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 三方得≠フ民設公園制度の普及に期待


挨拶する東京建物・矢内氏

   
左から白山、渡部、大塚、塙の各氏


  先に、東京都の民設公園第一号の「萩山四季の森公園」開園祭りについて紹介した。記者は、この制度は三方得≠フ制度だと思っている。つまり、マンション購入者にとっては、将来にわたって周囲に建物が建たないという良好な環境が担保されるということだ。行政にとっては、固定資産税、都市計画税などの税収は期待できないが、近隣住民に公開される公園、あるいは避難場所として確保できるということだし、公園管理に関する費用負担が発生しないということだ。さらに、東京都にとっても、民設公園がしっかり維持管理されるかチェックしなければならないが、事業者と行政の双方の利害を調整して、良好な住環境を創出できるという点だ。事業者にとっては、公園を整備するのだから絶対高さ規制を取っ払い、容積率の割増(理論的には価格を下げることが可能)をという声が聞こえてきそうだが、事業機会が増えるのだから文句は言えない。

 にもかかわらず、どうして第2、第3の民設公園が候補に上がってこないのか。この制度の創設にかかわってきた東京都都市整備局都市づくり政策部緑地景観担当参事・大塚高雄氏に率直な疑問をぶつけてみた。

 大塚氏は、「これまでは机上で動いていた。一気に(制度を)伸ばすより地域の方々がどのように評価するなど、いろいろ学習する時間も必要。しっかりと検証した上で、業務系も可能かどうか検討したい。都にはこのような候補地が500ヘクタールぐらいある。(この制度に)名古屋など関心を示している都市もある」と語った。

 第一号案件の成否をしっかり見極めようということだった。

 渡部尚市長も「(まだ第2号が現れないのは)他は様子見の段階。この問題で1件だけ都が訴えられている問題があるが、クリアされれば制度は進む。ウイン・ウインの制度」と絶賛した。

 その一方で、このマンションの設計者、塙ランドスケープデザイン社長・塙哲夫氏は「本音で言えば、維持管理が難しいだろう。月25万円では美しい公園を維持していくのは大変だろう。公園を利用する人などのボランティア活動などで公園を維持管理していくシステムが必要だ」と語った。

◇     ◆     ◇

 月25万円というのは根拠のない数字でもないと思ったが、塙氏の指摘にも一理あると考えたので、行政は公園の維持管理にどれぐらいの費用をかけているのか調べてみた。

 東村山市の場合、市の公園は140カ所、面積にして約18万4000平方bの公園を管理しており、遊具の点検・取替えなども含め年間約2800万円の経費をかけている。1平方b当たりに換算すると152円だ。

 東京で一番公園面積が広いとされる多摩市の場合はどうか。公園は205カ所、面積は約199万3000平方bだ。維持管理費は約5億円だから、1平方b当たり費用は約250円だ。

 今回の「萩山 四季の森公園」は10.000平方bで年間300万円だから、1平方b当たりに換算すると300円だ。単純比較はできないにしろ、東村山市の管理より倍の費用が充当されるわけだ。

 アメリカのシカゴなどは1平方b当たり約900円もかけているようだが、ニューヨークは約250円だそうだから、世界規準に照らし合わせても1平方b当たり300円は妥当な金額なのだろう。

 肝心のマンション購入者はどう考えているのだろうか。セレモニーに参加した管理組合副理事長・中村雅道氏は「みんな制度に賛同して購入しているはず。この開放感は素晴らしいし、気持ちがいい。今後、周りの人たちとの交流ができればいい」と、制度を評価しているようだ。

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 東京建物と西武鉄道は、せっかくの第一号案件なのだから、次に続く案件のためにも1年後、2年後、地元住民やマンション居住者などから寄せられた声をきちんと報告して欲しい。

 大塚氏が語ったように、都内には500ヘクタールもの候補地があるというのだから、この制度の普及に期待したい。

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 記者がもう一つ考えたのは、この制度は既存の公園には適用されないということだが、遊休地の活用、都市機能の更新という観点から既存の公園にも適用することはできないのだろうか。

 われわれは「公園」といえば、行政が独占的に管轄・管理し、公園から収益を得るという発想は一部の例外を除いてほとんどない。しかし、最近は指定管理者制度を利用して民間がどんどん公共施設の管理を行うようになっている。民間に公園の管理を委託し、収益を生む財産に変えることは可能だと思うがどうだろう。

(牧田 司 記者 10月5日)