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夢ではないRCとの混構造による木造大規模マンション

 
河合氏(左)とチャン氏

 アメリカ針葉樹協議会は10月1日、「米国の木造大規模建築セミナー」を行い、工学院大学建築学部教授・河合直人氏が「日本における木造大規模建築物」について、米国西部木材製品協会技術サービス部ディレクター・ケヴィン チャン氏が「米国における木造大規模建築物」についてそれぞれ講演を行った。約70名が参加した。セミナーは2日、大阪でも行われる。

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 取材の目的は、記者はわが国で木造の大規模建築物がどんどん建設されることを願っており、米国の実情を聞いて今後の取材活動に生かすことだった。また、いま問題になっている間仕切壁の大臣認定不適合問題についても取材のヒントが得られるのではないかと思った。

 河合教授の講演はよく理解できた。わが国の木造大規模建築物の歴史にはじまり、最近の耐火実験、最新の取り組みなどが紹介された。

 チャン氏の講演はつらいものになった。約3時間、途中1回休憩があっただけでぶっ続けで難しい製材の含水率やら収縮、フレーミング、穴あけなど専門的な話を続けられた。英語が分かれば理解率も高まったのだろうが、通訳を通じてだからストレスはたまるし、まさに隔靴掻痒。最前列に座ったものだから眠るわけにもいかずとてもつらい思いをした。

 しかし、収穫もあった。通訳を通じてだが、アメリカ西部地区ではこれまで約30年の間に数百棟の木造大規模建築物が建設されているという。紹介されたのは集合住宅で、地下に駐車場、1〜2階がコンクリート造の店舗や事務所、ピロティ、3階から6階が木造の住居部分という、いわゆる混構造づくりだ。木造部分は基本的には4階までという基準があるようだ。防火区画は2〜3時間耐火が義務付けられている。

 びっくりしたのがコストの安さだった。40,000uの地下が駐車場、1階がピロティ、2階から5階が274戸の木造アパートメントの建物で建築費は6,000万ドルだという。1ドル80円に換算すると、1坪当たり約40万円だ。米国とわが国では耐震基準、耐火基準、その他法律も資材価格、物流コスト、文化も異なるので単純な比較はできないにしろ、RCと木造の混構造6階建てが坪40万円というのは驚きだ。

 わが国のローコスト建売住宅の建築原価は坪30万円を切っているので、これとは対抗できないが、RC造よりはるかに安く建てられる。都内郊外部では分譲単価は坪100万円を切るだろうし、23区内でも200万円以下に抑えられる地域が激増するはずだ。仮にRC造マンションと同じぐらいか割高であっても、環境にも人にも優しい木造の特性を考えれば競争力は十分ある。わが国で混構造のマンションが建つのは夢ではないと思った。


「米国の木造大規模建築セミナー」(新木場ホールで)

(牧田 司記者 2012年10月2日)