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「港区狸穴町」アドレスの長期優良住宅

東急不動産「ブランズ麻布狸穴町」


「ブランズ麻布狸穴町」西側(完成予想図)

 東急不動産は11月15日、わが国の高級賃貸マンションの先がけ「麻布東急アパートメント」の跡地で建設中の長期優良住宅認定マンション「ブランズ麻布狸穴町」の記者見学会を行った。12月上旬にモデルルームオープン・販売開始する。

 物件は、東京メトロ南北線・都営地下鉄大江戸線麻布十番駅から徒歩6分・南北線六本木一丁目駅から徒歩9分・日比谷線神谷町駅から徒歩9分、港区麻布狸穴町47番1(地番)に位置する地上8階、地下2階建て全140戸(分譲住戸90戸、地権者等関係者住戸50戸)の規模。専有面積は40.13〜137.93u、価格は未定だが、7,000万円台〜2億5,000万円台の予定。竣工予定は2013年10月下旬。施工は清水建設。販売代理は東急リバブル。

 物件の最大の特徴は「港区狸穴町」アドレスだ。1970年代の住居表示制度の改正でいたるところで住所が変更されたが、この「狸穴町」は港区内では住民の強い要望で「永坂町」とともに江戸時代から続く町名が残された。町全域で約20,000uしかないが、そのうちの約5分の1以上を占める4,600uが昭和36年に建設された「麻布東急アパートメント」だ。当時、公団住宅の家賃が1万円/月だったのに対し、同アパートメントは4.9万円/月だったというからいかに高額だったかがうかがい知れる。

 いかに希少な立地であるかを示す材料は他にもある。現在の狸穴町の人口は約270人。今回のマンションは140戸だ。1戸に2人住むと仮定してほぼ現在の居住人口と同じぐらいになる。つまり、「狸穴町」アドレスの居住者の半分は同マンション居住者となる。今後、マンションが供給される可能性は否定できないが、適地そのものが少ない。最近では2008年完成のNTT都市開発「ウェリス麻布狸穴」(37戸)があるぐらいだ。同マンションの近接地では丸紅が「グランスィート麻布台ヒルトップタワー」(166戸)を分譲予定だが、こちらのアドレスは「麻布台」だし、三菱地所が同じ「狸穴町」で計画しているのは賃貸マンションだ。

 もう一つの特徴は、同社としては「ブランズ青葉台」に続く2物件の「長期優良住宅」認定を受けていることだ。耐震等級2、天井高2.680ミリ、省エネ対策等級4などを確保している。防災対策としても1世帯当たり最大約 370リットル(4人家族の想定で約3日分)の水が利用可能の貯湯タンクを設置し、 HEMS機器「me-eco (ミエコ)」によるエネルギーの見える化も導入する。

 デザイン監修はアーキサイトメビウス(今井敦氏)だ。外観は錆石や荒ビシャン仕上げの御影石を多用し、縦格子も多く取り入れるなど和風建築のエッセンスを随所にちりばめているのが特徴だ。外構には業平竹や孟宗竹も配置する。照明デザインは森秀人氏。

 住戸プランは東向き・南向き・西向きでワイドスパンが特徴。モデルルームタイプの121uには突き板のオーク材が多用されており、洗面室などにはガラス素材を用いたモザイクタイルが用いられている。オプションだが玄関を入って正面の壁面にはシルクの布クロス(有償)が使用されている。


「ブランズ麻布狸穴町」東側(完成予想図)

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 先週の三井不動産レジデンシャルの「千代田富士見」と立て続けに高額マンションを見学した。気になる分譲単価だが、販売責任者の東急リバブル「ブランズ麻布狸穴町」マンションギャラリー プロジェクトチーフ・谷口哲樹氏は「土地の魅力と建物の堅牢さについてはどこにも負けない」と語ったが、単価については口をつぐんだ。よっていくらになるか分からないが、立地環境から考えて、坪単価は500万円を切ることはまずないが、550万円はないとみた。

 デザイン監修に今井氏が起用されているのには驚くとともに納得もした。今井氏がデザイン監修したマンションはモリモトの物件だけでも10物件ぐらい見学しているのではないか。森秀人氏は「木材会館」も担当している。同社とモリモト、近鉄不動産とのJV物件でやはりデザイン監修は今井氏が担当した「ミッドガーデン赤坂氷川」(135戸)は残5戸と好調だ。「赤坂」は坪400万円を切っていたが、立地が全然異なる。

 ずいぶん昔で作家の名前も思い出せないが、「狸穴町」を題材に取り上げていたので、歩いたことがある。坂の上り下りに難儀したが、民家がたくさん建っており、ビル・マンション化に抗う風情のある街だとおもった。現在もまだ木造住宅がかなり残っているが、やがてはマンションなどに変わるのだろうか。「狸穴坂」「鼠坂」など最近の人は読めないのではないか。

 谷口氏に聞いたのだが、狸穴界隈には島崎藤村、志賀直哉、永井荷風、コンドル、木内信胤、千田是也、榎本健一、松山善三などが居宅を構えていたという。マンションの北側にあるビルに入居する「焼肉店から敷地が一望できる」とも教わったので、米沢牛を使った牛丼を食べながら敷地を眺めた。この店は「雅山」という相撲取りのような名前だが、店内は櫛引仕上げの壁に大理石のカウンターもあり、飾り棚にはバカラ、卑弥呼(薩摩切子)、銘が入っていないのでメーカーは分からないが素敵な珈琲カップが置かれていた。


サブエントランス(イメージ図)


車寄せ(イメージ図)


ホール(完成予想図)

「赤坂」アドレスで坪400万円切る「MID GARDEN赤坂氷川」(1/11)

(牧田 司記者 2012年11月15日)