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 世界に誇れる隈研吾氏デザインの

「ザ・キャピトルホテル東急」


エントランスホール

 昨日(2月24日)、東急不動産グループ恒例の記者懇親会が新装なったフラッグシップ・ホテル「ザ・キャピトルホテル東急」で行われた。同社の記者懇親会は今回で32回目だが、建替え前も含めて、このホテルで行われるのは記者の知る限り初めてだ。どのようなホテルに生まれ変わったのか興味があったので、懇親会が終わってから見て周ることにした。

 かつてビートルズやショーン・コネリー、マイケル・ジャクソン、カレーラス・パバロッティ・ドミンゴの3大テノール歌手など錚々たる有名人が宿泊したことで知られるホテルだが、特殊な立地なだけに記者は様々な会合以外に行ったことがなく、しっかり見るのは今回が初めてだった。

 エントランスやホールなどを見るうちに、どこかで見たデザインだと思った。丁度そのとき先輩の記者と出くわした。先輩記者も初めて見るそうで、先輩記者から「デザインは隈研吾ということをスタッフから聞いた」と教わった。「どこかで見た」というのはそれで納得した。隈氏がもっとも得意とする格子のデザインがふんだんに用いられているのが大きな特徴だ。メインエントランス・ホールの格子デザインは見事というほかない。地下車寄せの端正な縦格子には魅了された。

 もっとも驚いたのは、ホールに設置されている4m四方はありそうな水盤に活けられていた「草月」の見事な生け花と、その水盤から階下へ流れ落ちるせせらぎが演出されていたことだった。せせらぎは細かく凹凸が施された壁面を伝い、上下から照らされているライトでキラキラと輝いていた。不思議なことに、流れ落ちるリズミカルな水音には、流れとは異なる水滴が川面に落ちる音と共鳴していた。単なるカスケードはいたるところで見ているが、このような自然の流れの水音を聞くのは初めてだった。どのような細工が施されているのか全然分からなかった。

 そこで、居合わせたスタッフの方に聞いた。このような微妙な水音が出るのは、階下に設けた噴水から水を流れ落ちる水にぶつかるようにして演出しているとのことだった。確かに下から見るとその細工の様子がよく分かる。これには唸ってしまった。しばし聞きほれた。

 エントランスホールからガラス越しに見える庭の壁面は絵画を見るようだし、庭のせせらぎが地面に落ちる音はどこか水琴窟(すいきんくつ)のようだった。

◇     ◆     ◇

 記者はこれまで、主なホテルはほとんど見学したり宿泊したりしている。「パークハイアット東京」や「ウェスティンホテル東京」などに宿泊した時は、「わが国のホテルはこれから外資系ホテルに席巻される」と思った。「リッツ・カールトン」に泊まった時はそのホスピタリィの高さに驚嘆した。「マンダリン」も「コンラッド」「ペニンシュラ」もいい。もちろん部屋(宿泊料)にもよるが、外資系ホテルの客室の広さはほとんど40u以上だ。

 わが国のホテルでは、個人的に好きなのは京王線に住んでいるから「京王プラザ」だが、総合的ランクでは「京都ブライトン」が最高だと思う。遮音性が高く客室も広いし、記者の好きな絹谷幸二画伯の壁画がある。また、中央のホールと吹抜けを利用した演奏会も行われるのもいい。ほかでは「ロイヤルパーク東京」のエントランスも素敵だ。「ホテル海洋」(リニューアル後は知らないが)や「ホテルサンバレー那須」は絵画を見るだけでも価値がある。

 わが故郷の伊勢志摩にも「鳥羽国際」や「志摩観光」(全室100uのスイーツは知らない)があるし、会員制の「エクシブ鳥羽」も悪くない。

 しかし、何といっても昨日見た「ザ・キャピトルホテル東急」の隈氏のデザイン・演出は、わが国の古来の建築様式や「侘び寂び」の世界を盛り込んでいるという点で世界に誇れると思う。記者は1時間近くもあちこち見て周ったが、ホスピタリティも極めて高いと見た。


「草月」の生け花と滝

比類なきホスピタリティの高さリッツカールトン 記者も体感(2007/4月2日)

必見の「隈研吾展」 TOTO「ギャラリー・間」(2009/11/4)

(牧田 司 記者 2011年2月25日)