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木造とコンクリートの見事な調和を図った「木材会館」


「木材会館」

 「木材会館」を見学した。約350の会員からなる「東京木材問屋協同組合」の100周年記念事業として3年前に建設されたもので、日本建築大賞・日本建築家協会賞などを受賞した建物だ。

 建物は、東京メトロ・JR京葉線新木場駅から徒歩5分、江東区新木場一丁目に位置する敷地面積約1,600u、建築面積約1,000u、延床面積約7,500uの鉄骨鉄筋コンクリート造、一部鉄骨造、一部木造 、地上7階、地下1階建て事務所・集会室ビル。外部仕上はコンクリート打放しFUC塗装、木壁、軒天は木天井、外構は花崗岩、PC平板。設計は日建建設、施工は大成建設。


外観

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 このプロジェクトについてはマスコミでもさかんに取り上げられているのでご存知の方も多いはずだ。日本建築大賞・日本建築家協会賞を受賞したとき、選考委員・近田玲子氏が「都市から失われて久しい木材による懐かしい景色の復活に挑んだ設計・工事関係者・木材問屋協同組合の見事な挑戦であった」と絶賛された建物だ。

 記者もずっと見学したいと思っていたが、ようやく実現した。当日、アメリカ針葉樹協議会のセミナーが隣のビルで行われたので、同組合に頼んで見せてもらったのだ。今でも週に2〜3件、建築家や学生などの見学者が訪れるそうだ。貸ホールの利用率も高く、稼働率は8割ぐらいという。

   
7階ホールと屋上テラス(正面にスカイツリーが見える)

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 外観写真などは同組合のホームページにたくさん掲載されているので素人の記者の写真など参考程度にしていただきたいが、外観も内部空間も見事というしかない。外観はモンドリアンの絵画を見るようだ。縦と横のヒノキのラインが美しく、その奥のガラスは周囲の風景を映し出していた。

 内部空間もヒノキ、スギ、ナラ、カシ材などがふんだんに用いられ、バルコニーに木製のデッキを敷き詰めることで外部と内部を繋げる工夫がなされていた。近田氏も「圧巻」と言われた木造の7階のホールの大梁は集成材でなく、ヒノキの12cm角で組まれており、わが国の伝統技術である「追掛大栓継手」を施しているという。ホール内には木独特の香りが漂っていた。

 会議室や和室の天井にも新しい工夫がなされていた。天井の高さを通常より高くし、火災が発生しても煙が上空にたまり、人が煙に巻かれないように設計されていた。

 見学してよく分かったのは、打放しコンクリートや鉄と木の相性がいいということだ。しかし、これは正確な言い方ではない。敵対しがちな木とコンクリートをよく調和させたということだろう。近田氏は「懐かしい景色の復活」と言ったが、そうではなく21世紀の新しい木造建築物という印象を受けた。昔の木造建築物を再現するのではなく、鉄やコンクリートと組み合わせ、それぞれの長所を生かし弱点を補い合うハイブリッド工法がいいのではないか。その意味で、混構造こそ地震国のわが国にもっともふさわしい工法だ。

 
会議室                                和室天井(煙がたまる工夫)


桧舞台がある1階

  
1階の階段室(左)と各フロアの外階段とデッキを敷き詰めた通路


ホールの演壇

夢ではないRCとの混構造による木造大規模マンション(10/2)

(牧田 司記者 2012年10月2日)