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細田工務店 「賢い子どもに育てる家」がテーマ

「グローイングスクエア調布多摩川」見学


「グローイングスクエア調布多摩川」

 既報の記事で約束した通り、「賢い子どもに育てる家」をテーマにした細田工務店の「グローイングスクエア調布多摩川」を見学した。調布駅南口の徒歩圏でこれほどまとまった規模の建売住宅は珍しい。

 物件は、京王線「調布」駅から徒歩13分、または京王多摩川線京王多摩川駅から徒歩10分、調布市多摩川6丁目に位置する全9区画の規模。1戸当たり土地面積は120.11〜123.06u、建物面積は92.94〜98.33u、価格は未定だが6,200万円台〜6,800万円台が中心になる模様。構造は木造軸組み2階建て。建物は平成24年1月に竣工済み。近く分譲開始する。

 「賢い子どもに育てる家」は後回しにして、まず立地。最寄り駅は京王多摩川駅だが、通勤に便利な調布駅を利用する人が多いのではないか。駅南口の繁華街から品川通りを渡ると閑静な住宅街となり、現地も畑などがあった住宅街の一角。中学校は徒歩18分とややあるが、小学校は徒歩2分、多摩川の土手まで数分。住むにはいいところだ。

 物件概要にあるように、建売住宅としての水準は高い。土地面積もまずまずだし、外構・エントランスは天然石や磁器タイルを使用。外壁はサイディングではなく、一枚一枚のタイル張りや、ほとんど手塗りのローラー吹き付け仕上げ。三連窓や付け梁が美しい。

 「賢い子どもに育てる家」では、家事をしながら子どもが勉強できるコーナーがあったり、リビングや子ども部屋に読み聞かせのコーナーがあったり、テストや作品が収納できたりとそれぞれ工夫が凝らされている。

 ただ、このプランには諸手を上げて賛成するわけにはいかない。この前も書いたように、6,000万円台の建売住宅が買える層は水準以上の収入がある人だろうし、経済的には「賢い子どもが育つ」環境にあるのは間違いない。しかし、親の資産が教育格差を生んでいる悲しい現状には目をつぶりたい。これを認めれば、貧乏人の子どもは賢くなれないということを認めるようなものだ。

◇    ◆    ◇

 問題はこれからだ。記者は7〜8年前、今回の現場の近くで、ある会社が分譲した建売住宅を見学したことがある。数十区画もある大規模団地で、建売りも停止条件つき土地分譲も圧倒的な人気になった。価格は6,000〜7,000万円台ではなかったか。この記憶があるので、今回も人気になるだろうと読んだ。駅の反対側の同じぐらいの距離圏で三井不動産レジデンシャルが分譲した建売住宅はこれより値段が高かったにもかかわらず人気になった。

 ところが、案内してもらった同社住宅営業1部課長代理・甲斐貴久氏はこんな本音を漏らした。「しっかり造りこみしていますので見ていただければ分かると思いますが、昨年夏から分譲している同じ仕様の隣接の建売住宅が売れない」と。

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 そこで考えた。第一は同社のブランディングの問題だ。中堅建売りメーカーの中で、バブル崩壊もリーマン・ショックも乗り切ったのは同社のほか、ポラス、一建設、東栄住宅、飯田産業ぐらいだ(一建設は倒産の危機があったが)。しかし、同社はバブル崩壊後の約20年間、ずっと低空飛行を続けている。いいものを造っているのにだ。年間の販売戸数は200戸台だ。同業他社と比べ圧倒的に少ない。

 それはなぜか。これは参考だが、同社は物件の間取り図に畳数を表示しているが、1畳=1.62uではなく、1畳=1.65uと換算している。つまり狭い部屋を広く見せるようなことを行なっていない。1畳を1.62uと するのと1.65uで換算するととでは、6畳ではA3の紙一枚ぐらいの差になることはこの前も書いた。しかし、畳1畳の大きさを1.65uに換算しているデベロッパーは皆無ではないか。

 このような良心的なもの造りをしているところがどうして評価されないのか。一言で言えば、必ずしも「いいものが売れる」時代ではなくなったからだ。記者は賛成しかねるが、「売れるものがいい商品」という考え方が支配的だ。この問題に正面から取組むべきだ。

 ついでにもう一つ。どうして同社は社名から「工務店」を外さないのか。創業社長の細田茂氏が亡くなって10年以上が経過する。もう「工務店」を外してもいい。あの松下電気も「松下」を外したではないか。同社が「工務店」にこだわる理由を聞きたい。

 もう一つは、調布市の地盤沈下≠セ。記者は結婚してすぐの2年間ぐらい調布に住んだことがある。京王線沿線の住民にとって調布は憧れの地だった。バブルが発生するころにマンションを買おうと思ったが、中古で坪500万円した。20坪で億ションだ。

 いまはどうか。特急で1駅先の府中に完全に負けている。ポテンシャルは、伊勢丹の開業で街が一変した府中のほうが上だ。伊勢丹が開業する前の府中は、競馬の客で賑わうだけで、マンションが林立し、かろうじて美しいケヤキ並木が街のポテンシャルの下落を押しとどめていた。

 一方で、調布は何もやってこなかった。道路が狭くてごちゃごちゃした街並みは温存された。危機感を覚えたのか、ようやく動き出したのは12年前。市は「中心市街地活性化プラン」を立ち上げだ。ほぼ同時に京王線の地下化計画も浮上した。

 現在、調布駅周辺では、京王線柴崎駅〜西調布駅間約2.8kmと京王相模原線調布駅〜京王多摩川駅間約 0.9kmの鉄道部を地下化する京王線連続立体交差事業が行なわれている。完成は24年度末予定。線路だった幅20メートルぐらいは遊歩道や緑地などに変わる予定だ。線路で南北に分断されていた街は一変するはずだ。

 なんだか歯切れが悪く、消化不良の記事になってしまった。原因は記者の書く力が足りないからだが、細田にも調布にも問題があることと不可分だろう。細田も調布もかつての輝きを取り戻してほしい。


キッチンの横にある収納と「ミズコーナー」

細田工務店  「賢い子どもに育てる家」 調布で分譲(2/2)

(牧田 司記者 2012年2月6日)