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旭化成ホームズ 「へーベルメゾン母力むさしの」完成

コンセプトがズバリ的中 完成前に満室


「ヘーベルメゾン母力むさしの」

 

 旭化成ホームズは9月24日、百万母力の子育て情報誌=u月刊お母さん業界新聞」とコラボして武蔵野市に建設した賃貸住宅「ヘーベルメゾン母力」のプロトタイプ1号棟内覧会を行った。これまでの分譲マンションにも賃貸マンションにもなかった「子育て」支援のハード・ソフト・ハートを盛り込んだのがヒットして、バス便のハンディを負いながら完成の1カ月前に全22室が満室となった。

 物件は、JR中央線三鷹駅からバス10分、武蔵野市吉祥寺北町に位置する2階建て2棟の全22戸。専用面積は55.86〜77.44u、賃料は125,000円〜141,000円。入居開始は10月上旬。 敷地は約600坪で、道路に面した一部を除き建蔽率は40%、容積率は100%という制限の厳しいエリアで、地主は地元の名士だという。


中庭の既存樹の松

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 この新商品については別掲の記事を参照していただきたいが、完成した建物をみてびっくりした。まず、高さが20mはありそうなケヤキの大木2本が目に飛び込んできた。敷地に入ると広い中庭があり、正面に手入れがよく行き届いた松が鎮座していた。いかにも「民力」が高い武蔵野の高級賃貸の雰囲気をかもし出していた。

 住宅の設備仕様はそれなりのものだったが、商品の特性について語った同社集合住宅本部技術部集合商品企画室・玉光祥子さんの説明は極めて明瞭で、間違いなく子育てファミリーの心に響くものだと直感した。

 「月刊お母さん業界新聞」と 1 年半かけて研究を重ねた結果、導き出したコンセプトは @明るいコミュニティの形成A地域とのつながりB見守りあう関係−の3つで、これを「お母さんステーション」「アクセスコモン」「リビングアクセス」などの仕掛けを施して具現化したのが特徴だ。

 入居後は、「母力サポーター」と呼ばれるスタッフが支援し、入居者イベントなどを継続して行っていくという。

 物件の特性を考慮して「駅から○分○uで○万円」などといった不動産募集広告よりもコンセプトを訴える告知を重視した結果、約120件の問い合わせがあり、完成の1カ月前に全室が満室となった。非不動産ルートによる契約が19件にも達した。

 玉光さんは「初めての試みで手探りの部分もあったが、潜在的なニーズを引き出せてよかった」と話した。同業他社との競争に勝てたのもこのコンセプトだったようだ。その意味では、商品企画の勝利という物件だ。利回りも大事だが、地元の名士にとって「子育てに貢献できる」ことが決定打になったのは間違いない。


外観 

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 同社が記者発表を行ったときも感じたのだが、「母力(BORIKI )」の字と発音から、記者はゴーリキーの名著「母」と山登りのおじさん「強力」を思い浮かべたのだが、「母力」はそのイメージはともかく、子育て真っ最中のお母さんたちの強い意志が「母力」と言う言葉に込められていることを実感した。

 内覧会で「母力」の活動をされている伊藤万理さんに声を掛けたのだが、ひと言二言話して嬉々として伊藤さんが活動していることを理解した。「仕事は何ですか」と聞いたら、「これが仕事です」と答えが返ってきた。「主人は公務員。小6の娘と3歳の息子の4人家族」とのことで、「武蔵野市に住んでいるんですか」と聞いたら、何とわが街・多摩ニュータウンの「永山」だというではないか。地元でも「お母さん業界新聞」の多摩地域版をつくり、「お母さん業界新聞」にも毎日コラムを書いているのだという。同じ多摩市民の方がこのような活動をされているのを知って嬉しくなった。


リビングに取り付けられていた洗濯物干しポール(この価値が分からない同業者がいたら事業はやめたほうがいい)

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 記者は賃貸市場のことはよく分からないが、完成1カ月前に満室となったのは、人気物件と評価していいのだろう。契約者の入居を決めた動機もコンセプトにあった。そこで、中小のマンションデベロッパーに提案。

 いまマンション業界は大手志向が強まるばかりだ。中長期的に見てもこの傾向が強まるのは間違いない。「駅近」でも「大規模」でも中小デベロッパーは太刀打ちできない。「財力」「信用力」でも勝てない。唯一、互角の勝負ができるのは「商品力」「知力」だと思う。

 今回のように「母力」などとコラボすれば素晴らしいマンションができる。いま「子育て」「コミュニティ」を抜きにマンションは売れないが、どれもこれもにわか仕立てのとってつけたようなものばかりだ。したたかな子育てお母さんの心に響くような物件はほとんどない。その意味で、今回の「母力」は分譲マンションの商品企画に大いに参考になるはずだ。 「母力」だけでは足りなければ「老人力」「自然力」なども借りればいい。


「母力」の伊藤さんと3歳のお子さん

旭化成ホームズ 子育て支援「母力(BORIKI)」に共感(1/31)

(牧田 司記者 2012年9月24日)