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感動的ですらある鹿島建設「センチュリーフォレスト」


提供公園から望む「センチュリーフォレスト」

 鹿島建設の住宅公団(現: UR 都市機構)建て替えマンション「センチュリーフォレスト」を見学した。ずっと以前から見学したいと思っていたマンションで、ようやく実現した。予想通りというか、予想を超える出来栄えで、感動すら覚えた。

 物件は、JR 渋谷駅から徒歩7分、または東急東横線代官山駅から徒歩8分、渋谷区鶯谷町の第2種低層住居専用地域に位置する地上6階建て地下1階建て(建築基準法上は地上5階建て地下2階建てなど6棟)全244戸(事業協力者住戸123戸)の規模。専有面積は71.62〜163.93u、最終期(戸数未定)の予定価格は10,660万〜39,400万円(予定最多価格帯は19,000万円台)、全販売住戸の平均坪単価は500万円。竣工は平成23年9月。売主・設計・施工は鹿島建設。販売代理は三井不動産レジデンシャル、三菱地所レジデンス。

 昨年春から分譲開始されており、分譲121戸に対して残っているのは20戸強。億ションでないのはわずか17戸しかないから、この時期でこの単価でこのグロスでこれほど売れているのは驚異的だ。

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 物件の近くまで行ったとき、胸の高鳴りを覚えた。建物の外観は極めてシンプル。いかにも同社のマンションらしかった。それより驚いたのは、外構だった。従前の建物はよく知らないが、前面の道路はそれほど広くない。建築中は細い歩道を歩くのにも難儀した。

 ところが、完成後は敷地から建物まで約8mセットバックさせ、総延長約167mの歩道空間としている。舗道上にはケヤキ、シラカシなどの高木が植えられている。この空間は隣接する提供公園と敷地を取り囲む通路に続く。これほど贅沢な空間を確保できたのは、総合設計制度を利用したためだろうと思ったが、その通りだった。現地一帯は高さ制限も12mと定められているが、この制度を採用したことにより18mまで緩和されている。建物は1棟だが6棟分棟・分節構成になっており、6棟全てに同社の免震工法が採用されている。

 隣接する住友不動産の大規模高級賃貸マンションと、道路を挟んだ対面の「乗泉寺」の広大な境内とが一体となって都心とは思えない豊かな環境を形成している。

 エントランスも実にシンプルだ。しかし、壁にはエキストラ・トラバーチンが採用され、床は大判の大理石。壁には鉄のアートが掲げられている。共用廊下がまた広い。幅は約2mもある。

 居室もシンプル。床は600oの大判で、ドアはチーク材の突き板、ドア把っ手は本皮巻き。キッチンは独立型が基本で、洗面所のカウンタートップは黒御影。浴槽はホーローで、浴室のデザインがまたいい。プレミアム仕様のリビングダイニングの壁は塗り壁仕上げ。


外観

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 記者は、ここ数年の同社の自社分譲マンション「虎ノ門タワーレジデンス」から「マスタービューレジデンス」「加賀ガーデンプレイス」「桜プレイス」「グランドミッドタワーズ大宮」(近鉄不動産などとのJV)など全てを見学しているが、この物件もまた同社の代表的なマンションになると思った。決して奇を衒わない毅然とした美しさがある。建て替えマンションとしても、旭化成ホームズの「アトラス江戸川アパートメント」と双璧をなすマンションだと思う。

 このマンションを見ながら、丹下健三が語った「機能的なものが美しいのではない。美しいもののみが機能的である」と、ルイス・サリヴァンが語った「形態は機能に従う」という言葉を思い出した。同社の設計担当者もこの命題に真正面から取り組んだのではないか。それが結実したといえるのではないか。

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 案内をしていただいた同社開発事業本部事業部担当部長・奥田徹氏は「圧倒的な人気になった代官山アドレスとは異なりますが、底固い需要があります。青田売りでここまで売れたのですから、われわれも評価しています。これから残りの高額住戸を竣工売りします。外観も内装も主張するより静かに訴え存在感を示す、鹿島のデザインカラーです」と語った。

 同社がこの建て替えに事業参画できたのは、やはり代官山アドレスの実績が大きかったということのようだ。同社が代官山アドレスに事業参画したのは20年ぐらい前だから、このマンションも足掛け20年のプロジェクトだ。

 奥田氏は最後に「これはお買い得」と語ったが、記者も心底からそう思う。シアターでは「世紀を超えて残したいもの … 」の宣伝コピーが流れたが、実物はこの宣伝コピーをはるかに超えている。値段が値段だから富裕層しか買えないが、業界関係者も一般ユーザーもぜひ見学をお願いしてはどうか。一見の価値があるマンションだ。


ラウンジ

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(牧田 司記者 2012年1月25日)