RBA HOME> RBAタイムズHOME >2012年 > 子育て住宅と高齢者住宅の複合賃貸マンション 積水ハウス・積和不動産「マストライフ古河庭園」 「マストライフ古河庭園」(正面がエントランス) |
積水ハウスと積和不動産は3月1日、子育て支援住宅と高齢者向け住宅の複合居住物件「マストライフ古河庭園」の竣工記者見学会を行った。 既報のように、物件は東京メトロ南北線西ケ原駅から徒歩4分、建物は7階建て全129戸の規模で、子育て世帯向け住宅(以下、子育て住宅)が66戸、高齢者向け住宅(以下、高齢者住宅)が62戸。積和不動産がUR都市機構から敷地を期間70年の定期借地権で借り受け、積水ハウスが建物を建築し、積和不動産が運営するものだ。敷地は元財務省の官舎。 子育て住宅は、積水ハウスが住宅建設で培ってきたノウハウ「キッズデザイン」をベースに設備に工夫を凝らし、共用部にはキッズルーム、多目的フリースペースを設置している。 高齢者住宅は、アクティブシニアの入居を想定したサービス付き高齢者向け住宅の規制・条件などを満たし、ラウンジでは朝・夕の食事サービスが受けられる。 建物内の多目的ルームや高齢者向け食堂、屋上庭園などを利用して多世代が交流できるように各種のイベントを企画している。 3月1日現在、子育て住宅は33戸の入居者が決まっており、71uの家賃20万円前後の6戸はすでに空き待ちが出るほどの人気になっているという。高齢者住宅は8戸が決まっており、その他、商談中もあるという。子世帯が親世帯を呼ぶケースも多く、親子がそれぞれ子育て住宅と高齢者住宅に住む「近居」希望もあるという。
◇ ◆ ◇ いつものように、ここに分譲マンションが建ったらいくらになるかを考えた。5年前、東京建物が古河庭園の隣接地で早期完売したマンションの坪単価は300万円近くした。今回は、市況も異なるので坪300万円では販売に苦労しそうだが、270万円ぐらいなら間違いなく早期完売すると思った。古河庭園を見下ろす立地・環境がいい。 担当者によれば、近隣にはファミリー賃貸はほとんどなく相場が把握しづらいが、少し離れたところの大型賃貸と比較すると賃料は低いと説明した。記者も、設備仕様は分譲より見劣りするが、昨日書いた「実質家賃」を参考にすれば、賃料は明らかに割安感があると判断した。「分譲か賃貸か」は、このように比較するものがあって初めて成り立つ論議だ。 モデルルームは、高齢者住宅、子育て住宅とも引き戸を多用したり、壁や幅木のコーナーを丸めたりしてユニバーサルデザイン手法を取り込んでいるし、高齢者住宅では開放廊下側に窓を設置することで冬季の寒気をシャットアウトできるようになっている。玄関は引き戸とし、トイレは2方向から利用できるようになっており、車椅子の生活もできるようになっている。緊急通報装置も3カ所に、人感センサーも1カ所にそれぞれ設置されている。 子育て住宅には、ステップ付の洗面化粧台やマグネットウォール、コミュニティ型キッチンを採用するなどの工夫をしている。双方とも食洗機はついていないが、ミストサウナ付だ。
◇ ◆ ◇ 積水・積和の担当者は「表面利回りとして7〜10%ぐらい期待できる」と語ったが、記者はこれから管理・運営していけば、様々な課題が見えてくるはずだしノウハウも蓄積できる。他の事業にも生かせるヒントもあるはずだ。その意味で、両社にとって利回り以上の価値のある事業ではないか。 記者もこのような取り組みをずっと期待していた。もう30年も昔だが、高齢者施設と幼稚園が隣接しているある郊外大規模団地を取材したとき、双方が楽しそうに交流しているのを見た。「これだ!」と思った。高齢者にとって子どもと日常的に接するのは老化を防止するのにいいことだし、何よりも子どもの人格形成におおいにプラスになると思った。今でもそのときの光景を思い出すぐらいだ。 両社には、1年後、あるいは数年後、二つの住宅を共存させたことで何がわかったのか、何が変わったのかを伝えてほしい。きっと痴呆の症状がでない高齢者が多く、子どもは情緒豊かで語彙も増え、人に優しい頭のいい子に育つに違いないと思っている。できれば入居後の日常を取材もしたいぐらいだ。 子育て住宅と高齢者住宅を併設した賃貸マンションは、東京都住宅供給公社が今後積極的に供給するとしている。民間ではそれほど事例がないようだ。
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(牧田 司記者 2012年3月1日) |