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マンションの概念を変えた歴史的な物件

三菱地所「パークハウス吉祥寺OIKOS(オイコス)」


「パークハウス吉祥寺OIKOS(オイコス)」


 民間分譲マンションの第一号を昭和31年分譲の「四ツ谷コーポラス」とするならば、その歴史は今年で54年になる。マンションストックは562万戸だ。このマンションの歴史の中で、今日11月12日、記者はマンションの概念を変える歴史的なマンションを見た。三菱地所が1月から販売する「パークハウス吉祥寺OIKOS(オイコス)」だ。本日、販売に先立って竣工した同マンションが報道陣向けに公開された。

 物件は、 JR 中央線三鷹駅から徒歩11分、又は吉祥寺駅から徒歩16分、武蔵野市中町2丁目に位置する敷地面積約361平方bの鉄筋コンクリート造4階建て全9戸の規模だ。専有面積は56.78〜72.67平方b、価格は未定だが、平均65平方bで5,000万円台の予定だという。駐車場はなし。駐輪場は18台。事業企画は、同社グループのメックecoライフ。設計は飯田善彦建築工房・三菱地所ホーム。施工は前田建設工業。

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 エコと新しいライフスタイルを提案する新コンセプトの環境配慮住宅で、「OIKOS」とは、古代のギリシャ語で「氏族、家屋の集り、集落」の意味があり、最小の街や人の集りの単位で、「ECONOMY」や「ECOLOGY」の言葉につながったという。

 主な特徴は、@外断熱工法と木製断熱サッシュの採用A床輻射式空調システムB太陽光発電システム&LED照明C駐車場設置ゼロD竣工販売E開口部をポツ窓とし、上下階で同じ間取りにしない先進のデザインE住戸内コンクリート打ち放しF機能特化バルコニーG外周部ウッドデッキ――などだ。

  
3階ホール                         居室内

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 このマンションについては同社のホームページでも確認して欲しい。ここでは、何が歴史的なのかについて触れたい。

 まず、紹介したいのは「駐車場ゼロ」について。これについては、先に書いた記事を参照していただきたい。「住宅の敵は車」だと信じて疑わない記者は快哉を叫びたいマンションだ。同社は、駐車場をなくすことについてはかなり論議したようだが、担当のパートナー事業部副長の明嵐二朗氏は「近くには散歩や買い物に楽しい通りもある。市のコミュニティバスも充実している。販売のハンディにはならない。正しい選択をした」と語った。

 次に意匠デザイン。写真の通り、外観を見ただけではとてもマンションには見えない。切妻屋根の外観に大小の四角い窓があるのみだ。その窓もアトランダムに設けられているので、内部空間がどうなっているのか分からない。木製サッシュはアルミと木のいいとこどり、ハイブリット窓となっている。この外観を見て、記者はほとんどパニック状態になった。

 内部空間がまたすごい。柱や梁型が全くなく、コンクリート打ち放しの空間が広がっていた。SIに近いのだろうが、驚いたのは壁面の多さと、コンクリート壁には建築作業の段階で出来る「セパーナ」という穴が数十センチ間隔で並んでいたことだ。

 記者は、コンクリート打ち放しのマンションも結構見てきたが、このような穴が空いているのは初めて見た。通常は、この穴をモルタルで埋めるのだそうだ。

 さらに驚いたのは、この穴にはねじがはまるようになっていた。つまり、ねじをはめて、この壁面を自由に利用できるようにしてあった。ピクチャーレールなどいらないし、自転車のような重いものも展示できる。壁そのものがアートだった。

 コンクリート打ち放しは、意匠的に美しいのは言うまでもないが、断熱処理をしないと、夏は暑いし冬は寒い。記者は、ある著名な建築家が設計したコンクリート打ち放し住宅に住んでいた人から聞いたことがあるが、「熱くって、寒くって住めたものじゃない」と怒っていたのを覚えている。このマンションは外断熱工法を採用しているから、その心配は全くない。

 そればかりか、床輻射式空調システムの採用により、快適な居住空間を実現した。このシステムを分かりやすく説明したのが、メック ecoライフの平生進一氏だ。「当社グループの三菱地所ホームには『エアロテック』という素晴らしい技術の全館空調システムがある。それをマンションに取り入れた。床下のダクトから冷気・暖気を吹き込めるようにした」と語った。平生社長は「狭小敷地のマンションのプロトタイプにしたい」とも語った。

 細かいことでは、機能特化バルコニーがある。これについては長々と書かないが、記者も真冬に洗濯をし、外に干した経験があるが、こんがらかった洗濯物をほぐし、干す作業の辛さはやった者でしか分からない。このマンションは屋内で洗濯し、そのまま屋内に干せるスペースも付いているし、もちろん外から見られないで済む物干しもついている。

 キッチンは、レンジフードビルトインタイプのIHが採用されており、一般的なレンジフードはない。このようなビルトイン方式を採用した分譲マンションはほとんどないはずだ。

 内廊下・内階段はジュータン敷きで、階段ステップは18段もあった。蹴上げが低く蹴込みが深いので、上るのがとても楽だ。もちろんエレベータもついている。

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 このあたりで書くのをやめるが、嬉しかったのは平生社長と明嵐氏に会えたことだった。平生氏とはある会で、明嵐氏とは弊社が主催している RBA 野球大会の三菱地所の主砲として活躍されていた頃にいつも会っていた。それから10数年が経過している。お2人が「いい仕事」をされているのがなにより嬉しかった。これも縁か。

 さて、興味深いのは売れ行きだ。あまり宣伝はしないそうだが、単価も超割安だし、駐車場なしはマイナスにならないと断言できる。きっと抽選になり、倍率は10倍を超えるのではないか。1棟丸ごと欲しいという富裕層もいるかもしれない。

 記者は、3年前に見た鹿島建設の「加賀レジデンス」が「もっとも美しいマンション」だと書いたが、このマンションはもっと美しい。歴史的なマンションであるのは間違いない。

       
左からモデルルーム(自転車が壁に掛かっている)、キッチン(レンジフードがない)、木製サッシュ(壁の幅は約50センチ、腰掛けることもできる)

駐車場ゼロ 三菱地所「吉祥寺エコマンション」に拍手喝采(10/21)

これほど美しいマンション見たことがない 鹿島「加賀」(2007/5/18)

(牧田 司 記者 2010年11月12日)