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 首都大学東京が研究発表会

テーマは省エネ・リファイニング・団地再生


定員の200席が満席になった研究発表会(都庁で)

 首都大学東京は9月20日、東京都と共催して「環境負荷低減のための都市建築ストック活用型社会の構築〜省エネ・高齢化に対応した建築ストックの活用について〜」と題する発表会を開いた。同大学は、環境問題や高齢化問題、建築ストックの再生など大都市が抱える問題を解決する「大都市研究リーディングプロジェクト」を都とともに立ち上げ研究に取り組んでいるが、今回はこれまでの1年半の研究の成果を同大学関係者のほか、より多くの都民、自治体などの関係者に知ってもらうために開いたもの。会場となった都庁第二本庁舎ホールは定員の200名が満席になった。

 講演は、 @ 「庁舎・学校等の省エネとCO2削減方法の研究」(都市環境学部特任教授・山本康友氏) A 「リファイニング建築開発プロジェクト研究」(戦略研究センター教授・青木茂氏) B 「多摩ニュータウンの再生・活性化プロジェクト研究」(同大学副学長・上野淳氏)の三部構成で、そのあと、3氏と同大学都市環境学部教授・吉川徹氏を交えた4氏によるパネルディスカッションが行なわれた。

 発表会の冒頭に挨拶した同大学学長・原島文雄氏は、「首都大学東京は開校して6年半になるが、大都市の文化に貢献するという世界的にもユニークな大学。最初の1期3年間はテイクオフの段階、そして 23 年度を初年度とする2期中期計画では様々な成果を発信していく段階に入った。大学は教育機関として人材を育成する使命を担うが、同時に研究を通じて真実を作り上げていくミッションを担っている。教育と研究は不可分であり、シンクタンクの機能を発揮して、成果を社会に還元していきたい」と語った。

 司会役を務めた上野副学長は「年に1回ぐらいのペースでこのような研究発表会を継続して行なっていきたい」と述べた。


原島学長

◇    ◆    ◇

 山本教授のテーマは、庁舎や学校、病院などの公的機関の省エネやCO2削減をどう進めるかで、「2020年までに2000年比25%のCO2削減」について「削減義務を履行しない場合は罰則もあるが、都の施設で未達成はありえないこと」などと不退転の覚悟で取り組むべきことを強調した。

 青木教授は、同教授が手がけた各地のリファイニング事業の事例を紹介しながら、「古い建物などは既存不適格の認定を受ける作業などが大変だが、既存の法体系を利用して再生を図るのは有効。新築の 70 %ぐらいのコストで済み、賃貸住宅などはすぐ入居するし、10〜12%の利回りを確保できる。居ながら工事も可能だ。リファイニング建築塾も開講している」などと語った。

 上野副学長は、豊富な緑のネットワーク、「世界に類例をみないペディストリアンデッキによる車歩分離」「最先端の諏訪・永山の高齢者支援スペース」などについてユーモアを交えながら語り、「リファイニング手法などを駆使しながら安心して住み続けられる街をつくっていくことが大切」などと呼びかけた。

       
山本教授                         青木教授

◇    ◆    ◇

 上野副学長は、別掲の通り、都の「多摩ニュータウン大規模住宅団地問題検討委員会」の座長も務められている。検討委員会では他の委員の意見の聞き役に回っているために、自らの意見はあまり仰らない。この日は、必死でメモを取ろうと思った。ウイットに富み、人や環境にやさしい人柄がにじみ出ていた講義だった。ところが、講義が始まってしばらくして、万年筆のインクが切れてしまった。まさか、周囲の大学の先生方にボールペンを借りるわけにもいかず、書き取れない部分も多かった。

 一つだけ、面白い冗談を飛ばされたので紹介する。「私は永山の福祉亭に焼酎のボトルをキープしている。『上野』の名前を言っていただければ、どなたでも飲んでいただいて結構」と仰った。

 空になったら新しいのを入れておけ≠ニ受け止めたが、近いうちに福祉亭の取材を兼ねて、先生の焼酎を飲もうと思った。飲んだ分だけ水を追加しておけば、ほどよい水割りになっているはずだ。

 それにしても、多摩の大学の先生はいい方ばかりだ。同じ検討委員会の委員でもある明星大学総合理工学部教授・西浦定継氏は会合のたびに、どこで工面するのか幻の酒などを飲ませてくれる。環境だけでなく、やさしい先生ばかりの多摩の大学から優秀な人材が育たないはずはないと思った。


上野副学長

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(牧田 司 記者 2011年9月20日)