フィールド科学センターは『健康に生きる』をテーマに挑戦しており、ケミレスタウン、東洋医学、予防医学なども行っている。植物工場は究極の施設。世界の国々から注目しているプロジェクト。2012年にマドリードで開かれるソーラー・デカスロンには柏の葉の研究成果を日本代表として参加する」と語った。

 小宮山宏・三菱総合研究所理事長(前東大総長)は、自身が東大総長のときから公民学連携の街づくりを推進してきただけに「司会者から応援メッセンジャーと紹介されたのは気に入らない。プレーヤーのつもり」と会場を笑わせたあと、自著「日本『再創造』」(東洋経済新報社)で提案している「プラチナ社会」などについて述べた。


柏の葉キャンパスシティ全景

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 会場にあてられた「室町コレド」の「日本橋三井ホール」には報道陣が約130人と、それ以上の大学や街づくり、自治体関係者などでほぼ満席となった。森田健作・千葉県知事は欠席したが、出席者がそうそうたるメンバーだったのがこれほど集まった理由なのだろう。

 しかし、個人的な感想をいえば、セレモニーはえてしてこうなるのだろうが、肩透かしを食ったような会見だった。小宮山氏を除く4氏はプロジェクターをもとに紹介や説明に終始した。みんな話すのが職業であったり、得意な方々ばかりのはずだ。自らの肉声で語って欲しかった。わずか1時間強で5人の方々がそれぞれのテーマについて述べるのには時間が足りないし、テーマそのものも3つもあった。聞くほうもみんな消化不良を起こしたのではないだろうか。記者は、TXの開業前を含め10回ぐらい現地取材を行ってるので、もっと具体の話が聞きたかった。

 会見の後で行われた関係者の会合をむしろ取材したかったが、もちろんダメだった。


エリア・エネルギー管理システムモニターイメージ   

◇    ◆    ◇

 収穫がなかったわけではない。会場で配布された小宮山氏の「日本『再創造』」が、震災後のわれわれ国民が何を考えなければならないか、何をすべきかを分かりやすく示してくれているからだ。

 小宮山氏は同書の「はじめに」で「3月11日、東日本を大震災が襲ったとき、私はすでに本書を脱稿していた … 一方で私は、本書で訴えたかったことに関して修正の必要を感じていない。むしろ、主張したことの実現を急げという天啓のようにさえ思えるのだ」と述べられているが、その通りだと思う。

 震災後だからこそ小宮山氏の提案が生きてくるのではないか。「林業資源の自給率100%達成は可能」など言いすぎの部分もあるが、全編が説得力のある楽観主義≠ノ貫かれている。小宮山氏はただの学者ではない。自らエコハウス「小宮山ハウス」を建てた実践者でもある。日本再生のバイブル≠セ。

  
ケミレスタウン                      植物工場

三井不「柏の葉キャンパスシティ」スマートシティ取材会(7/9)

(牧田 司 記者 2011年7月12日)