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マリモ健在 「ポレスター浦和常盤」に見る企業姿勢


「ポレスター浦和常盤」完成予想図


 マリモの「ポレスター浦和常盤」を見学した。物件は、JR京浜東北線・高崎線・宇都宮線浦和駅から徒歩8分、さいたま市浦和区常盤1丁目の商業地域に位置する15階建て全70戸の規模。専有面積は60.45〜71.76u、1期(15戸)の価格は2,830万円〜4,290万円(最多価格帯3,600万円台)、坪単価186万円。竣工予定は平成24年4月末日。施工は埼玉建興。販売代理はアートランド。

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 同社の自社開発マンションを見学するのは久しぶりだ。昨年見学した「フィーノ渋谷」も、一昨年見学した「ロータリーパレス取手」も買い取り再販物件だった。

 今回の「浦和常盤」も用地取得と基本設計は販売代理のアートランドで、記者がイメージしているマリモの物件ではなかった。いかにも同社らしい提案としては、可動棚を設置し、襖の上下に通気スリットを設けている押入れや壁面緑化ができるようにバルコニーの壁面にフック取付金具を設けていることや、バルコニー手すりに熱線反射フィルム貼りガラスを採用していることなどだ。

 さらに、敷地が袋路地状になっているため、建物のほぼ中央に吹抜を設置することで、各住戸の採光に配慮している。

 現地は、マンション化が進行しているマンションと戸建てなどが混在している商業地域なので、日照が確保しづらい立地には難点もある。

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 久しぶりに見学して嬉しかったのは、やはり同社のマンション事業に取り組む姿勢がパンフレットに分かりやすく説明されていたことだった。数年前のものと比べ一段とスマートになっているが、中身は以前と同じだ。

 物件パンフレットの最初に同社社長の深川真氏の「ごあいさつ」が掲載されており、深川社長は「本パンフレットは、分譲マンションという高額な商品をご検討いただくための、大切な資料です。皆さまの必要とされている情報を、少しでも多く、より正確に、正直にお伝えしていきたい」と述べているように、全て優しい言葉で語りかけている。

 例えば、同社の販売セクションを「おもてなし課」と呼び、「10のものは10のまま。美辞麗句をならべて10のものを15に見せるようなトークはしません」と明言している。マンション管理についても冊子で管理に臨む姿勢を紹介しており、「受付・清掃するだけの人を当社は管理人と呼びません」としている。全てがこのような調子で紹介されている。難しい専門用語は、分かりやすく解説も加えている。

 深川社長は、京セラ・稲盛会長の「盛和塾」の熱心な塾生のようで、経営理念とする「利他と感謝」のほか「経営指針 七則」「私たちの約束」「行動指針 十則」なども紹介している。

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 デベロッパーは、マンションを売るのが商売だが、同時に企業を売る商売だ。ブランド力のある大手デベロッパーはパンフレットで企業を紹介する必要などないのかもしれないが、中堅はそうではない。しっかりと経営姿勢や哲学を伝えることが必要だとずっと考えてきた。多くのデベロッパーはそのようなことをしてこなかったからこそ、バブル崩壊、リーマン・ショックなどの市場環境に翻弄されてきたと思う。「事業離れ」などという時代錯誤も甚だしい言葉がまかり通っているのがこの業界だ。

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 マリモの本社は広島だ。「東京発」の地方進出もうまくいかなかったが、「地方発」の東京(首都圏)進出マンションデベロッパーはことごとく破たんした。アーバンコーポレイション、章栄不動産、ジョー・コーポレーション、穴吹工務店などだ。原弘産も苦境に立たされている。

 マリモが今後、首都圏でどのように展開していくのか分からないが、商品企画に当たっては細心の注意を払って欲しい。市場規模は地方と比較にならないほど大きいが、東京のユーザーの目が肥えているのは確かだ。

グッドデザイン賞受賞のマリモ 都心初「フィーノ渋谷」(2010/10/19)

100年に1度の闇に灯を マリモのマンション再生事業(2009/10/13)

(牧田 司 記者 2011年2月5日)