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 「侘び・寂び」を盛り込んだポラスのモデルハウス

「蔵 粋(くらいき)」


「蔵 粋(くらいき)」外観

 

 先日(6月18日)は、ポラスグループのポラテックがオープンした5棟のモデルハウスのうち、記者が一番気に入った「『ARZILL(アルジール)』〜街の COTTAGE 〜」を紹介した。今回紹介する「蔵 粋(くらいき)」は、日本の伝統的な住宅について考える意味でも、モデルハウスのあり方を考える意味でも意欲的なモデルハウスだと思う。

 「蔵 粋(くらいき)」は、同社のブランド「北辰工務店」の新商品で、「ポラス暮し科学研究所」の伊藤博明顧問が外観、インテリアデザインを監修したもので、坪単価37.8万円〜というリアルサイズ・リアルグレードをテーマにした意欲作だ。

 伊藤氏は「生活の合理化、西洋化で失いかけた日本人ならではの生活様式を復活させたい」とし、自らが考案した置き囲炉裏框(いろりかまち)のある和室や、みだれ投げ≠ニ称する後ろ向きで土壁にワラや小砂利を粋≠ノ張りつけた土壁を提案している。もはや古語となっている「侘び・寂び」の美意識を取り戻そうと「粋織部床(いきおりべとこ)」と名づけた床の間も提案している。

 伊藤氏の哲学がひしひしと伝わってくるモデルハウスだ。

 使用されているスペックも決して高価なものではないのも注目できる。記者はハウスメーカーの取材はほとんど行ってこなかったが、各社の「モデルハウス」はいったい誰向けなのかずっと疑問に思ってきた。マンションもそうだが、標準装備より1,000万円も2,000万円も高い設備仕様を備えたところで、何が参考になるのだろうと思っていた。

 その意味で、今回の「蔵 粋(くらいき)」はそのまま採用できるものだろう。

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 伊藤氏がマスコミに配布した参考資料の中に「 日本の伝統土壁」として「侘び」と「寂び」の色がそれぞれ 6 色示されていた。引用すると「侘び土は渋くてほの暗い色調の6色 灰色(はいいろ)、利休白茶(りきゅうしろちゃ)、利休鼠(りきゅうねず)、生壁色(なまかべいろ)、鈍色(にびいろ)、消炭色(けしずみいろ) 寂び土はしとやかで明るい綺麗寂び的色調の6色 灰白(はいじろ)、銀鼠(ぎんねず)、深川鼠(ふかがわねず)、砂色(すないろ)、灰汁色(あくいろ)、紫色(ふしいろ)」とある。

 記者などは初めて聞くものばかりだし、その違いなどほとんど分からないが、昔の日本人はちゃんと識別できたのだろう。

 われわれの世代はまだ「藍色」は識別できるが、今の子どもたちは分かるのだろうか。クレヨンの「藍色」は残っているのだろうか。油絵具ではプルッシャンブルー」「インディゴブルー」「ネイビーブルー」などが近いが、いずれも「藍色」ではない。「黒」も染料の世界ではないそうで、「玄」「墨」などが一般的だったようだ。そういえば、クレヨンの「肌色」は、人種問題に配慮ししてとっくになくなっているそうだ。

 われわれ日本人の審美眼はどこに行ったのだろう。

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 伊藤氏は、モデルハウスを紹介するのに千利休や古田織部、小堀遠州など茶道家や武将の名をあげたり、ピカソ、北斎などの画法を紹介したり、「7対 3」「6対4」の構成美を説明したりと熱っぽく語った。社内では伊藤氏のことを「現代の利休」と呼ぶそうで、本人もすっかりその気になっている。


リビング

ポラス 一挙に5棟のモデルハウスオープン(6/18)

ポラス 3階建て木造耐火構造の「都市型実験住宅」

(牧田 司 記者 2010年6月24日)