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億ションの歴史を変える積水ハウス「グランドメゾン伊勢山」


「グランドメゾン伊勢山」


  積水ハウスの「グランドメゾン伊勢山」を見学した。同社のグランドメゾン≠フ記念碑的なマンションであるのは勿論、今年を代表する物件であり、長いマンションの歴史にも名を残すハイクォリティマンションだ。

 物件は、横浜市営地下鉄ブルーライン桜木町駅から徒歩5分、またはJR根岸線桜木町駅から徒歩6分、横浜市西区宮崎町に位置する敷地面積約8,600u、9階建て全99戸の規模。専有面積は114.37〜228.30u、予定価格は9,500万〜2億1,000万円(最多価格帯1億1,000万〜1億2,000万円台)、坪単価は270万円。竣工予定は平成23年7月末。設計・施工・監理は竹中工務店。

 現地は、「伊勢山皇大神宮」に隣接し、明治天皇が宿泊された「伊勢山離宮」があったとされる高台。近くには横浜奉行所跡地に建つ「県立青少年センター」や「県立図書館」「横浜能楽堂」「県立音楽堂」「掃部山公園」「本町小学校」などの公共施設がある。住環境としては申し分ない立地条件だ。

 敷地の周囲は自然石の擁壁と植栽が施されている。建物は、大きな中庭を囲むように4棟が配棟され、住戸プランは、平均専有面積が162uで、階高は3.25u。共用部分にも専有部分にも大理石や御影石の自然石とチーク材などの自然木がふんだんに用いられており、エレベータは 2戸1≠ナ10基を数える。全戸分以上ある駐車場は地下方式だ。

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 さて、何をもって同社の記念碑的マンションで、今年を代表する、そしてマンションの歴史に名を刻むハイクォリティマンションというのかを説明しよう。

 記者は、マンションの質は基本的に広さだと考えている。ファミリーにとって理想の広さは100uだ。100uマンションとしては、日本綜合地所の全1,805戸の平均専有面積が100uだった「レイディアントシティ横濱」があるし、三井不動産レジデンシャルと伊藤忠都市開発の全701戸の平均専有面積が120uだった「パークシティ東京ベイ新浦安」があるが、この物件は平均162uだ。まとまった規模で、これほどゆとりのあるマンションは供給されたことはまずない。わが国初だろう。

 99戸のうち億ションでないのが4戸のみというマンションも、バブル期を除けはこれも例がないだろう。記者は、億ションの最高峰は三井不動産レジデンシャルの「麻布霞町パーク・マンション」だと思っている。全92戸のうち億ションでないのは1戸のみだった。分譲単価は確か530万円だった。単価、グロス価格はともかく、億ションの多さからいっても、広さからいっても、「伊勢山」は「麻布霞町」を越える。

 設備仕様の高さで言えば、このマンションを超えるものは数え切れないほどみてきた。ドムスは1戸44億円のマンションを分譲したし、バブル期は建築費が坪200万円というのもざらだった。浴室の石鹸置きが純金製で数十万円というものも見た。

 「伊勢山」はもちろんそれほど豪華ではなく、むしろシンプルだ。しかし、記者がその美しさに驚嘆した鹿島建設の「加賀レジデンス」と同じように、美しく品がある。1階住戸には全く柱・梁型がなく、ドア、収納、サッシにいたるまで天井のラインが揃っており、ドアの把手も壁面まで後退させている。オープンキッチンのカウンターは幅1メートルぐらいある。キッチンは7畳前後、玄関・ホールも6畳大はある。

  
2階テラスから中庭を望む                  モデルルームのDK 

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 最高にすばらしいマンションではあるが、大きな壁もある。1億1,000万〜1億2,000万円という価格の壁だ。この点については、販売を担当する同社グランドメゾン伊勢山販売準備室室長・長嶺伸之氏も百も承知だ。

 長嶺氏は、「調べたんですが、横浜で1億以上の住戸が分譲されたのは昨年が6戸、一昨年が5戸。これまで多くて年間10戸ですから、そもそも横浜には億ション市場などありませんし、この時期、都心の億ションだって1億半ばになると販売は容易でありません。価格的に競合するとすれば、田園都市線の戸建てでしょうが、エリアが異なるからその方面からの需要を呼び込むことは難しいと考えています。お客さまは『山手』とか『みなとみらい』からの買い替えや富裕層。都心の億ションでは得られないよさをじっくり訴えていきたい」と語る。

  
中庭

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 記者も、売れるのかどうか分からない。「横濱」も「新浦安」も分譲されたとき、驚きはしたが間違いなく売れると読んだ。それは単価が低く、グロス価格が記者の尺度にぴったりだったからだが。しかし、今回の「伊勢山」は尺度をはるかに超えている。

 記者は昨年、道路を隔てて隣接する新日鉄都市開発・三菱地所「横濱紅葉坂レジデンス」(368)を取材したとき、この「伊勢山」のことを知った。2007年、「耐震偽装」があったとして同社の名前も公表された物件だった。そこで、同社は設計を担当していた「松田平田」から施工を担当していた竹中工務店に変更して、基本コンセプトは生かしながら全てやり直して分譲することになったものだ。かなり高額になるとも聞いたが、「坪300万円ぐらいで、億ションは数十戸程度だろう」と考えた。まさか、全戸を億ションに、それも飛びぬけた額にするなど夢にも思わなかった。

 億ションの歴史を変える物件には違いない。これで、今年はマンションの歴史を変える物件は三菱地所レジデンス「パークハウス吉祥寺OIKOS(オイコス)」と2つになった。全99戸の億ションと全9戸のマンションだ。このあまりにも対照的なのがまた面白い。


隣接する「県立青少年センター」から望む(植栽の見事なのが分かる)

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(牧田 司 記者 2011年5月13日)