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液状化被害で住民が三井不動産を提訴した問題を考える

 マスコミ各社の報道によると、東日本大震災による液状化で住宅が傾くなどの被害を受けた千葉県浦安市の「パークシティ・タウンハウスIII」の住民ら32人が2月2日、住宅を分譲した三井不動産と系列の住宅関連会社に約7億円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こした。「液状化したのは適切な地盤改良工事をしなかったため」と主張している。 被害があったのは木造3階建ての全70戸の建物で、昨年6月時点で、大規模半壊が32戸、半壊が28戸、一部損壊が10戸という。

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 記者は法律には全く疎いし、マスコミ報道だけなので軽々にはいえないが、今回の訴えにはいくつか分からない部分と興味深い点がある。

 まず、分譲時期について。報道では昭和56年となっているが、56年といえば建築基準法(施行令)が改正され、いわゆる新耐震が6月1日付で施行されている。このタウンハウスが旧耐震のものか新耐震のものか不明だが、いずれにしろ建築確認、検査済証の交付を受けているはずだから、建基法違反に問うことは難しいのではないか。

 木造3階建てということは、工法は2×4工法であることは間違いない。当時、タウンハウスは2×4工法を普及させる意味で積極的に建設されたものだ。一部RC工法やPC工法も採用されたが、それらは民間ではあまり採用されなかった。ただ、木造の3階建てが防火、準防火で解禁となったのは昭和57年のはずだから、今回の地域は無指定だったのかもしれない。この点はよく分からない。

 裁判では「適切な地盤改良工事」とは何かが争そわれるのだろうが、仮に被告に瑕疵があったとしても、民事による不法行為の時効は20年という壁はどうなるのだろうか。不法行為以外の訴因があるのだろうか。

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 震災後、新浦安や千葉市美浜区の液状化を取材したとき、埋め立て施行者の千葉県企業庁や造成した会社、住宅を分譲した会社などを住民が訴える可能性はあると思っていたので、ニュースを見聞してやはりそうかと思った。

 記者も液状化を取材し、道路1本隔てただけで雲泥の差が出るのを不思議に思い、施行者の千葉県企業庁に責任はないのかを聞いたことがある。その答えを抜粋する。

 「エリアによって液状化の被害が異なるのは、どうしてかわからない。法律に基づいて施工した。被害を受けられたのはお気の毒だが、県の責任はないと思っている」 (同庁地域整備部副技監・岡崎正一氏)

 「私は新任したばかりで分からないが、前任では県道を担当していた。橋梁などの資料は永久保存だが、道路の発注資料は5年ぐらいで捨てる。おそらく埋め立ての資料も残っていないはず」(同部建設課副課長兼建設推進室長・増田光一氏)

 つまり、埋め立ては法律に基づいて行なったもので、発注資料(受注資料はどうなのか)などは残っていないというのだ。今回の訴訟も、造成工事などに明確な瑕疵があったと証明できるかどうかだろう。不思議なのは、どうして千葉県企業庁の責任も問わなかったのかということだ。

 三井不動産には、コンプライアンス(法令順守)は当然だし、アカウンタビリティ(説明責任)、トレーサビリティ(履歴管理)が求められるのだから、誠意を持って臨んでほしい。これは業界全体の問題でもある。

新浦安液状化 美浜の「全壊」は建替えの築浅なぜ(2011/4/13)

「埋立に使った海砂の海底の穴を埋めるのに50年」(2011/4/12)

(牧田 司記者 2012年2月2日)