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 どうなる間仕切壁の大臣認定不適合問題

 

 アキュラホームに始まり、住友林業、東日本ハウス、三井ホームなど準耐火建築物の国土交通大臣認定の仕様と異なる施工が建築基準法違反として問われている問題で、住友林業と東日本ハウスがそれぞれ自社で施工した施工方法で大臣認定を取得したことから新たな問題も浮上してきた。

 つまり、住林も東日本ハウスも大臣認定とは異なる施工を行ったが、性能的には準耐火基準に適合していることが認められたわけで、住林に限っていえば国交省から是正が求められていた3,524件については問題がないことが一応証明されたわけだ。

 業界には過去にさかのぼって問題なしとすることで収束させようという声もあるようだが、ことは単純ではない。これで一件落着というわけにはいかない。新たに大臣認定を取得した工法は適法だが、問題が発覚するまでの間は明らかに建築基準法に違反するからだ。この間の違法状態をどう判断するかが問われている。この件で国交省その他特定行政庁や関係者に話を聞いた。

 まず国交省。国交省は「建基法違反の疑いがある物件について特定行政庁に調査を指示し、違反があれば是正措置を講じるよう求めているわけで、どうするかは特定行政庁が判断すること。メーカーが大臣認定を取得したからといって、遡及的に問題がなかったことにはならない。行政処分がないとは言い切れない」(建築指導課)と、許認可権がある特定行政庁の判断によるとしている。

 ある特定行政庁はこうだ。「違反は違反。国交省の指示に基づいて是正措置としてメーカーが新たに大臣認定を取得し、結果的に性能に問題がないことが確認されたわけだが、指摘された物件については現場を確認する作業が残っている」。クロスなど壁をはがさないと確認はできないのではという問いには「施工写真が残っていれば、提出を求めることがあるかもしれない」と、調査を継続するとしている。

 また別の特定行政庁は「基本的には1件1件、確認作業を行う。天井裏から覗いて確認できるものは確認するし、施工写真を参考にすることもある」としながらも、「性能的には耐火基準に適合することが分かったので、罰則として改修を求めるのは現実的でないが、施工監理の落ち度が問われることもありうる。そうなると建築士法の問題となり、管轄する国交省の問題となる。国交省も検討しているのではないか」と、建築士法の問題にまで拡大する可能性を指摘した。

 さらに別の特定行政庁は「国交省から指示があったので、調査を始めた段階。まだ建基法違反があったとはうちは言っていない。厳正に調査する」と話した。

 こんな意見もあった。「間仕切壁の施工で、どうしてビスの長さをそれほど厳しくしなければならないのか」という記者の問いに、「おっしゃるように何センチから何センチまでと幅を持たせてもよかった。幅がある認定にしておけばこのような問題は起きなかった」

 ある石膏ボードメーカーは「そんなに厳密に施工しなくてもいいと個人的には思うが、姉歯事件以来、厳密に仕様書通りに施工する流れができてしまった」という。

◇    ◆    ◇

 以上、取材した限りでは、住林などが大臣認定を新たに取得したからといって、建基法違反を不問にすることはないような気がする。しかし、「耐火性能に問題がないと分かったわけだから、改修などを求めるのは現実的でない」という意見も説得力を持つ。

 この問題は法律的には「法的安定性」と「具体的妥当性」として考えられているようだ。つまり、前者は、あくまでも法律は解釈や運用によって変わってはいけないとする考え方で、だからこそ社会は安定するというものだ。後者は、法律を解釈・運用する側が時代に即応した対応をすることが重要であって、杓子定規のように法を扱うべきでないとする考え方だ。住林などが大臣認定を受けたことで遡及的に「合法」とするのは法律的には「遡及効」と呼ぶのだそうだが、これが適用されるのは難しそうだ。悪意はなかったとしても「知らなかった」は通用しないからだ。

 今回の問題は、この「法的安定性」と「具体的妥当性」の狭間で揺れ動くことになるのだろうが、どう決着が付くのか。記者は一般住宅の準耐火基準は厳しすぎるように気がする。耐震・構造壁なら厳しくしなければならないだろうが、間仕切壁に打つくぎの長さをミリ単位(今回の大臣認定仕様では38.1ミリ以上となっているのに対し住林などは28ミリで施工していた)で規定しなければならないのか。メーカーの自由裁量に任せてもいいのではないかと思う。

 記者はもうずいぶん前だが、ある専有面積が100u以上のマンションで、クローゼットに鉄製の防火戸が付いているのを見た。販売担当者に理由を聞いたら「防火戸を設けることが建基法で決まっている。邪魔なのでここに取り付けた」とのことだった。クローゼットに防火戸をつけて適法になる建基法とはいったい何だろうとそのとき思ったが、いまだにその不可思議ななぞは解けない。

住林が大臣認定取得したが…なぜ問題が多発するか(8/29)

(牧田 司記者 2012年9月21日)