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  三井不動産 「柏の葉スマートシティミュージアム」開設


「ららぽーと柏の葉」ハーフメガソーラー

 多摩ニュータウンとの差を痛感 多摩に欠ける「民」の力

 三井不動産は3月5日、環境共生都市・健康長寿都市・新産業創造都市を目指して街づくりを進めている千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」で記者発表・見地見学会を行い、未来の街の仕組みやライフスタイルを体感できる「柏の葉スマートシティミュージアム」を3月19日にオープンすると発表した。

 記者発表会では、柏市長・秋山浩保氏、 三井不動産柏の葉キャンパスシティプロジェクト推進部長・河合淳也氏、柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)センター長・出口敦氏(東京大学教授)、同副センター長・上野武氏(千葉大学教授)が出席。それぞれの立場から「スマートシティ」について語った。

 「柏の葉スマートシティミュージアム」は、TX柏の葉キャンパス駅から徒歩3分の2階建て延床面積約 600u。 @360度映像とプロジェクションマッピングでスマートシティの理念を伝える「ドームシアター」A3面スクリーンで柏の葉の取り組みを様々な角度から紹介する「コミュニティスクエア」B健康的でエコロジーな近未来の暮らしが仮想体験できる「ライフスタイルゾーン」C街のあらゆるデータを分析して安心・快適な暮らしを支える仕組みを解説する「スマートセンター」Dタッチモニターで柏の葉の街づくり活動の様子を伝えると同時に、来館者からのスマートなアイデアやメッセージをボード掲示していく双方向型コーナー「コミュニケーションラウンジ」などからなる。

 開館は10:00−17:00(入館は16:00まで)、休館日は毎週月曜日・年末年始、料金は大人500円、中学・高校生300円、小学生以下無料。 WEBサイト http://www.mitsuifudosan.co.jp/kashiwanoha/museum


柏の葉スマートシティミュージアム スマートセンター

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 柏の葉キャンパスシティを取材するのは開業前の2004年に訪れて以来これで10回目ぐらいだろうか。最初の頃は半信半疑だったが、そのうち「この街だけはTX沿線の中で成功するかも」に変り、いまではわが多摩ニュータウンといつも比較してしまうのだが、うらやましくてしょうがない。いかに突出した街であるかを記者発表会に臨んだ方々の話から紹介しよう。

 まず秋山柏市長から。秋山市長は「10年、15年の先を見越した街づくり」を強調した。その取り組みが内閣府の「環境未来都市」「地域活性化総合特区」に指定された。「まだまだ準備段階だが、2014年以降は次々に施設が稼動していく。日本のモデル都市にしたい」と語った。

 柏の葉キャンパスの1日平均の乗降客数は2005年当時の約4,000人から最近では約13,000人と3倍増超だ。秋葉原駅を除くTXでは「ながれやまおおたかのもり」駅が東武線と接続していることもあって、当初の約14,600人から倍増の3万近くに増えているが、柏の葉はそれに次ぐのではないか。まだまだ柏の葉は成長する。

 次に河合氏。三井不動産の取り組みは当欄でも度々紹介したので省略するが、スマートシティの実現に向けて同社が資金的・人的に支援しているからこそスピード感をもってここまでこれたのだと思う。自社開発を除き、今後のインフラ整備などに対する投資額は数十億円どころか100億円は突破するのではないか。

 出口氏は、公民学§A携が従来の産官学≠ニどのように異なるかを分かりやすく説明した。「公にはNPOなどの地域組織が含まれるという意味で、行政だけの官とは違う。民は企業だけでなく市民と一緒に考えるという意味で従来の産とも異なる。学は学者だけでなく学生も含めるという意味だ。われわれはキャンパスの中だけで学生を育てられるとは考えていない。地域に入って実践活動の中で育てていく」と語った。

 また、上野氏は、「街をキャンパスに見立てて、学生の活力を地域の活動に取り込んでいきたい。ここから新しい文化・産業が生まれる」と話した。

     
左から秋山氏、河合氏、出口氏、上野氏

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 さて問題の多摩ニュータウンはどうか。公民学を比較すれば、公と学だけは柏の葉に負けない。それだけ歴史はあるし、みんな歳をとっているだけキャリア、知見もある。NPOの活動だって負けないはずだ。市の財政力は分からないが、平成23年4月現在の職員1人あたりの月額給与は柏市の約46万円(平均44歳)に対し多摩市は約49万円(平均45歳)だ。これでも圧倒的に勝る(…)。大学・学生の数は柏市の数倍はある。これを活かさない手はない。

 問題は先立つもの≠ェないことだ。活動を財政的に支える民が圧倒的に多摩市は弱い。多摩市に本社を置く上場企業のミツミ電機は売り上げがどんどん減少している。平成24年3月期は283億円の純損失だ。どこかの企業が基金を拠出し、郊外都市の活性化モデルを構築する手助けをしてくれないだろうか。

 出口氏は「多摩ニュータウンは先読みできない時代背景もあったが、サスティナブルな視点が欠けていた。官主導で一気に高齢化が進んでしまった。これからは歩ける街≠ェヒントになるのではないか」とアドバイスしてくれた。


駅前の「オークビレッジ柏の葉」(報道陣向けにバーベキューが振舞われた。ここには農園が市民向け75区画、法人向け16区画がある)

街の勢い見せつけられた「オークビレッジ柏の葉」(2012/5/14)

涙が出るほど嬉しい「柏の葉 環境未来都市提案書」(2012/2/13)

(牧田 司記者 2013年3月5日)