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多摩ニュータウンの新たな街づくりを 東京都が検討会


「多摩ニュータウン大規模住宅団地問題検討委員会」

 東京都都市整備局は6月29日、多摩ニュータウンなどの大規模住宅団地が抱える少子高齢化や施設の老朽化などの問題に対する施策の方向性について検討することを目的とした「多摩ニュータウン大規模住宅団地問題検討委員会」の第1回会合を開いた。会合では上野淳・首都大学東京副学長を委員長に選出したあと、各委員が東京都から示された多摩ニュータウンやその他の団地の資料について意見交換した。会合は12月までに5〜6回開かれ、24年度以降の施策に反映させるためのガイドラインとしてまとめられる。以下、各委員の発言要旨を紹介する。発言者は声が聞き取れない方も多く、正確ではない部分もあることを了解いただきたい。

 中西充・東京都都市整備局次長 多摩ニュータウンはベッドタウンとして住宅不足を解消する役割を果たしたことは誇りに思うが、開発から40年が経過し、高齢化、老朽化などの新たな問題を抱えるようになった。この問題は多摩ニュータウンに限らず他の団地にも共通する問題でもあり、幅広く普遍性のある提案にまとめていただきたい。

 西浦定継・明星大学総合理工学部教授  資料にあるように個別・具体の事例の対応ももちろん必要だが、多摩ニュータウンの自然の価値をどう評価するか、防災に大きな役割を果たす地域のコミュニティをどう形成するか、自然エネルギーをどう活用するかなど、大きな戦略的な仕組みを構築することが重要だ。

 後藤泰久・多摩市副市長 寂れていく近隣センター、高齢者の移動や買いものの悩み、エレベータのない中層団地の問題、高齢者の見守りなどの多くの問題を抱えており、 住宅市街地総合整備事業制度を活用しながら、単なるリニューアルではなくスーパーリニューアルとなるようにしたい。

 炭谷晃男・大妻女子大学社会情報学部教授 これまでの街づくりに欠けていたのは「市民」の視点だ。これをガイドラインの仕組みに加えるべきだ。

 上野淳委員長 市民、NPOなどが街づくりを支えてきた側面がある。そのような組織とも連携して連絡会議のようなものができるといい。

 北川秀二・弁護士 私も多摩ニュータウンに住んでいるが、マンションが建て替えられても高齢者が安心して住み続けられるようなハード、ソフト両面の取り組みが必要だ。

 岡部一邦・八王子市副市長 市内のニュータウンは若い街とオールドの街の両面がある。オールドの街をどうしようかという問題について漠たる不安がある。緑のメンテナンスに対する財政的負担には圧迫感も感じるし、高齢化の問題、エレベータなしの問題もある。また、歴史がある古い街の住民は自治意識が強いが、新しい住民は住民参加の意識が希薄で、この溝をどう埋めていくかの工夫も必要。

 炭谷委員  UR のキャッチフレーズに産・学・住・優≠ェあるが、欠けいる(充実していない)のは「産」。「多摩ニュータウンバレー」と呼べるような知識集約的な企業を誘致して魅力的な街づくりを進めるべき。

 西浦委員 多摩ニュータウンには引退した人の中には向こう20年間ぐらいは大丈夫そうなキャリアの持ち主がたくさんいる。高齢化対応も必要だが、こうしたバックグラウンドをもった人々と地域を結びつける仕組みが必要。多摩ニュータウンはすごくポテンシャルの高い地域だ。

 真鍋純・国土交通省住宅局市街地建築課市街地住宅整備室長 ガイドラインの作成は画期的なことで、多摩ニュータウンの問題はどこの地域にも共通した普遍的な問題で、国としても支援したい。多摩ニュータウンは基盤整備がしっかりできており憧れの街でもある。そうした強みを生かした戦略を構築していただきたい。

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 記者も多摩ニュータウンに20年以上住んでおり、個人的にも非常に興味がある委員会だ。確か、バブルが崩壊した後、多摩ニュータウンの再生・活性化をテーマにした会合が国交省の主催だったと思うが行われたことがあるが、いつの間にか立ち消えになった。今回はそのようなことがないよう願いたい。

 ひとつだけ言わせていただければ、多くの委員の方が話したようにまた資料でも明らかなように、多摩ニュータウンは激化する都市間競争には絶対負けない魅力をたくさん持っている。次代を担う若者(学生)もたくさんいる。そうした若者や若いファミリーが移り住みたくなるような街づくりを進めるべきだろうと思う。もう一つ、追加すれば東京都の「民設公園制度」を是非活用していただきたい。これは一石二鳥どころか三鳥の制度だ。

 入居者の高齢化、施設の老朽化、バリアフリーの問題なども確かに重要な課題だ。しかし、これらの問題を優先して取り組めば際限がないし、その財政負担を誰が担うのか。多摩ニュータウンは政府の施策によって推進されてきた街だから、その責任を国に負わせる論法は成り立つかもしれないが、「どうして多摩ニュータウンだけ」という反論もあるだろう。

 これは暴論かもしれないが、どうせ埋まらない近隣センターの店舗など無料で市民に開放したらどうだろう。すばらしいコミュニティが形成され、街は活気づき、金の成る器になるかもしれない。

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 ネガティブな側面からではなくポジティブな側面からこれからの街づくりを考えてほしい。委員の方には、どうして小田急線の新百合ヶ丘駅と比較して多摩センターのマンションの分譲単価が坪当たり30万円も50万円も低いのかを考えていただきたい。(安いのはいいことかもしれないが、それだけ価値がないと評価されている)

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(牧田 司 記者 2011年6月29日)